メルコ管理会計研究
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8 巻, 2 号
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研究論文
  • 原価比較法と損益分岐点法を中心として
    清水  信匡
    2016 年 8 巻 2 号 p. 3-16
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/08
    ジャーナル フリー
     2011 年の設備投資行動に関するアンケート調査において,多くの企業が投資評価技法として損益分岐点法や原価比較法をよく利用しているという発見があった。つまり,日本における投資評価技法は従来考えられていたものよりもさらに多様性があることが明らかになった。両技法の考え方と特徴を調べるために既存の文献を検討した。その結果,両技法には時間価値を加味したものとそうでないものが存在した。両技法の利用度データを使ってクラスター分析と相関分析を実施したところ,この2 つの評価技法は,単純回収期間法に近い技法であることや単純回収期間法と併用されることが多いことが判明した。 したがって,両技法の利用実態としては時間価値を加味しないままに利用されているものと推測される。
  • 互酬性にもとづく相互作用
    藤野  雅史, 李   燕
    2016 年 8 巻 2 号 p. 17-33
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/08
    ジャーナル フリー
     本稿の目的は,計画を実行するだけでなく,自律的に変化に対応することが求められる現場のロワーマネジャーが,相互作用プロセスのなかでどのように管理会計情報を利用するのかを考察することである。日本の製造企業におけるインタビューベースの事例研究にもとづいて,ロワーマネジャー間の相互作用にみられる互酬的な関係に焦点をあて,そのなかでの管理会計情報の利用を検討した。公式の管理会計情報は,しばしばロワーマネジャー間の相互作用の妨げになっていたが,互酬的な関係にもとづく情報交換が相互作用を可能にしていた。互酬的な関係には限定交換と一般交換という2つのタイプがあった。 限定交換では,ローカルな情報交換のメカニズムが共有されることで,公式の管理会計情報だけではわからない他部門の情報ニーズを理解することができた。一般交換では,経営理念が互酬性の期待を高めると同時に,価値観の押しつけに陥りやすいことがわかった。 それを避けるためには,ロワーマネジャーが一般交換におけるお返しを具体的に認識できるような仕組みが重要であった。
  • 株式会社駒ヶ根電化における考察
    関 利恵子, 安城 泰雄
    2016 年 8 巻 2 号 p. 35-47
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/08
    ジャーナル フリー
     本稿では,株式会社駒ヶ根電化におけるMFCA 社内研修会でのヒアリング調査及びMFCA 成果発表会での報告をもとにMFCA の継続的導入の要因とMFCA をマネジメントツールとして展開する可能性について検討した。本稿の考察から,MFCA の継続的導入要因としては,MFCA の有用性をトップが認識していた点,従業員が一般的な活動としてMFCA を実施する素地ができていた点などが示された。また,MFCA の継続的な導入が,従業員の作業モチベーションを向上させたり,MFCAの一連の活動が組織の結束力を高めるといった効果があることも明らかになった。こうした効果にも着目し,本稿ではMFCA の新たな展開として,バランスト・スコアカードで記述した戦略マップとMFCA を関連づけて,マネジメントツールとしての可能性を検討した。
  • ミドルマネジメントの組織内調整に関する文献レビュー
    井上 秀一, 藤原 靖也
    2016 年 8 巻 2 号 p. 49-61
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/08
    ジャーナル フリー
     本稿の目的は,医療機関におけるミドルマネジメントが,トップマネジメントと現場の間に立ち,どのように管理会計システムを利用することによって組織内調整を行っているのかを文献レビューにより検討することである。これまで医療機関では,NPM(New Public Management)の中で管理会計システムの導入が試みられてきた。しかし,先行研究では管理会計システムの導入と,それによる組織変化に対する現場の医療専門職の反応として,抵抗と受容という2 つの反応が見られてきたことが示されてきた。 本稿では,目標一致を図るために重要な要因として組織内調整におけるミドルマネジメントの役割に焦点を当てている。医療機関のミドルマネジメントの役割には「吸収役」と「双方向の窓」という2 つがあるといわれている。前者は,現場の活動が機能することを第1 に考え,トップマネジメントの提示する会計情報が現場の活動に影響を及ぼさないよう吸収する役割である。後者は,従来,医療機関以外でも指摘されてきたように,トップマネジメントが示す会計情報を翻訳し現場に伝達する一方で,現場の意見を集約し,それをトップマネジメントに反映させる役割である。 本稿では,ミドルマネジメントのこれら2 つの役割に焦点を当て,ミドルマネジメントによる組織内調整について文献レビューを行った。文献レビューの結果,第1 に,ミドルマネジメントは専門職や管理者など複数のアカウンタビリティが求められる中で,それぞれの場面に合わせて吸収役あるいは双方向の窓としての役割を果たすのかを決め,組織内の役割期待に関する秩序をコントロールする役割があるという知見が得られた。第2 に,ミドルマネジメントがどのように管理会計システムを利用し吸収役としての役割を維持しているのかという点と,ミドルマネジメントが現場の情報を集約しトップへ伝達する際,その情報の一部をトップに伝えず吸収するという点については未だそのプロセスが明らかになっていないことを今後の研究課題として指摘している。本稿は,ミドルマネジメントによる組織内の調整行動が未だ明らかにされていない点を指摘し今後の研究へつながる検討課題を示している点で重要な貢献があるといえよう。
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