セルロース分解性粘液細菌は細菌のなかで最も大きなゲノムを有し,新規な有用物質を生産すると考えられるが,日本ではほとんど分離されていない.日本の土壌を2000ヵ所から採取し,ろ紙を置いた培地に接種後,室温で30日程度培養すると2割程度のプレートでセルロース分解性粘液細菌の子実体が観察され,主に60℃の高温処理と室温での乾燥により純化を行った.純化菌22株の16S rRNA の塩基配列を決定すると,Sorangium ambruticinum, S. arenae, S. cellulosum や S. kenyense と99%以上の相同性が見られた.120株の純化菌を XAD-16樹脂を含むP培地とE培地に30日ほど振とう培養後,生産物をアセトン抽出し,微生物の生育阻害を見たところ,約6割の抽出物において Aspergillus niger の生育阻害が見られ,分離株は主に真菌に対する抗菌物質を生産していた.また,120株の抽出物の LC/MS 解析より spirodienal, ambruticin, disorazole および epothilone など34の Sorangium 属由来の既知化合物が100株の抽出物より同定されたが,Sorangium 属由来の既知物質と分子量が異なる化合物も多く見出され,未知の有益物質を生産している可能性が示唆された.
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