日本微生物資源学会誌
Online ISSN : 2759-2006
Print ISSN : 1342-4041
38 巻, 1 号
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  • 出村 幹英, 西島 万宥子, 山根 百萌, 野間 誠司, 林 信行
    2022 年 38 巻 1 号 p. 1-16
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/07/26
    ジャーナル フリー

    自然発生微細藻類集団とは,自然に増殖してきた複数の微細藻類やバクテリア,原生生物も含む集団である.容易に培養できることから低コストの藻類バイオマス生産方法として世界で研究が進んでいる.しかし,日本では福島県で行われた研究例があるのみである.そこで,佐賀県佐賀市のビニールハウス内の100L培養水槽2基にいて自然発生微細藻類の長期 培養を試みた.その結果,2019年4月から2020年8月まで1年以上にわたる自然発生微細藻類の連続培養に成功した.培養開始当初,複数の微細藻類種が観察されたが,多様性は次第に減少し2019年9月以降 Scenedesmus spp. が優占した状態となった.増殖していた生物のほとんどは培養期間を通じて微細藻類であり,2020年4,5月には培養液の乾燥藻体密度は0.6g/L以上を記録した.培養期間を通じて,乾燥藻体密度の変動と光量子束密度の1日での最高値の変動は相関しており,増殖に光条件が大きな影響を与えていると推察された.また,生産されるバイオマスの総脂質含有率,脂肪酸組成などについても月1回分析したところ,2019年から2020年にかけ Scenedesmus spp. が優占するにしたがって総脂質含有率は約5%から約10%(乾燥藻類体重量%)へと増加傾向にあった.どの月も含有率が高かった脂肪酸は,α-リノレン酸,パリミチン酸,オレイン酸などであった.また,最大0.02%のドコサヘキサエン酸(DHA),0.3%のエイコサペンタエン酸(EPA)の産生も認められた.

  • 浜名 康栄, 林 秀謙, 古地 壯光, 新津 勝, 坂本 光央, 伊藤 隆, 大熊 盛也
    2022 年 38 巻 1 号 p. 17-30
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/07/26
    ジャーナル フリー

    細菌の細胞内ポリアミン構成分布を化学分類指標の一つとして細菌の系統分類に対応させるため,未分析であった 9門 Armatimonadetes,Atribacterota,Balneolaeota,Elusimicrobia,Ignavibacteriae,Kiritimatiellaeota,Lentisphaerae,Rhodothermaeota,Synergistetes に属する 29株(種),および既分析の他 11門 Acidobacteria,Chlorobi,Chloroflexi,Chrysiogenetes,Deferribacteres,Fusobacteria,Gemmatimonadetes,Nitrospirae,Planctomycetes,Spirochaetes,Verrucomicrobia に属する新規追加の 105株(種),の菌体から酸抽出したポリアミン画分を HPLC と HPGC で分析した.分析株のポリアミン含量(μmol/g wet weight of cells)を表として記載した.新規分析 9門では,Armatimonadetes 門では ArmatimonasFimbriimonas がポリアミンを欠き,Capsulimonas はホモスペルミジンを含有.Atribacterota 門の Atribacter はプトレシン,スペルミジンとスペルミン.Balneolaeota 門では,Alifodinibius はポリアミンを欠き,Gracilimonas はホモスペルミジン.Elusimicrobia 門の Elusimicrobium はホモスペルミジン.Ignavibacteriae 門の Igmavibacterium はホモスペルミジンのみ,Melioribacter はプトレッシン,スペルミジン,ホモスペルミジンとスペルミン.Kiritimatiellaeota 門の Kiritimatiella はスペルミジンとスペルミン.Lentisphaerae 門の Lentisphaera はスペルミジンとホモスペルミジン,VictivallisOligosphaera はスペルミジンのみ.Rhodothermaeota 門の Rubricoccus はポリアミンを欠き,Rubrivirga はポリアミンを欠くかホモスペルミジンで,Longimonas はスペルミジン.Synergistetes 門の 11属 Acetomicrobium,Aminiphilus,Aminovibrio,Aminobacterium,Aminomonas,Cloacibacilus,Dethiosulfovibrio,Fretibacterium,Lactivibrio,Pyramidobacter,Thermoanaerovibrio すべてでスペルミジンとスペルミンを含有した.この 9門での分析株数は,化学分類指標として評価するには不十分ではあった.他の 11門においては,スペルミジン,ホモスペルミジン,スペルミン,の分布と系統分類との相関性を追加検討した.

  • 久富 敦, 志波 優, 藤田 信之, 田中 尚人
    2022 年 38 巻 1 号 p. 31-40
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/07/26
    ジャーナル フリー

    シデロフォアは鉄飢餓環境で生物が産生する構造が多様なキレート化合物であり,鉄と錯体を形成してその構造特異的なレセプターを有する生物にのみ取り込まれる.細菌ではシデロフォアが鉄の取り込みだけではなく,産生や取り込みがバイオフィルム形成と連動していることも知られている.そのため,細菌の生育に十分な鉄が存在しない環境にシデロフォアを添加することで,一部の細菌の生育およびバイオフィルム形成への影響が考えられる.本研究では土壌と水試料にシデロフォアとして2,3-dihydroxybenzoyl-L-serine(DHBS)を添加し,バイオフィルム形成および構成する菌株の特性を検討した.その結果,土壌および水試料への DHBS の添加はバイオフィルム形成を誘導し,その構成株は Pseudomonas 属の種が大半を占め,DHBS を利用するとともに強くバイオフィルム形成が促進される特性をもつことが明らかとなった.

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