HLA-B抗原遺伝子を高精度にタイピングするためのPCR-RFLP法を考案した. ゲノムDNAを鋳型として, エクソン2およびエクソン3を含むDNA断片をHLA-B遺伝子特異的にPCRで増幅した. さらにこのPCR産物を鋳型として, エクソン2は2組の, エクソン3は3組の対立遺伝子群特異的プライマーを用いてPCRを行った. この二次PCRで得られた増幅産物を制限酵素処理し電気泳動後, その酵素処理断片長の泳動パターンによりHLA-B対立遺伝子を同定した. HLA Nomenclature(1996)に示された178の対立遺伝子について酵素処理断片のパターンをコンピューターで解析したところ, エクソン2は60種のパターンに分かれ, エクソン3は80種のパターンに分かれた. これらの組み合わせより, 解析した178の対立遺伝子のうち, 127種の対立遺伝子は特定のRFLPパターンとして識別され, 残りの51種の対立遺伝子はそれぞれ2から4の対立遺伝子を含む19のパターンに識別された. UCLA Tissue Typing Laboratoryで主催されているInternational Cell Exchange Programで配布された56検体についてタイピングを行なったところ, これまで経験したことのない対立遺伝子も精度よくタイピングすることができたこの方法は, 比較的少数検体で, 検体のDNA量も少なく血清学的タイピング結果が参考に出来ない場合においてHLA-B座の対立遺伝子をタイピングするために有用であると思われる.
ある集団のHLA遺伝子頻度をだすためには, ランダムで, 血縁関係のない健常人の集団を必要とし, また, 実施されたHLAのタイピングの水準が同一であることが求められる. この条件に該当するのが, 共通の抗血清を使用して, 大量の検体のHLAタイピングデータが集められる組織適合性ワークショップ(HWS)である. HLA遺伝子頻度はその時にダイビングできるHLA型により微妙に異なってくる, また頻度の信頼性は計算に用いた集団の大きさにかかっている. HLAタイピングは, 臨床的には疾患感受性, 親子鑑定などにも使われているが, 現在では, 移植ペアの適合性を決めるために, もっとも多く用いられていると思われる. 特に骨髄バンクのためのタイピングは, 世界的規模で膨大な数が行われている. 国際的にHLA型の適合したドナーを見つけるために設立された, 骨髄提供ドナーのHLA型を登録する機構である, BMDW(Bone Marrow World Wide)に登録されているHLA型タイピング済みドナーは478万人を越えており, データはインターネットで見ることができる. 日本も本年の4月よりデータを提供することになった. このホームページの中の, HLA型適合の検索は契約者でないと見られないが, 各骨髄バンクの登録者数と登録されているHLA-A,B,DRの遺伝子頻度は誰でも見ることができる. 各骨髄バンクごとのデータなので, 民族別には整理されてはいないが, 2座, 3座のハプロタイプ頻度もバンクによっては公開されている. これらの情報からある程度のHLA型適合の予測は可能であるし, さらにハプロタイプ頻度とバンクの規模から, 計算によって適合率の計算が可能である. この稿では, 日本人のHLA頻度を過去の資料を参照しながら振り返るとともに, 信頼性について検討したものをまとめた.