未来共創
Online ISSN : 2435-8010
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論文
  • 『存在と無』における現象学的他者論を中心に
    赤木 優希
    2025 年12 巻 p. 3-20
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/08/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿の主題は、恋愛における他者との共生がどのように可能であるかを、現代フランスの哲学者であるジャン=ポール・サルトルの思想に基づいて検討することである。現代社会において、結婚を媒介として恋愛と性と生殖を一体のものとして捉えるロマンティック・ラブ・イデオロギーが恋愛をめぐる支配的な言説となっている。これに対して、『存在と無』においてサルトルは、必然的に挫折へと至る恋愛のあり方を、その現象学的他者論の一つとして分析した。先行研究において、彼の恋愛論は愛を過剰に消極的に捉えるものとして批判されてきた一方、あくまでも他者の自由を尊重する彼の分析は、ロマンティック・ラブ・イデオロギーを相対化させる恋愛観として再評価されてもいる。しかし、そのように挫折へ至る愛が、どのようにして恋愛の持続可能性と両立するのかは、定かではない。本研究は、このような観点から『存在と無』における現象学的他者論を再検討し、特に性的欲望に関する議論を参照しながら、そこにおいて愛の持続可能性がどのように捉えられうるのかを考察する。それによって、サルトルの恋愛論の今日的な意義を明らかにすることが、本稿の目的である。
  • ニュージーランドの 教師に着目して
    瀬戸 麗
    2025 年12 巻 p. 21-52
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/08/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿の目的は、新自由主義的な教育改革が進行するニュージーランドにおいて、教師がどのように文化に応じる教授法 (Culturally Responsive Pedagogy)を実践するのかについて明らかにすることである。ニュージーランドの教育政策は、長年にわたる新自由主義的な改革と二文化主義を特徴として いる。そのような背景の中で、教師が学習やその評価、そし て子どもの文化的多様性とどのように向き合っているのかに焦点を当てて検討した。その結果、教師たちは能力や評価軸 の多元化を求め、政府や教育評価局に対して意見を述べるこ とによって、改革下で推進される枠組みの変更を試みていた。 また、教師たちはマオリ文化を重視しつつも、民族間の葛藤や子どもの複雑なアイデンティティを考慮していた。学習参加において多様なアプローチを設定したり、民族間で知識構造が異なることを意識した学習目標を立てたりすることで、 多様な文化的背景をもつ子どもが学校生活の中に居場所を見 出せるよう取り組んでいた。ただし、そのようなCRP実践にも葛藤がないわけではなく、その点についてプライバタイ ゼーションの観点から論じた。
  • デンマークのエフタスコーレ (efterskole)にみるリスク予防の機能に着目して
    段畑 実生
    2025 年12 巻 p. 53-76
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/08/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、デンマークのエフタスコーレ(efterskole、以下ES)の機能をリスク予防の視座から明らかにすることを目的とした。ESとは14歳〜18歳の若者を対象とした私立の学校である。寄宿制であり、アートやスポーツ等の多様な選択科目を有する点を特徴としている。異なる3校のESで生活する生徒を対象にインタビュー調査を実施し、レジリエンス理論に基づき分析した。その結果、友人関係の乏しさ・いじめの経験、不安定な家庭環境、進路選択の困難、学校疲れ・学習の遅れ、発達障がいによる対人関係の困難、移民の背景による学校生活の困難等、移行期の若者が抱える様々なリスク要因が明らかとなった。これらに対しESでは、共同生活、家族と離れて暮らす機会、試行錯誤する機会、時間や活動内容のゆとり、生徒のニーズに応じた柔軟な実践、教員のサポート等が防御促進要因として働き、若者のレジリエンスを促進したと捉えられた。ESはフォーマルな学校とは異なる特徴をもつノンフォーマルな共同体であり、こうした市民社会の柔軟性が、多様かつ複合的な若者を包摂する上で有効に機能していると考えられた。
特集
  • 「社学共創」への共創的アプローチ
    徳永 恵美香, 伊藤 莉央
    2025 年12 巻 p. 77-81
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/08/01
    ジャーナル オープンアクセス
  • 南アフリカ共和国のLife Orientationの教科書と指導書を事例に
    坂口 真康
    2025 年12 巻 p. 83-114
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/08/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿の目的は、学校教育を通じた「社学共創」と「共生」 について考察することである。その際、南アフリカ共和国 のLife Orientation の教科書と指導書を事例とした議論を展開する。本稿では、同教科の後期中等教育段階の10年生と 11年生の任意の教科書と指導書の記述の分析結果を踏まえ て、主に次の点を指摘する。まずは、同教科の「民主主義と人権」と「社会と環境に対する責任」の単元において、ロー カルあるいはグローバルな社会や環境の課題について、学習者が他者と「共に生きる」際の「人権」、「多様性」、「尊厳」 や「尊重」といった観点(「共生」)について学びつつ、知識 や経験を有する学校外の組織と「協力」し、「共に働く」こ と(「社学共創」)を通じて、それらの課題の解決に取り組むための教授・学習内容が設定されていることを指摘する。次 に、そのような課題に取り組む中で、「市民社会」の「一般 の人々」としての学習者がスキルを発揮することが重視されていることを指摘する。その上で、本稿で取り上げた10年 生の教科書と指導書において人間の「尊厳」が重視されてい る側面が見られることを取り上げつつ、それが現代の日本社会や国際協力における「社学共創」や「共生」を議論する際 の重要な要素であることを踏まえた考察を行う。
  • 杉田 映理, 山田 陽子
    2025 年12 巻 p. 115-136
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/08/01
    ジャーナル オープンアクセス
    第2回のテーマ研究会では、杉田映理先生と山田陽子先生の実践についてご報告をいただき、社学共創の具体的なあり方とはどのようなものであるのか、研究会参加者で考えを深めた。本稿では、杉田先生、山田先生の実践報告について、当日の報告内容に沿って掲載する。
  • エディンバラ大学調査をふまえて
    渥美 公秀 , 今井 貴代子, 内山 志保
    2025 年12 巻 p. 137-182
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/08/01
    ジャーナル オープンアクセス
    人間科学研究科では、2024年度より、大阪大学OUマスタープラン実現加速推進事業の1つとして、プロジェクト IMPACT を実施し、大阪大学における研究・教育・実践の社会的インパクトについて検討している。社会的インパクトとは何か、社会的インパクトはどのように表現できるか、社会的インパクトを高めるにはどうすればいいか、社会的インパクトの問題点は何かなどについて幅広い議論を展開しています。本章では、社会的インパクトに関する基礎的な事柄を整理し、英国のエディンバラ大学における社会的インパクトの先行事例調査を報告するとともに、人間科学研究科が実施してきた事例をもとに大阪大学らしい社会的インパクトを示していく展望を紹介する。
研究ノート
  • エヴァ・イルーズ教授来日連続セミナーに寄せて
    山田 陽子
    2025 年12 巻 p. 183-198
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/08/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は、社会学者エヴァ・イルーズ(ヘブライ大学、社会科学高等研究院EHESS)を招へいして開催したセミナー「感情・親密性・資本主義―愛の終焉とエモディティ(感情商品)」(2024年3月13日(水)14:30~17:00、大阪大学中之島センター)でのイルーズの基調講演の内容や議論を記録するものである。イルーズの講演では、「資本主義的主体、ティンダー、ウェブのエモーショナリゼーション」という題目のもと、ウェブのエモーショナリゼーションとテクノ・エモディティの検討を通して、出会いや社会性の破壊的イノベーションがどのように生じているのかが検討された。
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