精白砂糖に乾燥酵母剤を0, 20, 40, 60, 80, 100%の割合に混合した6種類の飼料を用い, 温度は25℃に一定し, 湿度を64%, 75%, 85%RHに調整し, 各条件におかれた各飼料にサトウダニ(C.l.)とケナガコナダニ(T.d.)を色々な割合で接種して繁殖状況を比較した.1) C.l., T.d.を各々単独で飼育した場合C.l.は精白砂糖のみよりも, これに乾燥酵母剤をある程度加えた飼料で増殖率が高く, この混合比が4 : 6の飼料で最高の増殖率を示した.乾燥酵母剤60%以上の飼料では湿度85%RHの場合が75%RHの場合より高い増殖率を示した.T.d.は一般に砂糖の比率が高い程増殖率が悪く, 湿度75%RHで乾燥酵母剤のみの飼料の増殖率が最高であつた.64%RHではどの混合飼料についても両種とも死滅した.2) C.l., T.d.を混合して飼育した場合C.l.及びT.d.を接種時にC.l.82.2%, T.d.17.8%(C.l.が優占種), C.l.53.6%, T.d.46.3%, (両種ともほぼ同率), C.l.17.7%, T.d.82.3%(T.d.が優占種)の各割合に混合し, 上述の諸条件において, その繁殖状況を観察した.これらの最初のコナダニの比率, また湿度(64%RHを除く)に関係なく, 飼料が乾燥酵母剤の含量0〜60%のものではC.l.が優占種となり, 80%飼料では, C.l.及びT.d.の比率はほぼ同じになり, 乾燥酵母剤のみの飼料ではT.d.が優占種となつた.3) コナダニ類の繁殖は栄養, 温度, 湿度の少なくとも3条件に支配されるが, 以上の実験からこの両種コナダニはその繁殖に適する栄養条件に特異的な差があることが明らかにされた.また, それぞれ環境の湿度条件によつて繁殖密度や繁殖速度がいちじるしく影響されることが示された.
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