日本組織適合性学会誌
Online ISSN : 2187-4239
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13 巻, 3 号
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原著論文
  • 野内 達人, 安波 道郎, 壬生 隆一, 安永 正剛, 伊藤・佐藤 真夏, 高橋 めぐみ, 田中 司玄文, 桑野 博行, 木村 彰方
    2007 年 13 巻 3 号 p. 187-197
    発行日: 2007年
    公開日: 2017/03/31
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    遺伝性非ポリポーシス大腸がん(HNPCC)は頻度の高い遺伝性高発がん疾患である. HNPCCの原因はDNAミスマッチ修復酵素の欠損であり, がん細胞においてはマイクロサテライト不安定性とフレームシフト変異が集積することが知られている. このような体細胞変異はがん特異的細胞障害T細胞によって非自己として認識されるタンパク産物を生じると考えられる. そこで本研究では, そのような体細胞変異を集積した非自己であるがん細胞が免疫監視機構から逸脱する分子機構を解明するために, 大腸がんを対象としてマイクロサテライト不安定性ならびにHLAクラスI遺伝子とβ2ミクログロブリン遺伝子(B2M)変異の有無を検討した. その結果, マイクロサテライト不安定性を示すHNPCC大腸がんにおいては, HLAクラスI分子の発現低下をもたらすと考えられるB2Mのフレームシフト変異またはHLAクラスI遺伝子のLOH型変異が非HNPCC大腸がんと比較して有意に多いことが判明した. 興味深いことに, B2M変異とHLAクラスI遺伝子変異の両者を同時に有する大腸がんは認められなかった. これらのことから, DNA複製エラーを伴う大腸がんは, HLAクラスI分子の発現欠損を不完全とすることで細胞障害性T細胞とNK細胞のいずれによる認識からも逸脱することが示唆された.

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