ミルクサイエンス
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66 巻 , 2 号
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原著論文
  • 阿野 泰久, 中山 裕之
    2017 年 66 巻 2 号 p. 89-96
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/07
    ジャーナル フリー

     我々はこれまで,カマンベールチーズ由来の成分が,アルツハイマー病モデルマウスにおいて脳内のアミロイドβ沈着および炎症を抑制することを報告した。一方,アルツハイマー病モデルマウスの腸管などの末梢組織における炎症惹起や末梢の炎症刺激による認知機能低下に関する報告がなされており,本研究では,カマンベールチーズ由来成分の腸間膜リンパ節における樹状細胞に対する作用を検証した。まず骨髄由来樹状細胞への作用をin vitroで調べた結果,カマンベールチーズ由来サンプルに炎症性サイトカイン(IL-12)の産生および抗原提示の補助刺激分子(CD86)の発現の抑制作用を確認した。続いて,カマンベールチーズ由来成分の摂取のアルツハイマー病モデルマウス腸間膜リンパ節への作用を検証した結果,カマンベールチーズ由来成分摂取群では樹状細胞の炎症状態を抑制し,制御性T細胞が増加することを確認した。これらの結果より,アルツハイマー病モデルマウスではカマンベールチーズの摂取が脳内のみならず,末梢組織でも炎症を抑制することが確認された。

  • 松浦 啓一, 後藤 孝信, 川口 恭輔, 水野 征一, 山本 直之
    2017 年 66 巻 2 号 p. 97-106
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/07
    ジャーナル フリー

     Lactobacillus helveticus発酵乳から最初に単離された血圧降下ペプチド,Val-Pro-Pro (VPP)とIle-Pro-Pro (IPP)に関して様々なチーズについて分析した。15種類のヨーロッパタイプのチーズを選び,これら2種類の血圧降下ペプチドをLC-MSを用いて分析した。オランダチーズのライペナーとオールドアムステルダムには高含量のVPP/IPPを,100g当たりに19.9/0.9と10.5/0.9mgづつ含んでいた。スイスチーズのエメンタールとグリュイエールには同様にVPP/IPPをそれぞれ100g当たりに8.0/1.1と5.2/1.2mgづつ含んでいた。注目すべき点として,Penicillium roquefortiで製造される幾つかのフランスチーズ(ブルー・ド・オーベルニュとブルー・ド・カース)にも,高濃度の両ペプチドが,100g当たりにそれぞれ,13.1/31.0と9.9/19.2mgづつ含んでいた。VPPに対するIPPの比はドイツやスイスチーズにおいて,ブルーチーズのものに比べて低かった。ブルーチーズにおける両ペプチドの産生の理由を理解するために,以前, Aspergillus oryzae内のIPPの加工に重要な蛋白質分解酵素であるニュートラルプロテアーゼI(NPI)とロイシンアミノペプチダーゼ(LAP)について Penicillium属での存在をBLAST検索した。その結果,A. oryzaeのNPIに36%の相同性をもつホモログがPenicillium subrubescensの菌体外金属プロテアーゼ-4に確認された。さらに,A. oryzaeのLAPはP. roquefortiの未同定の蛋白質と同一であった。これらのことから, A. oryzaeのNPIとLAPに相同性を持つPenicilliumのプロテアーゼがブルーチーズの熟成中の血圧降下ペプチドの生成に関与することが示唆された。

  • 小杉 達也, 岩澤 愛, 下村 雄一, 古川 修, 石田 聡一, 高浦 一希, 塩田 誠
    2017 年 66 巻 2 号 p. 107-115
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/07
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,飼料中β-カロテン推定量とクリームの白さおよびフレッシュな風味の関連を明らかにすることである。農場試験として,慣行飼料を対照区とし,飼料中β-カロテン推定量を低減した実験区を設け,飼料構成の異なる2種の飼料を泌乳牛へ給与した。得られた乳より調製したクリームの白さおよび風味と飼料中β-カロテン推定量との関連を調べた。飼料乾物量(以下,DM)あたりの飼料中β-カロテン推定量は,それぞれ12.8 mg/kg-DM, 10.0 mg/kg-DM, 9.8 mg/kg-DMであった。現地試験として,北海道オホーツク総合振興局管内の酪農家2戸のバルク乳より調製したクリームの白さおよび風味と飼料中β-カロテン推定量との関連を調べた。両者の飼料中β-カロテン推定量は,13.4 mg/kg-DM, 10.6 mg/kg-DMであった。また,それぞれのクリームの液状安定性についても調べた。クリームの白さにおいては,両試験の結果より,飼料中β-カロテン推定量の低い飼料を給与した場合,クリームのβ-カロテン量は少なく,クリームの白さの指標として用いた黄色の指標であるL*a*b*表色系におけるb*値は低くなり,官能評価においても白いと評価された。クリームのフレッシュな風味においては,両試験の結果より,飼料中β-カロテン推定量の低い飼料を給与した群のクリームは,フレッシュ感が強くなる傾向を示した。フレッシュ感の差は,香気成分としてHaxanoic acidの低下とHexanalの増加に起因することが示唆された。クリームの液状安定性に関しては,現地試験の結果より,飼料中β-カロテン推定量の低い飼料を給与した場合,液状安定性が高まる傾向を示した。

  • 中野 智木, 植木 素子, 溝口 竜, 竹下 正彦, 有馬 勇夫, 青木 孝良
    2017 年 66 巻 2 号 p. 117-123
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/07
    ジャーナル フリー
     酸性条件下におけるカゼインの凝集と溶解性に及ぼす加熱と塩の影響を明らかにするため本研究を行った。カゼイン溶液の濁度は加熱温度 (50-90℃)と pH (3.30-3.50)に依存して増加した。カゼイン溶液に NaCl を添加すると加熱による濁度上昇を抑制した。未加熱のカゼイン溶液に30 mM 以上の NaCl を添加すると pH 3.30-3.50 の範囲でカゼインが不溶化したが,不溶化したカゼインは加熱により可溶化した。25 mM 以下の NaCl 存在下では加熱によりカゼインは凝集した。NaCl 未添加のカゼイン溶液を pH 3.45 で加熱した時形成されるカゼイン凝集体には αS1-カゼインと β-カゼインのみが含まれていたが,10 mM 以上の NaCl を添加すると他のカゼイン成分の割合が増加した。pH 3.45におけるカゼインの溶解性に及ぼすカルシウム,マグネシウム,リン酸,クエン酸の影響と加熱による変化も調べた。酸性条件下おける加熱と塩に対するカゼインの挙動は中性域におけるものとは著しく異なっていた。
総説
  • 青木 孝良, 水野 礼, 木村 利昭, 堂迫 俊一
    2017 年 66 巻 2 号 p. 125-143
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/07
    ジャーナル フリー

     Numerous studies have been performed on casein micelles because they have characteristic structure and biological functions, and play important roles in processing of milk. More than twenty models have been proposed since Waugh proposed the first model of casein micelle in 1958. In this review, models of the casein micelle were divided into three groups of early stage, submicelle, and nanocluster modeles, and then their characteristics were described. Submicelle models of Slattery, Schmidt and Walstra had been accepted by many researchers. However, since Holt proposed the nanocluster model in 1992, most of the proposed models were modified nanocluster ones. We made discussions on the electron micrographs which played a key role in proposing the nanocluster models. Finally, we described whether it is possible to explain the changes in casein micelles during processing milk using the submicelle model of Schmidt, nanocluster models of Holt, Horne, and Dalglesish & Corredig. It is impossible to explain all phenomena which occur in casein micelles during processing of milk using any models. Further studies on casein micelles are needed.

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