本研究の目的は, 第5学年を対象として, 図形領域に関して, 審美性認識と知識を結びつけ, 概念形成を図る授業
方法を提案し, その学習効果を明らかにすることである。事前調査, 授業実践, 図形テスト, 事後調査の結果から, 次の
ような事柄が明らかになった。(1) 事前調査における審美性認識に関して, 実験群と統制群間には, 差がなかった。(2)
各授業時間に行った「学習のふりかえり」から, 個別指導を重視し, 児童の発言の記述・グループ活動における記述・
作図を重視した授業は, 児童の審美性認識と知識を結びつけ, 概念形成を図る上で有意義であった。(3) 実験群・統制
群におけるそれぞれの事前調査・事後調査の結果の比較により, 児童の審美性認識に関して, 実験群おいて, 授業実践の
効果があり, 統制群において, 授業の効果がなかった。(4) 実験群と統制群間の事後調査の結果の比較から, 児童の審美性
認識に関して, 統制群より, 実験群の方が審美性の認識が高かった。(5) 実験群と統制群における図形テスト結果の比較か
ら, 個別指導・児童の発言の記述・グループ活動における記述・作図を重視した実験群の授業は, 知識獲得という観点か
ら, 効果があった。(6) 審美性認識の結果と図形テストの結果との間に関して, 実験群では相関があり, 統制群では相関
がなかった。つまり, 図形領域に関して, 実験群において行った審美性認識と知識を結びつけ, 概念形成を図る授業の学習
効果は認められた。
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