ミルクサイエンス
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69 巻 , 1 号
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学会からの重要なお知らせ
原著論文
  • 織田 浩嗣, 田中 美順, 山内 恒治, 阿部 文明
    2020 年 69 巻 1 号 p. 3-10
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/27
    ジャーナル フリー

     目的:ウシ初乳の摂取がアルコール性肝炎を改善することが予備的臨床試験で報告されている。ラクトフェリン(LF)は初乳に豊富に含まれるため,LFとそのペプシン消化物(LFH)の経口投与がアルコール性肝障害モデルラットに与える影響を検討した。方法:対照群は,エタノールを含まない液体飼料で6週間飼育し,0.5%カルボキシメチルセルロース(CMC)水溶液を10 mL/kg体重で毎日ゾンデ投与した。エタノール群,LF群,LFH群は,5%のエタノールを含む液体飼料で飼育し,0.5% CMC水溶液,3%LF,LFHを含む0.5% CMC水溶液を10 mL/kg体重で毎日ゾンデ投与した。2,4,6週目に血液を採取し,血清アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST),アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT),トリグリセリド(TG),総コレステロール(T-Cho)を測定した。更に6週目に血清尿酸値,肝臓の病理組織,遺伝子発現,臓器重量を解析した。結果:血清AST,ALT,TG,T-Cho,尿酸値は対照群でエタノール群と比較して有意に低かった。2,4週目のALT,4週目のT-Cho,尿酸値はLFH群でエタノール群と比較して有意に低かった。肝臓のIL-11,ADH1,ALDH2遺伝子発現はLF群,LFH群でエタノール群と比較して有意に高かった。結論:LFとそのペプシン消化物の摂取は肝保護サイトカイン(IL-11),アルコール代謝酵素(ADH,ALDH)の産生を誘導することが示唆された。また,LFHの摂取が,アルコールの継続摂取により引き起こされる肝障害を一定期間抑制する可能性が示された。

  • 木下 英樹, 森下 光貴, 村田 祐太朗, 古閑 史也, 安田 伸, 荒木 朋洋, 井越 敬司
    2020 年 69 巻 1 号 p. 11-20
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/27
    ジャーナル フリー

     本研究ではムーンライティングプロテイン(MP)と呼ばれる多機能性タンパク質が乳酸菌の重金属の吸着および耐性にどのように関わっているのかを調べた。Lactobacillus gasseri(3菌株),L. casei/paracasei(3菌株),L. rhamnosus(2菌株),L. sakei(4菌株),L. plantarum(4菌株),L. reuteri(4菌株)の計20菌株について菌体表層のグリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素(GAPDH)の酵素活性測定を行ったところ,L. casei 及び L. paracasei において高い酵素活性を示す傾向が見られた。選抜した3菌株を用いて,蒸留水(DW)洗浄およびリン酸緩衝生理食塩水(PBS)洗浄において抽出されたタンパク質をSDS-PAGEで確認したところ,PBS洗浄画分において40 kDaと66 kDa付近にいくつかのバンドが見られたが,DW洗浄では一部を除き殆どタンパク質は検出されなかった。また,フェノール硫酸法による糖の検出を行ったが,糖は検出されなかった。N-末端アミノ酸配列解析により,L. rhamnosus TOKAI 45mおよび L. casei(または L. paracasei) TOKAI 83mの約40 kDaのタンパク質は GAPDH, TOKAI 45m株および TOKAI 65m株の約66 kDaタンパク質は GroELと同定された。カドミウム吸着試験では TOKAI 65m株および TOKAI 83m株では DW洗浄に比べて PBS洗浄菌体の方がカドミウムの吸着が低くなったが,TOKAI 45m株では逆の結果を示した。水銀では全体的にカドミウムより吸着率が高く TOKAI 45m株および TOKAI 65m株ではほとんど差が見られなかったが,TOKAI 83株では PBS洗浄の方が吸着率が低くなった。カドミウム耐性は,TOKAI 65m株ではほとんど差がなかったが,他の2菌株ではPBS洗浄菌体の方が耐性が低くなった。興味深いことに水銀では,カドミウムと逆の傾向を示した。以上のことから少なくともTOKAI 83m株ではカドミウムがMPに吸着することで無毒化されている可能性が示唆された。一方,水銀においては,水銀がMPに吸着したことで菌体内への取り込みが促進され毒性が発揮された可能性が示唆された。本研究によりMPが重金属耐性に影響している可能性が強く示唆された。

