数学教育学会誌
Online ISSN : 2434-8899
Print ISSN : 1349-7332
59 巻, 3-4 号
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  • 頂点,辺,面の本質的な定義を意識した指導
    金児 正史, 長尾 真紀, 松岡 隆, 松崎 和孝
    2018 年 59 巻 3-4 号 p. 1-15
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/04/15
    ジャーナル フリー
    筆者らは,オイラーの多面体定理を高大の接続教材と捉え,数学Aや数学活用の内容を大きく逸脱しない学習指導案を作成し,授業を実践した。しかしトーラスの頂点,辺,面の数を求める場面で生徒は混乱した。この混乱の解決のため,現代数学を取り入れる試みが行われた数学教育現代化当時の中学校学習指導要領や教科書等を調査し,先行研究を検討した。その結果,授業を,位相幾何における頂点,辺,面の本質を捉えてオイラー数を考察するものに改変することが必要であると考えた。現代化の試みが不成功に終わった大きな要因は,現代数学を教育現場に持ち込むための工夫が不十分であったこととされている。本研究が導入を図る位相幾何についても,その頂点,辺,面の意味が学校で習得する意味と整合性をもたないため,そのままの形で学校現場に持ち込むことは難しい。筆者らは,教育現場に持ち込むための方策として,学校で学ぶ頂点,辺,面の定義から生徒をいったん切り離し,また,日常経験による理解の助けも借りるため,位相幾何における頂点,辺,面の本質的意味を,日常用語を用いて表すこととした。本論文は,この方策によってどのような課題が表出しどう克服したか,その過程をまとめたものである。
  • 河崎 雅人, 福間 友哉
    2018 年 59 巻 3-4 号 p. 17-25
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/04/15
    ジャーナル フリー
    内包量に関わる指導では,数値の量としての意味を正しく理解させることが重要であり, 与えられた数値の量としての意味を理解するためには,その単位について理解することが必 要である.しかし,算数科においては,長さや重さなどの外延量の単位に関する学習はある が,内包量の単位や単位に対して演算を行うことができるという指導はなく,式に単位を記 述することもない.そこで,内包量に関わる指導方法についての示唆を得るために,小学4, 5,6年生を対象に,問題に与えられた数値の量としての意味の理解状況を調査することに した.3種類の内包量(問題A:1箱当たりの個数,問題B:ペットボトル1本当たりのジ ュースの量,問題C:1時間当たりに進む距離)に関する第二用法を題材とした問題を調査 問題として,公立小学校2校の第4,5,6学年児童383 名(4学年:131 名.5学年:122 名.6学年:130 名)を対象に,平成29 年1月に実施した.その結果,式と答えの正答率は 高いものの,問題に与えられた数値の量としての意味を把握しないまま立式・解答している 児童の存在が明らかになるなど,内包量の指導に関する示唆が得られた.
  • 第4学年と第5学年に焦点を当てて
    廣瀨 隆司, 長谷川 勝久, 齋藤 昇, 西澤 智
    2018 年 59 巻 3-4 号 p. 27-39
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/04/15
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 図形領域において, 児童の審美性認識と児童の概念的知識及び手続き的知識との関係を明らか にすることである。調査結果から, 次の事柄が明らかになった。(1) 図形に関する概念的知識や手続き的知識の得点 の高低に関わらず, 全ての児童は, 審美性認識の得点が高い。したがって, 児童は, 何らかの審美性認識を持っている。 (2) 両学年とも, 児童の図形に関する知識獲得の総得点と児童の審美性認識の総得点との間には, 相関がなかった。し たがって, 児童にとって, 図形の概念形成, 図形に関する審美性認識, 図形に関する知識獲得は, 相互に影響し合い, か つ, 補い合うと考えられる。そのため, 図形に関する審美性認識と図形に関する知識獲得を結びつけ, 児童の図形の概 念形成を高める指導が必要である。
  • 第5学年の正多角形・円周率・立体図形の指導に焦点を当てて
    廣瀨 隆司, 長谷川 勝久, 齋藤 昇, 西澤 智
    2018 年 59 巻 3-4 号 p. 41-52
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/04/15
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 第5学年を対象として, 図形領域に関して, 審美性認識と知識を結びつけ, 概念形成を図る授業 方法を提案し, その学習効果を明らかにすることである。事前調査, 授業実践, 図形テスト, 事後調査の結果から, 次の ような事柄が明らかになった。(1) 事前調査における審美性認識に関して, 実験群と統制群間には, 差がなかった。(2) 各授業時間に行った「学習のふりかえり」から, 個別指導を重視し, 児童の発言の記述・グループ活動における記述・ 作図を重視した授業は, 児童の審美性認識と知識を結びつけ, 概念形成を図る上で有意義であった。(3) 実験群・統制 群におけるそれぞれの事前調査・事後調査の結果の比較により, 児童の審美性認識に関して, 実験群おいて, 授業実践の 効果があり, 統制群において, 授業の効果がなかった。(4) 実験群と統制群間の事後調査の結果の比較から, 児童の審美性 認識に関して, 統制群より, 実験群の方が審美性の認識が高かった。(5) 実験群と統制群における図形テスト結果の比較か ら, 個別指導・児童の発言の記述・グループ活動における記述・作図を重視した実験群の授業は, 知識獲得という観点か ら, 効果があった。(6) 審美性認識の結果と図形テストの結果との間に関して, 実験群では相関があり, 統制群では相関 がなかった。つまり, 図形領域に関して, 実験群において行った審美性認識と知識を結びつけ, 概念形成を図る授業の学習 効果は認められた。
  • 課題学習を通して見た推測統計指導におけるいくつかの課題
    稲葉 芳成, 酒井 淳平
    2018 年 59 巻 3-4 号 p. 53-62
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/04/15
    ジャーナル フリー
    初等・中等教育における問題解決型の統計教育の更なる充実のためには一人一人の統 計リテラシーの素養をさらに涵養することが不可欠である。現実のデータや不確実性の概念 に接し,その分析の仕方を繰り返し体験することが求められるものと考え,高等学校におい て推測統計分野の課題学習に取り組ませた。その結果,実際の授業からはいくつか指導上留 意すべき点を,また生徒が提出したレポートからはいくつか課題を見いだした。本稿はそれ らについての内容を含む実践レポートである。
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