ミルクサイエンス
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64 巻 , 3 号
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原著論文
  • ─セブ州マクタン島コルドヴァ町の漁民世帯の事例から─
    平田 昌弘, 辻 貴志, 内田 健治, 元島 英雅, 木村 純子
    2015 年 64 巻 3 号 p. 191-199
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/26
    ジャーナル フリー
     本稿は,1)フィリピンでの乳・乳製品の利用のされ方,2)フィリピンでの乳・乳製品の利用されるタイミングを把握した上で,3)非乳文化圏への乳文化の浸透・変遷の五形態を検証することを目的に,フィリピンのセブ州マクタン島コルドヴァ町の漁民を対象に観察とインタビューをおこなった。乳・乳製品は,中心的な食事となる魚料理には一切利用されず,朝食や間食にパンやビスケットなどと共に,主に副食的に摂取されていた。非乳文化圏と位置づけられるフィリピンに,乳文化はスペイン,日本,アメリカによる植民地支配の最中に主に伝播した。乳・乳製品は,特にスペインによる植民地統治と自然環境の影響を大きく受け,甘すぎるくらいに加工されるようになり,魚の利用を基本とした主食的な食事には浸透せず,朝食や間食として「補助栄養食」「嗜好品」「米との融合」「西欧型の食文化」の四つの形態で浸透・変遷したとまとめることができる。このような乳文化の非乳文化圏への浸透・変遷の当初の立ち位置は,フィリピンだけでなく,インドネシアなど東南アジア,そして,日本においても確認され,非乳文化圏に類似して確認される現象となっている。こうした特徴が,非乳文化圏に伝播した乳文化の浸透・変遷の当初の型なのである。
  • 長岡 誠二, 浦山 春香, 髙橋 美帆, 北條 研一, 川井 泰, 増田 哲也
    2015 年 64 巻 3 号 p. 201-206
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/26
    ジャーナル フリー
     ヨーグルト中には Bifidobacterium の生残性を低下させる要因の一つである過酸化水素(H2O2)が含まれている。本研究では,ヨーグルト中における Bifidobacterium の生残性向上を目的に,ヨーグルト製造に用いられるスターター乳酸菌11株を用いて,乳中における37℃・16時間培養時の H2O2 産生量を評価した。その結果,Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricusStreptococcus thermophilus に比べて約 5 倍の H2O2 を産生した。また,L. bulgaricus の H2O2 産生量は,好気培養に比べて嫌気培養では65%減少したことから,L. bulgaricus の酸素消費機構によって生じた H2O2 がヨーグルトに蓄積しているものと推察された。次に,ヨーグルト環境を模した乳酸緩衝液に様々な菌数比となるように乳酸菌体を懸濁させた時の H2O2 蓄積量は,L. bulgaricus 菌数が増えるほど高くなり,一方 S. thermophilus 菌数の増加はあまり影響しなかった。以上より,H2O2 産生菌である L. bulgaricus 菌数が,直接的に H2O2 蓄積量に影響を与えていると考えられた。そこで,L. bulgaricus 菌数を低減したヨーグルトを調製した結果,製造後における H2O2 蓄積量は大きく減少し,10℃で14日間保存後の Bifidobacterium adolescentis KH 96の生残性は顕著に改善された。
  • 津田 治敏
    2015 年 64 巻 3 号 p. 207-214
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/26
    ジャーナル フリー
