ミルクサイエンス
Online ISSN : 2188-0700
Print ISSN : 1343-0289
ISSN-L : 1343-0289
67 巻 , 2 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
原著論文
  • 平田 昌弘, 木村 純子, 上田 隆穂, Tanja Barattin
    2018 年 67 巻 2 号 p. 65-79
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/11
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,ヨーロッパ乳文化の熟成チーズ発達史を考察する一環として,1)サルデーニャで実践されているチーズ加工を把握し,2)暑熱環境下においてどのように生態環境を利用してチーズの熟成を実現させているかを分析することを通じて,3)サルデーニャにおける熟成チーズの発達史を考察することにある。サルデーニャでは,凝乳からホエイを抜く際に加熱しない pasta cruda 法によりカズ・クルドゥ(S)/フィオレ・サルド(I)と呼ばれる熟成ハードチーズをつくってきた。サルデーニャの移牧民はかつて,低地に滞在する冬・春期はつくりだてのチーズを主にすぐに売却したり食に供したりしていた。冬・春期は低地でも気温が低いため,チーズを熟成させることも可能であった。夏期には高地に移動して熟成チーズを加工していた。夏期の高温乾燥となる自然環境には,高地の涼しさとより涼しくできる住居を利用し,乾燥を防ぐにはオリーブオイルを表面に塗布し,チーズの熟成を実現させてきた。移牧という年間の高度差移動を巧みに利用し,冬期低温・夏期高温乾燥となる地中海性気候に対処してチーズの熟成を実現させてきた。それは,凝乳をホエイの中での保存から空気中への保存,凝乳のカッティングによる凝乳からの急速なホエイ排除,燻煙による脱水,加塩,涼しい場所を選んでの静置という加工法の発見・発達であったとも言える。サルデーニャの地形(低地から標高1000 m 以上の高地),環境利用(冬・秋期間に低地,夏期に高地を放牧),ライフスタイル(移牧)が,サルデーニャ独自の熟成ハードチーズを生み出していったといえる。

  • 新井 利信, 關 敬弘, 瀬戸 泰幸
    2018 年 67 巻 2 号 p. 80-87
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/11
    ジャーナル フリー

     二次胆汁酸の一種であるデオキシコール酸(DCA)濃度を低減させることは,DCA に起因する種々の疾患を予防し,健康寿命の延長や生活の質の改善に役立つものと考えられる。我々はプロバイオティクスとして実績のある Bifidobacterium longum SBT2928および Lactobacillus gasseri SBT2055の DCA 低減活性を in vitro において試験した。その結果,両菌株とも DCA の前駆体であるコール酸(CA)は殆ど低減しなかったのに対して,DCA に対して有意な低減活性を示した。また,その低減様式は両菌株で異なることが示唆された。B. longum SBT2928は DCA 低減活性に糖質を必要とし,0.65%ラクトースを添加した際には基質 1 mM DCA の50%を反応液中から除去することできた。また,ラクトースを用いた場合の DCA 低減量はその構成糖であるグルコースやガラクトースを使用した場合よりも多かった。我々は B. longum SBT2928による DCA 低減機構は糖質を駆動力とした細胞内への取り込みであると推察した。さらに, B. longum SBT2928の DCA 低減活性はラクトース濃度に応じて変化すること;オリゴ糖としてラフィノースとラクチュロースを使用した場合にも有意な DCA 低減活性を示すことが明らかとなった。一方で, L. gasseri SBT2055は糖質の有無に関わらず DCA を低減することが可能であり,基質 1 mM DCA の25%を反応液中から除去することできた。我々は L. gasseri SBT2055による DCA 低減機構は菌体表面への吸着であると推察した。さらに, L. gasseri SBT2055の DCA 低減活性は塩化リチウム処理では変化は認められなかったが,加熱処理によって消失することが明らかとなった。我々はこれら 2 つの菌株が DCA に起因する種々の疾患の予防に貢献するものと期待している。