  • カリヤワサム KMGRM, 山下 慎司, 福間 直希, 木下 幹朗
    2020 年 69 巻 1 号 p. 21-28
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/27
    ジャーナル フリー

     日本をはじめとする東アジア諸国において大腸がんの罹患率は増加しており,その対策が急務となっている。先の我々の研究にて,牛乳及びマイタケの摂取はDMH処理マウスの大腸腺腫形成を抑制することを報告した(Kariyawasam et al., Milk Sci., 68(2), 85-93, 2019)。本報告では,その抑制機構を調査するために,先の報告で得られた大腸粘膜を用い,炎症関連サイトカインとアポトーシス関連タンパク質の発現を分析した。実験食はAIN-76に準拠し,牛乳(全脂粉乳)を10%加えた牛乳食,マイタケ凍結乾燥物を10%加えたマイタケ食,そして牛乳とマイタケを5%あるいは10%ずつ加えた混合食を設定した。そして11週間,マウスに各実験食を自由摂食させた。牛乳食,マイタケ食,混合食摂取はDMH処理による炎症性サイトカインTNF-αの増加を抑制した。とくに,牛乳食と10%混合食群はDMH未処理群と同程度のTNF-αレベルを示した。これらの摂取は他のサイトカイン発現も炎症抑制へと誘導した。一方,アポトーシス関連タンパク質発現において,これらの摂取群はコントロール群と比較し,抗アポトーシス性タンパク質を低値に,アポトーシス促進性タンパク質を高値に示した。加えて,DMH処理は盲腸内容物の短鎖脂肪酸レベルを低下させたが,マイタケおよび混合食摂取は短鎖脂肪酸レベルを増加させた。これらの結果は,牛乳及びマイタケの摂取による大腸腺腫形成抑制には大腸における炎症の抑制とアポトーシスの促進が関わっている可能性が示唆された。牛乳とマイタケ摂取による大腸保護へのアプローチは異なっており,そのため,単独摂取より同時摂取が大腸の健康により貢献するかもしれない。

ノート
  • 織田 浩嗣, 田中 美順, 山内 恒治, 阿部 文明
    2020 年 69 巻 1 号 p. 29-39
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/27
    ジャーナル フリー

     目的:ウシラクトフェリン(LF)の摂取によるヒトでの感染防御作用や免疫調節作用が報告されている。経口摂取したLFがこれらの生体調節作用を発揮する作用メカニズムを考察するため,放射性核種で標識したLFの消化管動態を検討した。方法:LFと1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラ酢酸(DOTA)を反応させ,アミド結合を形成させた。LFとDOTAの結合比を質量分析計で評価した。放射性核種イットリウム(90Y)をDOTAまたはDOTA結合LFにキレートさせた。90Y標識DOTAまたは90Y標識DOTA結合LFをマウスに経口投与し,放射線の分布を全身オートラジオグラフィーで観察した。結果:DOTAとLFは1:1の比率で結合した。90Y標識DOTA結合LFの経口投与では,投与10分後に主に胃で放射線が検出され,一部が小腸で検出された。投与60分後には胃で僅かに検出され,大部分が小腸で検出された。一方,90Y標識DOTAの経口投与では,投与60分後に胃と小腸で僅かに検出され,大部分が盲腸で検出された。結論:90Y標識DOTA結合LFを投与したマウスでは,主に小腸で放射線が検出された。経口摂取したLFは小腸で作用することで様々な生体調節機能を発揮する可能性が示された。

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