Whole gamma imaging(WGI)は「検出可能なガンマ線をすべて画像化に生かす」ことを基本概念とした,新しい核医学診断のための画像化技術である.PET にコンプトンイメージングの機能を追加することで,今まで使われてこなかった放射性核種をイメージングに利用できるようになる.このWGIが真価を発揮するためには,PET検出器リングの内側に挿入する散乱検出器リングの高性能化が鍵となる.本稿の前半部では,WGIの原理と,コンセプト実証のための散乱検出器および試作機の開発状況を中心に紹介する.後半部では,陽電子放出に加えて高エネルギーガンマ線を放出する89Zr や44Sc などの核種を有効活用する新しいイメージング手法や,既存MRIをPET/MRIにアップグレード可能なC型Compton PETなど,WGIの応用について紹介する.
核医学における多核種撮像技術は,個体レベルでの複数分子の動態を同一座標,時間軸上で観測することを可能にするため,PET(positron emission tomography),SPECT(single photon emission CT)診断およびRI(radio isotope)内用療法の定量化において進展が期待されている.本稿では,われわれの提案してきたコンプトンカメラとPETをハイブリッド化する,コンプトンPETハイブリッドカメラの開発の現状について紹介するとともに,アクティブコリメーターを用いた手法,今後のコンプトンカメラの改良および改善技術として複数光子の時空間相関を用いた撮像技術の可能性について紹介する.日本がこの分野を先導し,日本発の新たな核医学診断装置が登場することを期待する次第である.
群馬大学では,宇宙航空研究開発機構(Japan Aerospace Exploration Agency; JAXA)と量子科学技術研究開発機構(National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology; QST)高崎量子応用研究所との共同研究で医療用コンプトンカメラの開発を進めてきた.群馬大学のコンプトンカメラは散乱体と吸収体にSi とCdTe の半導体検出器を用いており,高いエネルギー分解能と高い空間分解能を有している.特に低エネルギーの𝛾線測定に適しており,核医学診断分野で最も広く利用されている99mTc のイメージングも可能である.これまでさまざまな実験を行い,臨床試験にも成功した.また,群馬大学では重粒子線治療を行っていることから,重粒子線の飛程測定に関する研究も行っている.本稿ではこれまでの研究成果を紹介するとともに,そこから得られた研究課題についても言及する.
電子飛跡型コンプトンカメラは,ガンマ線1光子ごとにその到来方向とエネルギーを判別できる次世代のガンマ線撮像装置である.本稿では,当該カメラの撮像の仕組み,開発の歴史,さらなる改良に向けた現在の取り組み,および,医療への応用などについて簡単にレビューする.
コンプトンカメラは1970年代に,ガンマ線をイメージングする画期的手法として宇宙分野と医療分野で独立に提案され,その後は分野間の交流が皆無であった.一方で,電力・スペース・重量が著しく限られる衛星実験で突き詰めた高度な技術は医療イメージングにおいても必ず有用であり,逆に高感度・高精度の画像が求められる医療の厳しい要求は,宇宙の身近な実験室として大きな恩恵をもたらす.本稿では,近年開発が目覚ましい高性能シンチレーターと光センサーMPPC(multi-pixel photon counter)を用い,廉価かつ超小型のコンプトンカメラを基盤としたアクティブ動態イメージングについて紹介する.特に,宇宙・原子核(基礎科学)と医療(臨床・治療イメージングなど)の連携がもたらす技術革新や,宇宙実験から得た新たな発想として,薬剤の革新的放射化イメージング法についても提案する.
We report a chest X-ray (CXR) anomaly detection method based on models of normal anatomical structures (ASs). Conventional computer-aided diagnosis (CAD) methods for CXR involve machine learning of predetermined target lesions; thus, these methods are unable to detect and diagnose unknown lesions. As such, we are building a new CAD system to model normal ASs and detect anomalies based on changes in ASs due to disease. The method consists of AS segmentation by U-Net, index calculation from the segmented AS region, and anomaly detection compared with the distribution of normal indices. The position, size, and continuity of the segmented ASs were used as indices. Six structures near the central shadow, which tend to be easily overlooked on CXR, were used as the target ASs. For the anomaly detection evaluation, 240 normal cases and 255 abnormal cases were used, and an average sensitivity of 0.774 and specificity of 0.827 for each AS were obtained. However, abnormalities that do not affect the currently used indices cannot be detected. In the future, we plan to apply this method to other ASs and the entire lung and adopt other indices, such as features that directly reflect image patterns.