ナノ粒子は直径が100 nm以下のナノサイズの粒子のことである.金,銀などの金属ナノ粒子は,バルクと異なる特性を有する.粒子径が数十nmの金ナノ粒子が分散した溶液は,可視光吸収スペクトルの波長530 nm付近に局在化表面プラズモン共鳴による吸収ピークを有する.この溶液の透過色は赤色を示し,金ナノ粒子はタンパク質,DNA,酵素,微生物などの生体分子と高い親和性を有するため,抗原検査薬の赤色の標識材料や生体分子を検出する化学センサに応用されている.一般的に吸収ピークが大きく,鋭利なピークを有するナノ粒子は分析精度が高いので,金属ナノ粒子を用いた抗原検査薬などのバイオセンシングでは,光吸収が大きく粒度分布の狭いナノ粒子が要求される.本稿ではこのような金属ナノ粒子の現状を踏まえて,金属ナノ粒子の種類,製造方法,用途について解説する.
固溶型合金ナノ粒子は構成元素や組成比によって連続的な機能・物性制御が可能である.最新の取り組みとして,白金族元素とpブロック金属を組み合わせたナノ合金や多元素ナノ合金の合成,その触媒特性について紹介する.白金族元素であるルテニウム(Ru)とpブロック金属元素であるインジウム(In),スズ(Sn)を固溶させたナノ合金の合成に成功し,これらが水素発生反応で高い活性を示すことを明らかとした.また,近年注目を集めている多元素ナノ合金に関して,白金族全6元素や貴金属全8元素から成るHEAナノ粒子,チタン(Ti)からビスマス(Bi)までを含む15元系超HEAナノ粒子などの多元素ナノ合金の合成に成功し,これらがエタノール酸化電極反応や水素発生反応などで極めて高い活性を示すことを明らかとした.将来的には,多元素合金の研究において,合成・評価・計算実験の高効率化やデータ科学の応用が求められる.
幾何学的に考えられるほとんどの結晶構造は実在しておらず,限られた構造のみ利用可能である.しかし,結晶構造は材料の特性を大きく左右するため,利用可能な結晶構造の制限はあらゆる応用面でボトルネックとなる.そこで,我々は元素間の相溶性に着目し,熱力学的に不安定な結晶構造をもつ合金相の安定化について検討した.その結果,これまで熱力学的に安定なL12(Cu3Au型)構造およびA1構造のみ報告例のあるFePd3合金に対し,Feとは固溶できないがPdとは固溶可能なInを微量導入することで,前例のないZ3型構造(L10型PdFePd 3原子層とPdIn規則合金 1原子層が交互積層した構造)を安定化することに成功した.また,三元素がナノレベルに混合した単分散ナノ粒子を用いたことが,Z3型構造の形成を可能にしたことも確かめられた.本研究を基に結晶構造ライブラリーが拡張され,様々な物理的・化学的な特性の劇的な変調に貢献できると期待している.