     和牛の乳汁から乳酸菌を分離・同定し,人工消化液耐性を調べた。生理学的および生化学的諸性状および16S rDNAの相同性検索の結果,Lactobacillus reuteri, Lactobacillus plantarum, Lactococcus garvieae, Lactococcus lactis, Enterococcus hirae, Enterococcus faecalis, Enterococcus saccharolyticus, Weissella thailandensis および Pediococcus pentosaceus と同定した。Lb. reuteri PUHM1004および E. hirae PUHM1011は0.3%Oxgall 含有 MRS 液体培地において50%以上の生育度を示した。また,pH 2.0に調整した人口胃液中で 3 時間後まで高い菌数を維持し,人工腸液中において菌数の増加が見られた。これらの菌株を経口摂取した際,胃および上部消化管内を生きたまま通過する可能性が高く,プロバイオティック食品および飼料への応用が期待できる。
  • 内田 勝幸, 森久保 桂子, 岩澤 佳緒里
    2015 年 64 巻 3 号 p. 215-221
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/26
    ジャーナル フリー
     便秘は著しく生活の質を低下させるだけではなく社会経済的にも大きな損失となっている。乳清を Propionibacterium freudenreichii ET-3 で培養した発酵物(乳清発酵物)はビフィズス菌を増加させて便秘を改善する作用を持っていることが臨床試験で明らかにされている。しかし,大腸の運動に対しどのような作用を示すかについては明らかになっていない。そこで,今回の試験では部位差についても評価するため,ラットの近位,中位および遠位大腸について収縮力および収縮頻度に与える乳清発酵物の作用を in vitro で評価した。乳清発酵物は遠位大腸に対し濃度依存的に収縮頻度を有意に増加させた。しかし,収縮力には影響しなかった。一方,近位および中位大腸の収縮力および収縮頻度に対しては何ら影響を示さなかった。乳清発酵物に含まれる 1,4-dihydroxy-2naphthoic acid (DHNA) はビフィズス菌の増殖作用を示すことが明らかになっているが,大腸の収縮力および収縮頻度には作用を示さなかった。さらに乳清発酵物に含まれるプロピオン酸および酢酸も何ら作用を示さなかった。以上の結果から,乳清発酵物は排便に重要な役割を果たしている遠位大腸に対し特異的に収縮頻度を増加させることが明らかになった。また,収縮力を増加させないことは収縮力の増加による腹痛を引き起こさないことから便秘に対する乳清発酵物の有用性を示す結果と考えられた。
  • 武田 安弘, 瀬戸 菜実子, 橋本 潤一, 篠田 一三, 高瀬 光徳, 東 徳洋
    2015 年 64 巻 3 号 p. 223-233
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/26
    ジャーナル フリー
     免疫流動食は,外傷や手術を受けた(受ける)患者の感染症リスクの低減,入院期間の短縮などを目的として使用されるもので,アルギニン,グルタミン,n-3 系脂肪酸,核酸,微量元素などの成分が強化されている。本試験では,免疫賦活成分としてアルギニン,グリシン,グルタミン,核酸,及び多機能性たんぱく質ウシ・ラクトフェリン(bovine lactoferrin, bLF)を配合した試験免疫流動食を作製し,流動食中の bLF の保存性,及び作製した試験免疫流動食の生理活性について検証を行った。bLF は通常,加熱殺菌処理により容易に変性してしまうが,酸性条件下(pH 2.7)で直接加熱・超高温殺菌法に供することにより,熱変性を抑え,流動食に配合することができた。作製した流動食中の bLF は,25℃または37℃で 9 か月間保存した後も抗原抗体反応活性を維持し,非常に安定であることを確認した。本流動食中の bLF は鉄飽和度が高く,未分解のままでは大腸菌に対して静菌活性を示さなかったが,胃内消化を想定したペプシン分解物では抗菌ペプチドであるラクトフェリシンが生成されることを確認し,実際に強い抗菌作用を呈した。免疫賦活成分としてアルギニン,グリシン,グルタミン,核酸及び bLF を配合した上記の試験免疫流動食を90日間摂取したマウスでは,統計的に有意ではないものの,回腸絨毛の伸長が確認され,また,統計的に有意な腸内細菌叢の変化が見られた。これらのことから,本試験で作製した常温・長期保存が可能な免疫流動食の摂取により腸内環境改善を介した感染リスクの低減効果が期待された。
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