超音波による組織性状の定量診断技術が近年盛んに開発されているが,より高精度な診断のためには各種の生体組織が有する固有の音響特性と病理学的性質との詳細な関係性についての理解が必要不可欠である.本研究では,音波伝搬に関わるパラメータである音響インピーダンスと音速に着目し,病態の異なる4種類のラット肝臓(正常・脂肪肝・非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)・硬変肝)について、中心周波数が80 MHzの振動子を搭載した超音波顕微鏡を用いて組織学的微細構造との関係を検討した.病理写真との比較により脂肪肝およびNASHでは脂肪滴が多数認められ,音響インピーダンスおよび音速はどちらも正常肝と比較してわずかではあるが統計的に低値,線維肝は高値となった(
p<0.01).この結果は,肝臓内に脂肪および線維が沈着することによる組織変性を反映していると考えられる.以上より,肝組織の変性状態を音響特性を指標として判定できる可能性が示唆された.
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