日本微生物資源学会誌
Online ISSN : 2759-2006
Print ISSN : 1342-4041
32 巻, 2 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
受賞総説
総説
  • その分離から応用まで
    天知 誠吾
    2016 年 32 巻 2 号 p. 115-122
    発行日: 2016年
    公開日: 2024/12/07
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    Iodide-oxidizing bacteria are able to catalyze the oxidation of iodide ion (I) to molecular iodine (I2), and they have been isolated from natural gas brine water containing very high concentrations (up to 1.2 mM) of iodide. They are aerobic heterotrophic bacteria in the class Alphaproteobacteria and are divided into two phylogenetic groups. One of the groups is most closely related to Roseovarius mucosus, whereas the other group is closely related to the Kordiimonadales and Rhodothalassium salexigens, with relatively low 16S rRNA gene identity levels of 89% to 91%. Iodide-oxidizing bacteria can also be enriched from natural seawater supplemented with iodide, because their I2 tolerance is much higher than that of other heterotrophic bacteria in seawater. The enzyme catalyzing the oxidation of iodide (IOX) is an extracellular oxidase; it also has marked activity towards various phenolic compounds, including ABTS, syringaldazine, and 2,6-dimethoxy phenol. Further studies have revealed that IOX is a putative multicopper oxidase (MCO) but is phylogenetically distinct from other known bacterial MCOs such as CueO, CumA, CopA, and CotA. The fact that IOX has the highest catalytic efficiency (kcat/Km) for iodide among the known MCOs makes it a suitable candidate for a wide range of applications, including enzyme-based antimicrobial systems and decolorization of recalcitrant dyes.

原著論文
  • 江崎 孝行, 金澤 泉, 林 佐代子, 林 将大, エルデソキー イブラヒム, 福永 肇
    2016 年 32 巻 2 号 p. 123-131
    発行日: 2016年
    公開日: 2024/12/07
    ジャーナル フリー

    BSL3の細菌の分譲にあたって分譲株が不安定な病原性因子を保有しているかどうかの情報が要求される.多種類にわたる菌種の病原因子を確認し,分譲することは少数のスタッフで運営されている分譲業務には大きな負担になる.我々は最大6種類のプライマーにTagをつけ,一本のPCRチューブ内で増幅するカクテルプライマー増幅法を作成し,増幅産物をDNA-Strip上にプリントしたAnti-Tagに結合させ,3本の位置マーカー情報と対比させ,増幅産物を目視判定する方法を作成した.この方法で単一集落からPCR産物の目視判定まで40分以内でBSL3の病原体の病原因子の有無を判定する方法を確立した.

  • 玉井 清子, 波多 宏幸, 土金 恵子, 黄地 祥子, 細山 哲, 阪本 康司, 山副 敦司, 藤田 信之, 江崎 孝行
    2016 年 32 巻 2 号 p. 133-146
    発行日: 2016年
    公開日: 2024/12/07
    ジャーナル フリー

    Pseudomonas 属の主要5 菌種に共通に保存されている121 個のhousekeeping proteins より,高い配列多型をもつ8 種類の蛋白配列を選択した.これらの配列を結合した配列(C8HKP)を用い,既報の4MLSA(16S rRNA, gyrB, rpoB, rpoD) を用いた系統解析法と比較した.両者の配列置換率を比較した結果,相関係数はR2=0.897 と高い相関を認め,C8HKP は約 2 倍の解像度を持つことが明らかとなった.加えて,系統樹を比較した結果,各菌種の系統位置は両者で概ね一致していた.このことから,C8HKP による系統解析はPseudomonas 属の系統分類に有用であることが示唆された. さらに, Pseudomonas putida group に同定された多剤耐性株を含む臨床分離株33 株のドラフトゲノム配列を決定し,C8HKP による系統解析を行ったところ,P. putida およびPseudomonas monteilii の基準株とは独立したクラスターが複数認められ,多剤耐性株はこのクラスターの一つに集中して認められた.

