肺野領域の血流系は,肺動脈経由と大動脈経由の2つで構成される.これまで,大動脈経由の再潅流は肺動脈経由の血流の1割以下であるために,γ関数の当てはめによってあらかじめその影響を排除する方法が取られてきた.本研究では,最初に肺動脈経由と大動脈経由の2つの入力をもつ血管系で構成される血流系のインパルス応答をγ関数でモデル化することによって,再潅流の影響を評価する方法について検討するとともに,2つの血流系を分離して評価する解析法を提案する.また,これらの手法を用いた試作システムを肺がん患者の3症例に適用した.さらに,造影MR像を用いて肺野内部の局所血液量の総計と,肺動脈と左心房の信号強度から推算した肺領域全体の大域的血液量を比較した.また,肺野内を占める再潅流の割合を高速グラジエントエコーシネ(fast GE cine)より求めた心拍出量所見と比較し,妥当性を検討した.