理学療法の歩み
Online ISSN : 1882-1464
Print ISSN : 0917-2688
ISSN-L : 0917-2688
2003 巻, 14 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
特別寄稿
  • 牧田 光代
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年 2003 巻 14 号 p. 2-7
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/08/13
    ジャーナル フリー
    近年の日本の社会状況の変化は著しい。現在, 理学療法士は病院勤務に偏重しているが, 介護保険制度導入以来在宅部門への移動が大きい。今までは勤務先の多くが病院である関係から急性期に対応する理学療法は大きな成果をあげてきたが,今後は維持期に対しての対応が求められる。
    また介護保険制度導入により福祉施設の受けた経済的影響は大きい。しかし, 人件費の大幅な縮小が求められる中でも理学療法士を確保したいという要望は多い。これは利用者のニーズによるものが大きいと思われる。対象者が維持期であっても理学療法は必要である。この分野では治療だけではなく, ケアの中での理学療法, 生活の質を上げるための理学療法が中心となる。それには技術に加えて人間関係構築も大きな鍵となる。これらを含め維持期の理学療法を確立することが重要である。
  • 佐藤 峰善, 島田 洋一, 松永 俊樹, 千田 聡明, 畠山 和利
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年 2003 巻 14 号 p. 8-14
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/08/13
    ジャーナル フリー
    麻痺した骨格筋に対する機能的電気刺激(FES)の基本的な事項, ハイブリッドFESについて概説した。刺激条件,生体組織の電気抵抗などにより刺激と筋収縮の関係が変化する。単極パルスでは, 運動点の厳密さが要求されるため, 筋枝が筋膜を貫くところを運動点として大腿四頭筋を解剖した結果を示した。電気刺激下では筋疲労が生じやすく制御上問題になるが, 対策として治療的電気刺激を繰り返すこと, 動作制御におけるC姿勢, ハイブリッドFESシステム, 閉ループ制御システムがある。ハイブリッドFESは, 装具とFESの組み合わせにより各種存在する。Walkaboutを使用した完全対麻痺例では, 装具単独よりもハイブリッドFESのほうが歩調, 歩行速度, 体幹の前後運動の点で優れていた。さらに, システム制御の点では, 開ループ制御よりも閉ループ制御を行う方が良い結果が得られる。今後いっそう障害者に役立つFESの実現が望まれる。
特集:装具と理学療法
  • 川井 伸夫
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年 2003 巻 14 号 p. 15-21
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/08/13
    ジャーナル フリー
    対象者の機能を補い, 将来の生活まで考慮した装具を提供するため,理学療法士はどのような知識を得, 技術を備え, それらを活かすための体制は如何にあるべきかを述べる。論述するにあたって, 「装具に関する調査表」を作成し, 県士会員にご協力いただいた。まず, 紀元前3000年の昔から活用されてきた装具について, とくにその材質と機能の歴史に触れた。次に装具診の開催に焦点をあて, 各専門職の役割を明確にすることによるチームアプローチの重要さを強調した。調査結果から, 装具の適応判断と適合判定の客観的基準の必要性を認識しながらも, 現実には用いられていないことがわかった。また,装具製作上の不具合についても具体的な意見がよせられ, 「制度·体制」, 「適応判断」, 「製作期間」, 「知識·関心」に関するものが多くを占めた。対象者個々のリハビリテーション過程に応じた的確な時期に的確な装具をより速やかに提供し, 有意義に活用するためには,(1) チームアプローチの充実, (2) 製作および修正記録の蓄積と活用, (3) 適応と適合判定についての情報交換と基準の試作, (4) 装具装着による効果の研究による裏付け, を理学療法士個人より各職場の医療チームとして具体的に展開することが我々の使命ではないだろうか。
  • 関川 伸哉
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年 2003 巻 14 号 p. 22-28
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/08/13
    ジャーナル フリー
    片麻痺者の多くは歩行改善を目的とし下肢装具を用いている。中でも短下肢装具は, 軽量かつ外観が良く装着が容易なことからその使用頻度は高い。しかし, 短下肢装具の適合評価手法が確立されていないため, 個々の使用者に最適なAFOが処方されているとはいいがたいのが現状である。また, 短下肢装具開発過程の多くは, 臨床現場を中心とした主観的施行に基づいたものであり客観性には乏しいのが現状である。この問題を解決するためには, 短下肢装具の持つ機械的な機能(以下, 装具機能)が, 片麻痺歩行に及ぼす影響を明らかにする必要が有る。装具機能と片麻痺歩行との関連性がより明確になれば,装具歩行の評価, 装具開発, 歩行訓練時などに装具を用いることの有用性の有無などを明らかにすることができる。
