メルコ管理会計研究
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最新号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
研究論文
  • 濵村 純平
    2024 年 15 巻 2 号 p. 3-16
    発行日: 2024/12/15
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル フリー
    本研究は,サプライヤーと顧客志向なバイヤーからなるサプライチェーンでの組織間関係に光を当てる。とくに,需要の不確実性があるとき,組織間コスト・マネジメントに取り組むと,サプライチェーン全体にどう影響するかを分析する。分析の結果,不確実性の程度の増加は,サプライチェーン全体に望ましくないとわかった。対して,顧客志向なバイヤーはサプライチェーン全体に良い結果をもたらすと判明した。この結果は,日本企業が取り組んできた,原価企画でのマーケット・インの製品開発などの顧客志向な取り組みを支持するといえる。
  • インタビューによる実態調査
    牧野 功樹
    2024 年 15 巻 2 号 p. 17-33
    発行日: 2024/12/15
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル フリー
    本研究は,中小企業における設備投資マネジメント・プロセスの実態と設備投資マネジメント・プロセスに影響を与える要因を明らかにすることを研究課題として,北海道釧路・根室地域に所在する中小企業10社を対象にインタビュー調査を実施した。そして,インタビュー調査の結果に基づき,質的データ分析(QDA)を行い,中小企業における設備投資マネジメント・プロセスの実態を記述した。また,中小企業における設備投資マネジメント・プロセスに影響を与える要因として,①戦略,②系列,③外部専門家,④外部環境について検討を行った。
  • ケースに基づく考察と示唆
    谷守 正行
    2024 年 15 巻 2 号 p. 35-50
    発行日: 2024/12/15
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル フリー
    デジタル・プラットフォームの検討企業のケースを基に管理会計のデジタル・トランスフォーメーション(DX)の内容を研究した。まず,最初に提唱されたDXの意味と2018年の経済産業省「DXレポート」を参考にして,本研究におけるDXの定義とその対象とする管理会計の範囲を整理し,管理会計のDX(管理会計DX)を定義した。次に,定義された管理会計DXに基づく判定条件を作成し,先行研究のレビューを行った。結果は,国内外とも管理会計DXの先行研究は十分とは言えず,ほとんどは概念的な研究であった。そこで,本研究では実際のケースを探索的に調査研究することとした。その結果,地域銀行へのアクション・リサーチによってデジタル・プラットフォーム実現のためには管理会計DXが不可欠であることが分かった。企業全体のデジタル・ビジネス戦略に適合するように管理会計DXが求められるものであるが,逆に管理会計DXの対応スピードや内容が企業のデジタル・ビジネスの実現に影響している可能性がある。さらに,ケーススタディーの結果,DXによる新たな管理会計の可能性としてハイブリッド化,埋め込み化,およびアクション化の3点のインプリケーションが得られた。これは,今後の管理会計研究と経営実務の両面に貢献するものである。
  • Studio BACUにおける採算管理の事例
    吉見 明希
    2024 年 15 巻 2 号 p. 51-61
    発行日: 2024/12/15
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル フリー
    本稿では,知的・創造的なコンテンツのうち,特に商業アニメーションの制作を行う会社を対象として,アニメーション制作を商業的に成立させるために,既存の管理会計手法に準じた手段,もしくは会計的思考が用いられていることを示す。特に,管理会計の導入が作業の効率化のみならず,創造性の担保にも寄与することを指摘する。具体的には,アニメーション制作会社であるStudio BACUの事例を紹介し,ミニ・プロフィットセンター(MPC)の仕組みに準じた採算管理手法を分析する。
  • 横川 久
    2024 年 15 巻 2 号 p. 63-75
    発行日: 2024/12/15
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル フリー
    Enterprise Resource Planning System(以下,ERPと称する)は,現在,企業の基幹システムとして広く普及している。先行研究では,ERPは従来の経営情報システムと比較し機能統合や業務プロセスの標準化の点で優れている,と指摘されている。本稿では,Jensen and Meckling(1992)による「情報移転コストが分権化の議論において極めて重要である」との主張に基づき,300名以上の企業に在籍する1,501名のマネジャーを対象としてアンケート調査を実施し,ERPの導入が情報の非対称性と分権化の関係にどのような影響を与えるかについて検証した。分析結果から,ERPの導入が情報の非対称性と分権化の関係を弱める効果があることを発見した。さらに,オンプレミス型のほうがクラウド型よりもERP導入時の調整効果が大きいことも明らかになった。
文献研究
  • 森 浩気
    2024 年 15 巻 2 号 p. 77-90
    発行日: 2024/12/15
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル フリー
    本稿では,隣接領域の研究を参照しつつ,管理会計研究における神経科学の応用可能性を探究する。まず,社会科学研究において現実世界を生きるヒューマンの分析を行う際,神経科学を応用する意義があるという前提を整理した。つぎに,神経経済学,消費者神経科学,経営学,そして管理会計学の各研究の文献レビューから,様々な領域の社会科学研究において実際に神経科学が応用されている実態を明らかにした。以上の情報から,仮説構築や結果の解釈,仮説検証手法の選択,隣接領域からの理論の参照,そして幅広い組織成員がどのようにコントロールへ対応するかという問題の分析といった各場面で,管理会計研究において神経科学を応用できる可能性を示した。
実態調査研究
  • 査読制度に対する投稿者意識に関する質問票調査結果の分析
    加登 豊, 松尾 貴巳, 安酸 建二, 岡田 幸彦, 船越 多枝, 喜田 昌樹
    2024 年 15 巻 2 号 p. 91-103
    発行日: 2024/12/15
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル フリー
    管理会計関連の学術研究雑誌では,査読制度(peer review system)が導入・運用されている。査読制度は,学術研究の質の向上と高水準の研究蓄積に貢献することを企図しているが,管理会計領域ではその歴史は浅いこともあって,研究者間で同制度に対する共通理解が得られているとはいえない。本稿では,管理会計研究者(投稿者および査読者)に対して実施した査読制度に関する質問票調査の結果を報告する。分析対象の査読付き学術雑誌は,『原価計算研究』『管理会計学』『メルコ管理会計研究』『会計プログレス』である。本稿では,質問票調査結果から,これまで明らかにされることのなかった投稿者の査読制度に対する認識を示すことに重点を置く。投稿者の査読制度への対応状況を知ることは,査読制度の二つの機能──査読の「質フィルター機能」と「質改善機能」──の高度化にも貢献する。
その他
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