プラスチックは「軽い,壊れにくい,水に強い」という長所を有するが,環境中に放出されると「沈まずに遠くまで運ばれる,自然分解されず残留しやすい」という短所になり代わり,プラスチック汚染は現代のグローバルな環境問題となっている.本報では,河川におけるマイクロプラスチック(MP)の動態に着目し,現在までの知見と今後の課題を記述する.特に,日本全国の河川水中におけるMP汚染状況について,著者らの研究成果を中心に紹介する.
プラスチック(プラ)ごみの不適切な処理や管理による海洋汚染は,地球規模で拡大しており,国際社会で対処すべき喫緊の課題となっている.2022年2~3月に開催された国連環境総会では,海洋プラごみの問題解決に資する法的拘束力のある国際約束を作成することが決まり,2024年末までに国際約束の目的の特定や内容を政府間交渉委員会(INC)で検討することになった.INCは,モニタリング等のデータ及び情報の共有強化を進めていくこととしており,科学的知見の整備や効果的な発生抑制対策の事例提供等を求めている.このような背景のもと,国立環境研究所では,プラのライフサイクルを俯瞰して重要なケースを取りあげ,効果的・効率的な流出削減に資する科学的知見を得ることを目的とした調査研究を実施している.本論文では,プラごみの循環・廃棄過程からのプラ微小粒子の排出実態把握と流出抑制に資する関連調査研究を取りあげて,実施概要や進捗状況を紹介する.
我が国では,災害時に多くの避難所で段ボールベッドが用いられており,我々はこれまでに段ボールベッドの燃焼性に関する研究を行ってきたが,避難所環境の更なる安全性の向上を目的に段ボールベッドを難燃化し,その燃焼試験を行った.燃焼挙動の評価基準として定義した燃焼熱量の最大値及びその到達時間,熱量の急激な立ち上がりの時間を用いて,難燃化段ボールベッドの燃焼性を考察した.また,難燃化段ボールベッドの種類,設置間隔のパラメータ変化が,燃焼挙動に及ぼす影響について考察した.この結果,難燃化処理を行うことで,燃焼を遅らせることや,800 mm間隔で設置した場合に延焼を防ぐことができることを示した.
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