  • 木村 一雅, 北澤 春樹, 齋藤 忠夫
    2018 年 67 巻 2 号 p. 88-101
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/18
    ジャーナル フリー

     GOSをはじめとするプレバイオティクスオリゴ糖はヒト消化管下部でビフィズス菌を優位に増加させ,便性をはじめとする腸内環境の改善に有用な働きをする。しかし,構造が異なる市販各種オリゴ糖製品がビフィズス菌によりどの程度利用されるのかについて,詳細な検討をした報告は見られない。そこで,乳糖を対照として,市販オリゴ糖類であるガラクトオリゴ糖(GOS),ラクトスクロース(LS),ゲンチオオリゴ糖(GEO),イソマルトオリゴ糖(IMO),ニゲロオリゴ糖(NOS),キシロオリゴ糖(XOS),フラクトオリゴ糖(FOS),長鎖フラクトオリゴ糖(Fib),およびFOSの構成オリゴ糖成分について,主要なヒト由来ビフィズス菌7菌種16菌株による増殖性と培地中のオリゴ糖構成糖質の消長をHPLCで解析した。

     市販オリゴ糖のうち,対照に用いた乳糖およびGOS, LS, NOS, GEOの各オリゴ糖は被験ビフィズス菌16菌株すべてが高いkliett値を与え増殖した。一方FOSおよびFib,は B. breve の4菌株中2菌株, B. bifidum の4菌株すべてで生育が見られず,XOSは B. breve, B. bifidum, B. infantis の計10菌株すべてで生育が見られず, B. adolescentisB. longum で生育の遅延が認められた。IMOは B. bifidum の4菌株中3菌株で生育が認められなかった。

     FOSで,生育の見られなかった B. breveB. bifidum について,FOSを構成するフラクトースおよびKes,Nisの利用性について検討したが,それらの6菌株はいずれも単糖のFruは利用できるが,Kes,Nisでは生育しなかった。

     Glcを構成糖とするNGO,GEOは,オリゴ糖中に多量の単糖を含有しており,高いklett値を与えた菌株の培養においても培養上清中にはDP2以上のオリゴ糖成分が残存した。一方,IMOについては高い生育の見られた菌株においては,単糖およびDP3のオリゴ糖成分が顕著に減少した。

     本研究の結果から,ビフィズス菌の高い増殖性を示したオリゴ糖は,単糖よりもDP2,DP3以上の糖鎖が選択的に利用される傾向が見られた。またXOSやFOSの培養上清中の残存糖質の解析では,klett値が増加した菌株では顕著な単糖の増加が見られた。

     GOSやLSは乳糖の骨格にGalまたはFruが結合することで難消化性となり大腸に到達する。大腸内で糖鎖が分解し乳糖が生成すると,それはビフィズス菌の良好な炭素源となる。

     プレバイオティクスとしてのオリゴ糖の大腸内での機能は,共生微生物による糖鎖の分解や生成する糖鎖の利用性も重要な要素と考えられた。

総説
  • 阿野 泰久, 中山 裕之
    2018 年 67 巻 2 号 p. 102-110
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/11
    ジャーナル フリー

     ヨーグルトやチーズなどの発酵乳製品は古来より人類に親しまれてきた食品であり,発酵乳製品に含まれるペプチドや脂肪酸,乳酸菌には数多くの生理機能が報告されている。近年の研究により発酵乳製品の摂取と認知機能改善に関する報告が増加している。疫学研究や臨床試験研究により乳製品の摂取による認知症の予防効果が報告され,非臨床試験でも乳の発酵過程で生じる成分に認知症の予防効果が報告されている。また,著者らは発酵乳製品から同定したオレアミドとデヒドロエルゴステロールに認知機能の改善に効果があることを見出した。本総説ではこうした発酵乳製品の認知機能改善に関する研究の現状と今後の展望に関して紹介する。

海外レポート
酪農科学シンポジウム2018
ミルクサイエンス関連文献リスト
公告
学会記事
feedback
Top