日本産Colletotrichum属の希少3種菌株について形態的再検討を行うとともに,初めて分子系統関係を明らかにした.2011年神奈川県のマダケ上で採集されたC. hsienjenchangは,PDA培地上で棍棒形のポリフィアライド先端から細長い鎌形分生子を房状に形成し,大型で指状突起のある付着器を持つことが明らかになった.rDNA-ITS領域の塩基配列に基づく分子系統解析(ITS系統解析)の結果,本菌はC. spaethianumとクレードを形成したが,Actinなど3遺伝子に基づく分子系統樹では,C. tofieldiae等に隣接する枝に位置付けられた.2009年つくば市のメダケ上で再発見されたC. metakeは,小型のレモン形付着器を持つことが明らかになった.本菌はC. falcatumの異名とされているが,ITS系統解析の結果,同菌とは全く別の単独クレードを形成した.C. taiwanenseは,2001年国内で初めて沖縄県のキクから分離され,その後,熊本県でヒトの角膜,小笠原諸島のバニラやレモンから分離された.本菌は本属菌としては例外的に細長く隔壁のある子のう胞子と大型の分生子および矢尻形の付着器を形成し,また,ITS系統解析では単独のクレードを形成した.以上より上記3種は分子系統的にも形態的にもColletotrichum属の独立種であると考えられた.
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