ミルクサイエンス
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63 巻 , 3 号
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原著論文
  • 郭 暁艶, 上西 寛司, 川井 泰, 安田 成美, 春日 元気, 竹澤 志織, 瀬戸 泰幸, 西村 順子, 北澤 春樹, 齋藤 忠夫
    2014 年 63 巻 3 号 p. 129-135
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/21
    ジャーナル フリー
     ガセリシン T (GT)は,ヒト腸管より検出される乳酸桿菌 Lactobacillus gasseri により生産される二成分性バクテリオシンである。また,当研究室で分離したヒト乳児由来の GT 生産 LA158株を含む L. gasseri は,改良乳培地で良好に生育するものの,乳中に豊富に存在する二価金属イオンにより LA158株の GT 生産は抑制されることが知られている。本研究により,GT 生産株として最初に見出された,抗肥満効果を有する L. gasseri SBT2055は,MRS 培地にて二価金属イオン(Mg2+,Ca2+, Mn2+, Fe2+ および Zn2+)の添加により濃度依存的に GT 生産が抑制されることが判ったが,LA158株における抑制濃度(Mg2+ および Ca2+)とは異なっていた。また,200 mM の二価金属イオン添加では,良好に生育するにもかかわらず,GTの生産は完全に消失した。さらに,二価金属イオンのキレート剤で食品添加物であるクエン酸三ナトリウム(TSC)の添加によりGT 生産は回復した。以上の結果から,ヨーグルト製造においてスターターの生育を阻害せずに,GT 生産性のプロバイオティック L. gasseri 株を効果的に添加・利用出来るものと考えられた。
  • 渡邊 正行, 本間 満, 上西 寛司, 藤本 洋祐, 瀬戸 泰幸, 宮本 拓
    2014 年 63 巻 3 号 p. 137-144
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/21
    ジャーナル フリー
     糖を添加しない MRS 培地(MRS-Glc 培地)でインキュベートすることにより,乳酸桿菌のストレス耐性に対する炭素源枯渇処理の効果を調べた。MRS-Glc 培地でインキュベートした Lactobacillus gasseri SBT2055株は低 pH および過酸化水素ストレスに対しても高い生残性を示した。またこの時の検討した全ての遺伝子発現量が低下した。酸ストレスは菌体内の活性酸素種(ROS)生成を誘導し,菌体を死に導くが,炭素源枯渇処理をした菌体は酸ストレス下での ROS 生成が減少したことから,菌体内 ROS と酸ストレス耐性との関連が示唆された。さらに 6 株の乳酸桿菌を MRS-Glc 培地中において37℃で18時間インキュベートし,brix26%の高濃度糖溶液中で10℃,10日保存した結果,インキュベートしなかった菌体と比較して Lactobacillus gasseri では生残性が向上した。この 2 菌種は腸内に分布していることから,飢餓ストレスによる酸耐性向上は腸内細菌に特異的な現象の可能性も考えられる。これらの結果から炭素源枯渇処理が Lactobacillus gasseri SBT2055株の酸耐性および低温保存中の生残性を向上できる可能性を示した。
  • 川上 浩, 朴 眩泰, 朴 晟鎭, 青栁 幸利
    2014 年 63 巻 3 号 p. 145-153
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/21
    ジャーナル フリー
     牛乳・乳製品の摂取が高齢者の健康に及ぼす影響については,これまで骨粗鬆症や高血圧等の生活習慣病の予防の観点から多くの研究がなされてきた。また,サルコペニア予防を目的としたレジスタンス運動時の筋肉の維持向上において,乳清タンパク質等の摂取が有用であることも報告されている。しかしながら,通常の日常生活における身体活動と,牛乳・乳製品の摂取との関係を中心に解析した研究報告はほとんどみられない。そこで本研究では,健康な高齢者における牛乳の摂取と,日常生活での身体活動量,歩行速度,および体組成等との関連について調べ,牛乳摂取の有用性を明らかにすることを目的とした。
     認知症や寝たきり等の症状を有さない65歳以上の高齢者179名(男性88名,女性91名)を対象に,食物摂取頻度調査票を用いて栄養状態および牛乳摂取量を把握した。身体活動については,一軸加速度センサー内蔵の身体活動量計を用いて,歩数,身体活動強度,および身体活動時間を毎日24時間計測した。歩行速度(平均値・最大値)は,全長11 m の水平歩行路上の移動時間から算出した。筋量,脂肪量,および水分量等は,マルチ周波数体組成計で全身および部位別に測定した。骨強度は,超音波骨評価装置で右踵骨を測定した変数から,音響的骨評価値を算出した。全対象者を低牛乳摂取グループ(200 mL 未満/日)85名,および高牛乳摂取グループ(200 mL 以上/日)94名に分けた。日常生活における身体活動量,歩行速度,筋量,骨強度,および血清アルブミン濃度に統計学的な有意差(p<0.05)がみられ,高牛乳摂取グループで高値を示した。特に,筋量は男性において,骨強度は女性において牛乳摂取量との相関が高かった。また,牛乳摂取量と身体活動の相乗効果を判定するために,多要因ロジスティック回帰分析でサルコペニア発症相対危険度のオッズ比を算出したところ,「低牛乳摂取+低身体活動」グループは,他の 3 グループ(「高牛乳摂取+高身体活動」「高牛乳摂取+低身体活動」「低牛乳摂取+高身体活動」)に比べ,危険度が有意に高かった。以上の結果から,高齢者における牛乳の摂取は,身体活動や体組成の向上に有用である可能性が示唆された。
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