  • 宮下 美香, 鎌倉 由貴, 杉本 昌子, 柴田 千代, Yukphan Pattaraporn, Potacharoen Wanchern, ...
    2016 年 32 巻 2 号 p. 147-161
    発行日: 2016年
    公開日: 2024/12/07
    ジャーナル フリー

    タイ産発酵食品に由来する乳酸菌とStaphylococcus 属分離株について,その微生物資源としての応用利用性と特徴を明らかにするために,糖の発酵性および酵素活性とGABA生産能を調べた.分離株の糖発酵性は,乳酸菌とStaphylococcus 属株で顕著な違いが見られ,Staphylococcus 属株に比べて乳酸菌は多様な糖が発酵可能だった.糖発酵性試験結果に基づくクラスター解析の結果,分離株はそれぞれ基本的に種の特徴を反映していたが,乳酸菌には同種内で多様性がある種も見られた.日本国内の発酵食品に由来する分離株も含めて解析したところ,同種内で幾つかのクラスターに分かれた種は分離地域も複数に渡っており,糖発酵性における多様化のしやすさと環境への適応力の高さが推測された.糖発酵性に多様性が見られた種は,日本産分離株では全て複数の地域で共通して分離された種だったが,タイ分離株には他の地域では分離されなかった種が含まれていた.一方で,基準株と同じクラスターにまとまった乳酸菌種は,タイ・富山・沖縄のそれぞれの地域でのみ分離された種が多数を占め,その種数はタイ分離株で最も多かった.以上から,タイ産分離株には日本産の株とは異なる発酵性を示す株が多く含まれていることが示された.またタイ分離株の乳酸菌にはGABA生産能を示す株が, Staphylococcus 属株にはプロテアーゼ活性を示す株が見つかっており,特徴ある微生物資源であることが明らかとなった.

  • 佐藤 豊三, 小野 剛, 田中 和明, 服部 力
    2016 年 32 巻 2 号 p. 163-178
    発行日: 2016年
    公開日: 2024/12/07
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    2011~2014 年,小笠原諸島において採集した約300 点の樹木等の罹病部や寄生生物から菌類を分離し,DNA バーコード塩基配列および形態により分類同定を行った結果,286 菌株が124 種に同定され 161 菌株が属まで同定された.これらのうち少なくとも37 種は日本新産,20 種・1 亜種は小笠原新産であり,57 菌種について延べ80 種の新宿主が明らかとなった.新宿主には19 種の小笠原諸島の固有種が含まれていた.一方,固有植物から分離された他の50 菌株以上が37 属に同定されたが,DNA バーコードを用いたBLAST 検索などの結果では種まで特定できなかった.これらは新種の可能性も含めて分類学的所属を明らかにする必要がある.また,国内初確認13 種および小笠原諸島新産菌1 種は,熱帯・亜熱帯産の宿主から分離され,菌自体も熱帯・亜熱帯分布種であった.以上および既報から,小笠原諸島の菌類相には熱帯・亜熱帯要素が含まれていることが改めて認められた.

短報
  • ─シアノバクテリア門内におけるスペルミジン,ホモスペルミジン,スペルミン,サーモスペルミンの分布─
    浜名 康栄, 古地 壯光, 林 秀謙, 新津 勝
    2016 年 32 巻 2 号 p. 179-186
    発行日: 2016年
    公開日: 2024/12/07
    ジャーナル フリー

    シアノバクテリアのポリアミン構成カタログへの追加のために,特徴的な14 株のシアノバクテリアから酸抽出したポリアミン画分の高性能液体クロマト(HPLC)と高性能ガスクロマト(HPGC)による追加分析を行った.群体形成Nostoc verrucosum ‘アシツキ’はNostoc commune ‘イシクラゲ’を含む他のNostocAnabaena 種(Nostocales 目)と同様にホモ スペルミジンを含有していた.耐熱・耐塩性Spirulina subsalsa var. salinaSpirulinales 目)は淡水産Spirulina subsalsa と同じスペルミジンであった.淡水産・群体形成Aphanothece sacrum ‘スイゼンジノリ’ (Chroococcales 目)はプトレスシン, スペルミジンとホモスペルミジンを含有したが,耐塩・好アルカリ性 Aphanothece halophyticaMicrocystis 種はスペルミジンのみであった.プトレッシン,スペルミジン,ホモスペルミジン,アグマチンに加えてサーモスペルミンが耐塩・好アルカリ性 Arthrospira platensis ‘スピルリナ’ (Oscillatoriales 目)に検出された.Synechococcales 目のクロロフィルb 含有-海産 Prochlorococcus marina はスペルミジンで,クロロフィルd 含有-海産 Acaryochloris marinaはスペルミジンとホモスペルミジンであった. 好熱性のThermosynechococcus vulcanusThermosynechococcus sp. NK55a は Thermosynechococcus elongatus と同様,低含量のホモスペルミジンの他に低含量のスペルミンを有していた.追加分析14 株と既分析126 株でのポリアミン構成は系統分類の化学分類マーカーとして確立されないが,スペルミジン型,ホモスペルミジン型,スペルミジン / ホモスペルミジン混合型に区分された.

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