1型糖尿病に対して行なわれる膵臓移植においては, アロ免疫応答のみならず, 自己免疫応答の両者が惹起される. 臨床の実際において, 両免疫応答は混在して存在しており, 両者を区別して議論できないが, 動物実験においては. 両者を別々に検討することが可能となる. 先ずは, アロ免疫応答については, ラット膵移植モデルを用いた検討より, 移植膵の免疫原性が高いため, 拒絶されやすいこと, 免疫寛容が得がたいことを, また, 自己免疫応答については, 自然発症1型糖尿病モデル動物であるBBラットを用いた膵移植の系を紹介する. 続いて, 膵移植の臨床における免疫学的特異性について概説する. 「1. はじめに」 移植膵に対する免疫応答にはドナーの組織適合抗原(histocompatibility antigen)に対して, 引き起こされる急性ならびに慢性拒絶反応, すなわちアロ免疫応答(alloimmune response)に加えて, 1型糖尿病の原因とされる膵β細胞に対する自己免疫応答(autoimmune response)も存在する.