オリゴ糖はプロバイオティクスの腸管内における増殖や機能を選択的に高める難消化性の糖であり,種々のオリゴ糖が販売されている。しかし,各オリゴ糖が腸内細菌にどのように利用されているかについての報告は見られなかった。今回我々はオリゴ糖がどのように腸内嫌気性細菌によって利用されているかを観察するため,ヒト腸内で高頻度に高菌数が検出される17菌株を用いて
in vitro でのオリゴ糖 7 製品(fructooligosaccharide; FOS, galactooligasaccharide; GOS, gentiooligosaccaride; GEO, isomaltooligosaccharide: IMO, lactosucrose; LS, nigerooligosaccharide; NOS, xylooligosaccharide; XOS)の資化性試験を行い,増殖性と各種オリゴ糖の糖構成の経時変化を追跡した。
その結果,多くの菌株はオリゴ糖製品で増殖が可能であった。また,糖構成の経時変化を追跡したところ,各オリゴ糖製品の特徴は以下のようであると考えられた。
•GOS:積極的に 3 糖以上のオリゴ糖を分解する菌株以外にはオリゴ糖が利用されない
•LS, FOS:幅広く腸内嫌気性細菌に利用される
•IMO:積極的に 3 糖以上のオリゴ糖を利用する菌株以外にはオリゴ糖は利用されないが,他のオリゴ糖で成育しなかった特定の腸内細菌を増殖させる選択性を有していた
•GEO:幅広い菌株が 2 糖や単糖を利用していた
•NOS:他のオリゴ糖では 2 糖,単糖を利用していた菌株の一部でも 3 糖以上のオリゴ糖が利用されており,やや幅広い腸内嫌気性細菌に利用されていた
•XOS:オリゴ糖を単糖にまで分解できる菌のみが利用していた
今回の結果から Fru-Glc や Fru-Fru, Glc-Glc の結合は腸内嫌気性細菌によって切断されやすく,Gal-Gal の結合や Xyl を構成糖とする糖は切断されにくい傾向が観察された。しかし,ビフィズス菌はすべてのオリゴ糖で 3 糖以上のオリゴ糖を利用していることが確認された。ビフィズス菌は Gal-Gal や Xyl-Xyl の結合を切断する酵素を保持しているとの報告があるため,これらのことから他の菌株と比較して GOS や XOS を利用しやすいと考えられた。
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