ミルクサイエンス
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71 巻, 3 号
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原著論文
  • 勝俣 浩, 信時 優子, 勝俣 悦子, 浦島 匡, 福田 健二
    2022 年 71 巻 3 号 p. 92-102
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/27
    ジャーナル フリー

     本研究では飼育下で分娩した太平洋カマイルカの母乳を搾乳し,乳成分分析を分娩後約3か月間,熱量及び色調変化を5カ月間調査した。

     乳成分変動は,脂質9~32.5%,蛋白質9.9~13.3%,糖分1.1~2.1%,灰分0.33~0.84%の範囲であり,高乳脂質,低糖質な乳であった。乳脂質は分娩後0日と1日で大きく変動し,蛋白質と糖質は変動が見られなかった。母乳熱量は2.3~3.5 kcal/gであり,泌乳期が進むにつれ増加した。乳熱量は飼育下のバンドウイルカより高い傾向にあり,この違いは生息域や生活様式が関与している可能性が考えられた。子の成長は出生時体長105 cm,体重12.9 kgであり,出生後15週で,129 cm,27.8 kgに直線的に増加した。

     母乳の色調は,約2週目ごろより緑白色に変化した。この現象は他の鯨類においてもいくつか報告されており,鯨類の特徴の一つである可能性が示唆された。

     本研究で得られた情報は1個体に基づくもので,今後他個体によるデータも集める必要はあるが,カマイルカの生態への理解や飼育下での人工哺乳の基礎データとして重要な意義を有する。

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