アニメ映画「もののけ姫」では,たたら製鉄が描かれている.たたら製鉄に関係するデータを高校生に提示し,映画の内容にも関係する,たたら製鉄が自然破壊につながる原因を考察させた.生徒たちは資料・データの読み取りは正確に行ったが,自然破壊とは製鉄の原料を得るための山削りや森林破壊よりも,燃焼による大気汚染と考えた.「もののけ姫」の世界観をつかむためには,地学の知識を理解した上で,歴史的な背景を含めた自然観が必要である.
宮崎駿監督作品「天空の城ラピュタ」を導入用映像教材として,資源問題に関する教材開発を行った.本作品はエンターテイメントとしてだけではなく,科学技術と人間社会の関係を考えるという視点からも大人の鑑賞に堪えるものである.現代の日本には稼行している鉱山はほとんどないが,よく資料収集をし,凝った設定のアニメーション作品を用いることで,日本の若者にも資源問題を身近に感じてもらうことができる.このような形で学校教育での資源問題を扱うことは,「持続可能な社会の作り手」の育成に重要であると考えられる.
街中には多くの石材が使われており主に花崗岩や大理石が用いられている.大理石の石材中には化石を含むものもあり以前からその存在が報告されてきている.これら街中化石・石材を題材に街中化石を探し出す街中化石・石材フィールドワークを主体とした授業を立案し実施した.その結果,学習者には石材中に入っている化石を探し出すための見る目が養われ,興味や関心が引き出され,自ら化石を見いだすことができるための力量が形成された.加えて教員を目指す学生の今後の教育に資する素養とすることができた.
2020年コロナ禍において,地学の隣接分野である地理学分野におけるボランタリーな遠隔学習への取り組みとして,高校教員有志によるオンライン学習用教材作成と公開,大学教員有志による大学生向け自然地理学オンラインセミナーの開催が行われた.高校の地理教材は,オンラインで使いやすい地図を多用した点と著作権フリーの画像を使用したスライドが特徴的である.自然地理学オンラインセミナーは,全国30大学以上,200名以上の学生が同時にセミナーを受けたということが特徴的である.
第74回全国大会のシンポジウムは,コロナ禍によって急激に多用されるようになったオンライン教育をテーマとした.当日は,ハンズオン資料のオンライン化,YouTube配信,オンラインによる相互連携,および2020年春以降の地理教育分野での取り組みについて,大学博物館研究員,地質コンサルタント会社所属のYouTuber,高等学校地学教員,地理学分野の大学教員という多彩なスピーカーから報告をいただいた.ここでは,オンライン教育の歴史も含めてその概要を報告する.
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