理学療法の歩み
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16 巻, 1 号
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特別寄稿
  • 出江 紳一
    2005 年 16 巻 1 号 p. 2-4
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/04/27
    ジャーナル フリー
     診療技術は臨床意志決定とスキルとに分けられる。症例報告は高度の診療スキルの上に成り立つものであり,その積み重ねによって臨床意志決定の能力が向上する。本稿ではリハビリテーション医学研究における症例報告の意義を,希少症例の治験,介入「無効」例から学ぶこと,介入の多様性の側面から述べ,さらに質的研究の重要性を強調した。
  • 村瀬 雅敏
    2005 年 16 巻 1 号 p. 5-13
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/04/27
    ジャーナル フリー
     宮城県で行われた第39回日本理学療法学術大会では演題総数が1,000題を超えてきたが県内士会員の発表は他の学会への発表も含めて低迷しているように思われた。そのため,学会発表を再考するために,まず過去10年の県士会員の学会発表動向を述べると共に,他県の状況も合わせて比較検討した。宮城県は会員数のわりに発表演題数が少ない傾向にあり,近年さらに減少の傾向にあることも明らかになった。そこで,改めて研究とは何かという観点,何故研究を行うのかという観点からの私見を述べた。研究方法の中で症例報告は研究デザインタイプの中で妥当性の低い階層に位置しているが,その利点として,研究をするうえで便宜的な手法であることは無論であるが,費用も最小で済み,より詳細な研究のための仮説を導くことが出来る研究デザインであることなどから,もう一度見直されるべきなのではないだろうかと考えている。また,理学療法士の大多数が臨床業務に従事している現状から症例報告は,評価-治療-事後評価といった一連の日常臨床業務の過程が,症例報告(研究)の記述過程と重なる部分が非常に多いことから,症例報告を書くことは臨床行為の確実さにつながることが考えられ,新人理学療法士には大変お勧めの研究手法である。
症例報告
  • ―90歳男性脳梗塞の一例―
    會田 孝貴, 小貫 学, 根立 千秋
    2005 年 16 巻 1 号 p. 14-18
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/04/27
    ジャーナル フリー
    今回,高齢で麻痺が重度にもかかわらず歩行能力が向上した症例を経験した。改善の要因について理学療法の経過を通じ後方視的に検討した。症例は,90歳男性,左橋梗塞により右片麻痺を呈し,Br.stageは上肢III,手指II,下肢IIであった。既往歴に高血圧症と心筋梗塞があったが,発症前のADLは自立していた。当院入院時(発症1ヶ月目)のADL状況は,二木による自立度区分においては「ベッド上生活自立」であった。理学療法の頻度は,週5回1日40分間で,8ヶ月に亘り実施した。結果は,平行棒内全介助歩行から四点杖にて病棟内介助歩行まで改善した。二木によれば,高齢や重度麻痺の歩行予後は不良とされる。しかし,本症例においては二木による「ベッド上生活自立」と「基礎的ADL」の能力が予後に反映され,加えて歩行の阻害因子となる合併症が少なかったことが,歩行能力の改善につながったと考えられる。
  • ―多発性脳梗塞患者の下肢屈曲拘縮に対するアプローチ―
    金田 妙子, 遠藤 伸也, 遠藤 しおみ, 熊谷 一美, 丹野 寛子, 駒場 滋郎, 小濱 優子, 斉藤 暁子
    2005 年 16 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/04/27
    ジャーナル フリー
     多発性脳梗塞により,徐々に能力障害が進行し,著明な膝関節屈曲拘縮をきたした症例に対し,両下肢へステップロック式膝装具の使用を試み,下肢機能の改善,日常生活活動(以下,ADL)の能力向上を図った。ステップロック式膝継手は,ラチェット機構を備え,完全伸展までに9段階で自動ロックされる仕組みを持っている。膝装具は,下肢の持続的伸張運動と起立・歩行練習に使用した。その結果,下肢屈曲拘縮の改善,下肢筋力強化を図ることができ,起立・歩行能力が向上した。病棟では,移乗・トイレ動作などが自立し,車椅子使用でのADL能力が向上した。理学療法室では両側膝装具着用でのピックアップ型歩行器歩行が監視で可能となった。しかし,両側膝装具着用では立位から座位になる動作が行ないにくかったこと,歩行能力が十分ではなかったこと,症例の装具に対する受け入れが不十分であったことなどの問題により,病棟生活に歩行を取り入れることが困難であった。退院後は,自主練習としてステップロック式膝装具着用での下肢伸張運動や起立練習を継続するよう指導した。また,退院にあたっては,ベッドやポータブルトイレを用意し,日常生活での起立の機会を確保することにより身体機能維持を図るよう指導した。以上の経過より,ステップロック式膝装具を使用したアプローチが下肢機能改善,ADL能力向上のための有効な一手段と考えられた。
講座
  • 小林 武
    2005 年 16 巻 1 号 p. 25-36
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/04/27
    ジャーナル フリー
     統計解析は,研究や調査等の成果を読み手(あるいは聞き手)に納得してもらうために必要な科学的証拠を提示するための一手法であり,科学的根拠に基づく介入(Evidence-based Practice)を目指す理学療法にとって欠くことのできないものである。パーソナルコンピュータとソフトウエアの高性能化によって,誰でも比較的容易に統計計算が可能になったが,最も確かな証拠を手に入れるためには,データの種類や分布等の特性を把握して,それらに適した正しい統計手法を選択・適用しなくてはならない。この総説は,理学療法で扱う変数の具体例を挙げながら,統計手法の適切な選択について概説した。
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