日本組織適合性学会誌
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14 巻, 3 号
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総説
  • 乙竹 充
    2008 年 14 巻 3 号 p. 331-344
    発行日: 2008年
    公開日: 2017/03/30
    ジャーナル フリー

    ニジマスを中心に, 魚類のMHCについて下記項目を概説する. 1.魚類MHC研究の歴史 2.古典的および非古典的MHC遺伝子(IaとIb) 3.わが国のニジマスのIa 4.ニジマスIaの遺伝子座の同定 5.ニジマスMHCクラスIの発現様式 6.感染によるMHC発現量の変化 7.Ia型と移植片拒絶との関連 8.Ia型と細胞障害活性との関連 9, Ia型と疾病抵抗性との関連 10.行動や成長とMHC型との関連 社会的に関心を集めている「食の安全性」とも関連し, 水産養殖業における根本的な病害防除対策として, 産業界, 消費者および行政から最近強く期待されているのが, 養殖魚における抗病性系統の樹立である. 家畜および農作物では, 品種改良による抗病性系統の樹立が行われており, 疾病の予防対策として大きな成果を上げている. ところが, 魚類においては, 疾病抵抗性と強い関連性を持つ有用な遺伝子の指標はこれまでにほとんど報告されていない. そのため, 抗病性系統の開発は畜産分野に比べると水産分野では遅れている.

  • 津田 とみ, 猪子 英俊
    2008 年 14 巻 3 号 p. 345-357
    発行日: 2008年
    公開日: 2017/03/30
    ジャーナル フリー

    現存のペンギン類は, 9,000種にもおよぶ多種の鳥類のなかで, 陸上を移動するときの動作の特色ばかりでなく, 成鳥が空を飛ばないことや, ヒナは親の保護に完全に依存して成長する就巣性であることなど, の特色を有する. ペンギン類の棲息地は南半球に限られている. 約5,000万年前から現在に至るまで分岐と進化を重ね, 極寒の南極から, 赤道直下のガラパゴス諸島まで, 厳しい自然環境に適応しつつ進化してきたことが推測されている. 一方, 主要組織適合遺伝子複合体(Major Histocompatibility Complex;MHC)は脊椎動物の免疫応答において外来抗原を捕捉しT細胞に提示するという重要な役割を担い, 遺伝的多型性を獲得してきたことがよく知られている. ペンギン類は極域から熱帯域へと分布が広く, 外来抗原とのかかわりも他の動物種とは異なりその結果, 特徴的なMHC多型を持つであろうと私たちは予測した. MHC遺伝子の多型解析はヒト, マウスなどで近年急速に進み, 特にヒトでは疾患感受性との関連など応用範囲を広げている. しかし鳥類でのMHC解析は, ニワトリおよびウズラではMHCのB領域の全配列が決定されたが, 他の鳥での報告はまだ稀である. 私たちは, ペンギン類を含む海鳥類のMHC遺伝子多型解析がペンギン類の進化を系統的に検討するための有効な手段になることを報告し, 現在までにアデリーペンギン属の3種やフンボルトペンギン属の2種, 他の属についても, MHCクラスII第2〜第3エクソン領域のゲノム塩基配列の解析をすすめてきた. 本稿では, ペンギンMHCの全容を述べることは果たせないが, ペンギンMHC(SpLA)を興味ある, そして価値ある研究対象として紹介したい.

  • 村上 徹, 河合 達郎
    2008 年 14 巻 3 号 p. 359-366
    発行日: 2008年
    公開日: 2017/03/30
    ジャーナル フリー

    移植医療において, 移植臓器に免疫寛容を誘導することは究極の目標といえる. これまでマウスなど小動物の基礎実験をもとに, 大動物でも寛容導入の試みが様々な方法を用いて行われてきた. 最近, ようやくサルで免疫寛容誘導の報告もみられるようになり, ドナー骨髄細胞移植によるmixed chimerismを基礎とした方法では臨床での寛容誘導の成功例もみられるようになった. 今後はさらに多様な方法で免疫寛容誘導が臨床で試みられるようになると予測される. 1.はじめに 過去20年の間に, 効果的な免疫抑制薬の開発に伴い, 移植臓器の短期生着率は飛躍的に向上してきた1). しかし, 慢性拒絶反応に対する効果的な予防や治療方法が存在しないことや, 免疫抑制薬そのものの副作用により, 長期成績は未だ満足できるものとなっていない2). このため免疫寛容の誘導は免疫抑制法がこれほど進歩した現在でも, 移植医療の究極の目標として捉えられている.

  • 森島 泰雄
    2008 年 14 巻 3 号 p. 367-376
    発行日: 2008年
    公開日: 2017/03/30
    ジャーナル フリー

    非血縁者間造血幹細胞移植ではHLA適合と言っても, HLA遺伝子型などが異なっている場合が多い. このHLAの違いが移植免疫反応にどのように影響しているかを解析することにより, HLAの適合度の良いドナーの選択が可能になり, 移植成績が向上する. ここでは, 日本骨髄バンクにおける非血縁者間骨髄移植症例の解析を中心に, 最近の成果につき概説する. HLA座の違いに加えて, 不適合HLA型の違いやHLAエピトープの急性GVHDへの効果が明らかになり, HLA解析は新たな段階に入っている. 1.はじめに 同種造血細胞移植は, 造血器腫瘍やその他の血液疾患・免疫不全症の治癒を期待できる治療法として確立されてきた. 特に造血器腫瘍においてはドナー由来の免疫担当細胞によるGVL(graft versus leukemia)効果が, その治癒をもたらすのに重要であると考えられている. 同種移植には拒絶やGVHD(graft versus host disease)などによる非再発死亡などのリスクが伴うが, HLAが一致したドナーから移植をすることで, それらのリスクが減少する1).

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