ネパールで採集されたゴマフアブ属(Haematopota)の1新種, H. narayaniensis n. sp., アブ属(Tabanus)の2新種, T. kathmanduensis n. sp., T. kurahashii n. sp.を記載した.H. narayaniensis n. sp.は, 頬にベルベット状の黒色斑, 中胸背板にはっきりした三日月状の明色斑を持ち, H. assamensisに近縁であるが, 額瘤の大きいこと, 腹部背板および翅の紋様, 特に, 翅端の2重の明色斑により区別できる.T. kathmanduensis n. sp.は, Tabanus malayensis群と, 明らかに近縁であるが, 額の広いこと, 額瘤の大きいことで, この群の既知種と区別できる.T. kurahashii n. sp.は, 一見Cydistomyia属の種に類似するが, 前縁脈基部片に剛毛を密生し, 額瘤がきわめて大きいことからアブ属の種と決定した.灰色の細長い腹部, 広い額, 大きな額瘤を持つ独特の形態によって, 東洋区のアブ属の既知種とは容易に区別できる.
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