本研究では,
Saccharomyces (S.) cerevisiae(酵母)とヤギ乳から調製した酵母に対する IgG を豊富に含む画分(抗-酵母 IgG)のマウスの免疫系に及ぼす作用を検討した。まず,C3H/HeN 系マウスのパイエル板細胞に,酵母単独,抗-酵母 IgG 単独または酵母と抗-酵母 IgG の混合物を添加して培養したところ,酵母単独の場合と比べて,抗-酵母 IgG 単独および酵母と抗-酵母 IgG 混合物を添加した場合は制御性 T 細胞に発現する
Rnf128 レベルが有意に増加し,2 型ヘルパー T(Th2)細胞優位に導く
Stat6 レベルが酵母と抗-酵母 IgG 混合物添加では顕著に低下し,抗-酵母 IgG 単独では僅かに増加することがリアルタイム PCR 法により確認された。そこで,同系統のマウスに酵母と抗-酵母 IgG 混合物を経口投与し,血清 IgG レベルを調べたところ,非投与群と比べて顕著に低いことが示された。また,それら両群のマウスパイエル板細胞の遺伝子の網羅的解析を行ったところ,非投与群と比べて混合物投与群では B 細胞の増殖や分化および T 細胞の活性化や Th2 細胞優位に導く遺伝子の発現が低下し,制御性 T 細胞に発現する
Rnf128 の発現が上昇していた。さらに,酵母と抗-酵母 IgG 混合物をⅠ型アレルギーモデルマウスに経口投与すると,非投与群と比べてアレルギー症状が軽減される傾向にあり,IL-4
+CD4
+(Th2)細胞数が有意に減少した。これらの結果は,
S. cerevisiae とそれに対するヤギ乳 IgG の混合物の経口摂取はマウスにおいてⅠ型アレルギーを抑えることを示している。
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