対象者の機能を補い, 将来の生活まで考慮した装具を提供するため,理学療法士はどのような知識を得, 技術を備え, それらを活かすための体制は如何にあるべきかを述べる。論述するにあたって, 「装具に関する調査表」を作成し, 県士会員にご協力いただいた。まず, 紀元前3000年の昔から活用されてきた装具について, とくにその材質と機能の歴史に触れた。次に装具診の開催に焦点をあて, 各専門職の役割を明確にすることによるチームアプローチの重要さを強調した。調査結果から, 装具の適応判断と適合判定の客観的基準の必要性を認識しながらも, 現実には用いられていないことがわかった。また,装具製作上の不具合についても具体的な意見がよせられ, 「制度·体制」, 「適応判断」, 「製作期間」, 「知識·関心」に関するものが多くを占めた。対象者個々のリハビリテーション過程に応じた的確な時期に的確な装具をより速やかに提供し, 有意義に活用するためには,(1) チームアプローチの充実, (2) 製作および修正記録の蓄積と活用, (3) 適応と適合判定についての情報交換と基準の試作, (4) 装具装着による効果の研究による裏付け, を理学療法士個人より各職場の医療チームとして具体的に展開することが我々の使命ではないだろうか。
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