放射光X線を用いた構造解析は,複雑な内部構造を有するプラスチックの変形挙動や結晶化挙動を構造論的に解明する上で非常に強力な手法である.工業的に広く利用されている配向ポリエチレン(PE)の一軸延伸およびステップ–サイクル試験過程では,広角X線回折(WAXD)測定から算出した結晶配向度および結晶度はほとんど変化しておらず,変形過程で結晶構造は安定的に存在していることがわかった.一方,小角X線散乱(SAXS)測定から算出したラメラ周期構造の長周期は一軸延伸過程で単調に増加した.また,ステップ–サイクル試験過程において,長周期はひずみの変化に追随した変化を示し,引張り過程では増加,圧縮過程では減少した.しかし,応力がゼロになるまで圧縮しても長周期は初期値まで回復せず,また,ひずみが増加するとともに回復量が減少した.これらの結果より,配向PEは変形過程で非晶分子鎖の伸長が生じ,かつ結晶構造からの分子鎖引き抜きが進行することが示唆された.