ミルクサイエンス
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65 巻 , 3 号
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原著論文
  • 佐藤 薫, 島 弘幸, 中村 和夫, 小林 奈保子, 遠藤 基, 谷本 守正
    2016 年 65 巻 3 号 p. 161-169
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/28
    ジャーナル フリー

     食用キノコであるヤマブシタケ(Hericium erinaceum)から抽出した粗酵素を用いて,その凝乳過程のレオロジー特性とチーズカードのテクスチャー特性を調べた。その結果,66℃30分加熱した低温殺菌牛乳だけでなく,130℃ 2 秒殺菌した UHT 殺菌牛乳でも凝固することを見出した。得られるカードの動的粘弾性の温度依存性の結果から,ヤマブシタケ由来粗酵素で得られるカードの貯蔵弾性率,損失弾性率はキモシンで得られるカードよりも低いものであった。さらにホエイの RP-HPLC 分析から,ヤマブシタケ由来粗酵素による凝乳作用は κ-カゼインの分解によるものではないことが示唆された。我々の結果からヤマブシタケ由来粗酵素は,新しい乳製品製造に応用できることが期待された。

  • 小林 達哉, 辻 聡, 梶川 揚申
    2016 年 65 巻 3 号 p. 171-178
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/28
    ジャーナル フリー

     Lactobacillus 属細菌の一部は動物消化管に常在し,それらの一部はプロバイオティクスとして利用されている。Lactobacillus reuteri は様々な動物腸管内に分布し,腸内共生微生物のモデルとして定着機構の解明が進められている。これまで,L. reuteri の腸管粘膜定着因子として複数のタンパク質が報告されている。我々は L. reuteri DSM 20016T がもつ腸管粘膜定着因子が消化管環境でどのように変化しうるのかを調べることを目的とし,研究に着手した。疑似的な消化管環境に L. reuteri DSM 20016T を曝した結果,腸管粘膜定着因子タンパク質は疑似胃液に対する耐性が比較的高い一方,疑似腸液に対しては感受性を示した。腸管粘膜定着因子の発現がどのように変化するかを RT-qPCR により調べた結果,それぞれの腸管粘膜定着因子は通常培養時に比べて遺伝子発現が促進される傾向にあることが示された。結論として,本研究の in vitro の試験において,L. reuteri の菌体および菌体表層に存在する腸管粘膜定着因子は消化作用によりダメージを受ける一方,それらの遺伝子発現は増強され得る可能性が示された。

  • 石川 潤一, 木下 英樹, 菰田 俊一, 須田 義人, 石田 光晴
    2016 年 65 巻 3 号 p. 179-190
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/28
    ジャーナル フリー

     近年,多量の抗生物質の使用により多剤耐性菌が数多く出現しており,ヒトへの感染拡大が危惧されている。そこで抗生物質に代わり,安全性の高い乳酸菌のバクテリオシンを使用して,多剤耐性菌のリスクを低減できないかと考えた。保有する908菌株の乳酸菌から JCM1002 株と C107 株に対して強い抗菌活性を示す27菌株をバクテリオシン活性株として選抜した。また,食品や豚糞便から11菌株を薬剤耐性細菌として分離した。バクテリオシン活性株について,JCM1002 株を指標菌として,pH 中性化処理,プロテアーゼ処理,熱処理を行った後抗菌性を試験した。熱および中性化処理により,各上清の抗菌活性は熱耐性および pH 依存性によってグループ化できた。また,プロテアーゼ試験により, Lc. lactis MBR916 株の培養上清が高いプロテアーゼ耐性を示した。本上清は, Bacillus sp. R11 を除き全ての薬剤耐性菌に対して抗菌活性を示した。MBR916 株のバクテリオシンは,抗菌活性スペクトルを比較すると,ナイシン様バクテリオシンであることが推察されたが,高いプロテアーゼ耐性を有すること,推定分子量が異なること,阻止円の特徴が異なることなどから,新奇バクテリオシンである可能性も示唆された。今後,アミノ酸の一次構造を決定し,遺伝子の解析を行う予定である。

     本研究において,乳酸菌のバクテリオシンを用いた多剤耐性菌の殺菌の可能性が示された。現在,応用研究として豚糞便を用いたバクテリオシンでの多剤耐性菌殺菌効果の検証を進めており,多剤耐性菌を抑える家畜用の機能性飼料開発が期待される。

総説
平成28年度日本酪農科学会奨励賞 受賞記念総説
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