    本論では, 短下肢装具と片麻痺歩行との研究を行う上で必要と思われる装具機能について過去の研究を基に整理し, その後, 装具機能と片麻痺歩行との関連性について主にEMGデータを基に言及してみたい。
  • 佐藤 和彦, 菊地 昭栄知, 三浦 幸一, 澤地 浩二, 森 久美子, 高野 吉道
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年 2003 巻 14 号 p. 29-31
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/08/13
    ジャーナル フリー
    脳血管障害に対する下肢装具は, 種類が多く, 各病院での処方がそれぞれ異なっている。当院で最も多く処方されている装具はGillette double flexure ankle joint付きプラスチック短下肢装具 (以下ジレットと略す) である。5年間の下肢装具処方数269例中169例がジレットとなっている。ジレットは, 装具の運動軸 (継手軸) が解剖学的足関節軸 (距腿関節軸)に近いこと, 足関節背屈が容易であること等の長所がある。しかし,膝伸展筋力が非常に弱い患者の場合には,膝折れが起こりやすく不適応である。
  • 阿部 浩明, 黒後 裕彦, 伊藤 悟, 國島 春子, 山本 幸子
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年 2003 巻 14 号 p. 32-37
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/08/13
    ジャーナル フリー
    脳卒中片麻痺者のプラスチック短下肢装具装着の効果について検討するために, 片麻痺者2例を対象に最大歩行速度と歩行中の距離的因子を測定した。距離的因子として重複歩距離, 麻痺側ステップ長,非麻痺側ステップ長を測定し, さらにステップ長左右比, 重複歩距離変動係数, 麻痺側ステップ長変動係数, 非麻痺側ステップ長変動係数を算出した。
    最大歩行速度は裸足時と装具装着時でほとんど変わらなかった。装着の影響をステップ長でみると, 裸足時のステップ長が非麻痺側より麻痺側で小さい例は装着により麻痺側ステップ長が増大し, 裸足時ステップ長が麻痺側より非麻痺側で小さい例は装着により非麻痺側ステップ長が増大した。片麻痺者2例とも装着により重複歩距離ならびに非麻痺側ステップ長の変動係数は減少していた。麻痺側ステップ長の変動係数は装着により減少する例としない例とに分かれた。
    プラスチック短下肢装具装着の効果を評価する際には, 装着した麻痺側だけではなく, 非麻痺側下肢にも注目する必要があると考えられた。
  • 長内 孝則, 五井 潤子, 竹沢 実
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年 2003 巻 14 号 p. 38-44
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/08/13
    ジャーナル フリー
    当院では,脊髄損傷患者の交互歩行獲得を目的にRGO · ARGOを採用し,これまでに合計13例の症例にアプローチしてきた。RGO · ARGOは従来用いてきたLLBと比較して脊髄損傷患者の交互歩行獲得に優れた装具であり, 13例全ての症例が平行棒内での交互歩行が獲得され, 高位脊髄損傷患者も含め12例が平行棒外での歩行まで可能となった。
    今回は, 実際の訓練を紹介し, 到達レベルと阻害因子を検証したので報告する。
研究と報告
  • 前田 里美, 早川 由佳理, 佐藤 桂子, 猿山 沙樹, 藤澤 宏幸, 星 文彦
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年 2003 巻 14 号 p. 45-50
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/08/13
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 筋電図 · 床反力計 · 三次元動作解析装置を用いた膝立ち位における側方重心移動動作中の運動学的機構を明らかにすることである。対象は健常男性10名とし, 可能な限り速く3種類の右方向への側方重心移動動作を行わせ,左右の脊柱起立筋 · 大殿筋 · 中殿筋 · 外複斜筋の筋活動, 圧中心 (center of pressure : COP), 反射マーカーの空間座標データを測定した。COPの軌跡は一度目的方向とは逆方向へ移動し, その後目的方向へと移動した。また, 全課題動作において動き始めに活動が高まる筋は共通しており,右脊柱起立筋 · 左大殿筋 · 左中殿筋 · 右外腹斜筋であった。これは右側の骨盤挙上に働き, COPを目的方向とは逆方向に移動させ, 重力モーメントを大きくし, 速い側方重心移動動作の原動力となっていることが考えられた。
feedback
Top