理学療法の歩み
Online ISSN : 1882-1464
Print ISSN : 0917-2688
ISSN-L : 0917-2688
25 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
特集 特別寄稿
  • 村木 孝行
    2014 年 25 巻 1 号 p. 3-10
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/29
    ジャーナル フリー
    肩関節障害は運動器の障害であるが幅広い領域で対応が求められる。どの領域にも通じて必要になることは肩関節自体の病態やその機序を把握することである。特にバイオメカニクスは病態の機序を理解するのに不可欠であり,肩関節障害の理学療法における一つの基盤である。評価においては疼痛,可動域,筋力に関するものが主体となる。疼痛の原因の一つには物理的刺激があり,その種類として1)肩峰下インピンジメント,2)関節内インピンジメント,3)伸張の3つが挙げられる。疼痛の評価ではこれらの物理的刺激がどのようにして生じているのかを知ることが重要である。関節可動域や筋力の評価においては肩関節に関連する関節や筋の構造について熟知しておく必要があり,それによってなぜ制限や低下が起きているのかが明確になる。治療においては構造異常による不利益と治療効果の限界を踏まえながら,残存機能を最大限に発揮できるようにアプローチしていくことが要点となる。
  • 田中 直樹
    2014 年 25 巻 1 号 p. 11-15
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/29
    ジャーナル フリー
    「スポーツ」に携わり活躍する理学療法士が増えてきている。日本理学療法士協会にも2009年にスポーツ理学療法研究部門が設置された。学会報告でもスポーツに関する発表が多く,スポーツに関する研究会や近隣施設との勉強会なども活発に行われはじめている。しかし,「スポーツ」というものを漠然と捉えていると目的や意図が定まらず,なかなか一歩目が踏み出せない。そこで本稿では,新たにスポーツ領域へ踏み込もうと考えている方が押さえておくべき基礎的な内容を紹介する。また,理学療法士がスポーツ領域へ参入する際の問題点や現状を第17回宮城県理学療法学術大会公開討論会で話し合われた内容を踏まえて紹介する。
特別寄稿
研究報告
  • 南島 大輔, 小玉 岳, 馬場 健太郎, 仲冨 千瑞, 古澤 義人, 加藤 貴志, 宮田 剛
    2014 年 25 巻 1 号 p. 22-28
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/29
    ジャーナル フリー
    食道がんの胸腔鏡下食道切除術は,従来よりも手術後の早期離床を図ることが可能であり術後回復に効果的であると考えられた。早期離床を目的とした周術期リハビリの介入効果を明らかにすべく,年度毎の比較検討を行なった。方法は2008年から2010年に当院にて食道がん手術施行例を対象に,術後合併症,ICU在室日数,離床時期,運動機能の変化などについて,カルテより後方視的調査を行なった。早期離床アプローチは2009年より開始され,呼吸筋訓練などの呼吸理学療法は特段行なわなかった。結果,術後呼吸器合併症の発症率は2.2%,非合併症例127例に関して,ICU在室日数が短縮し,離床の促進が認められた。また下肢筋力は術後に減少したものの,6MDについては術後の減少が見られなくなった。食道がん胸腔鏡下食道切除術例に対し早期離床を行った結果,安全かつ順調に離床度の向上が得られ,周術期リハビリの介入方法として,早期離床が有用である可能性が示唆された。
  • 梁川 和也, 吉田 忠義, 藤澤 宏幸
    2014 年 25 巻 1 号 p. 29-33
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/29
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は健常成人における起き上がり動作の運動パターンならびに所要時間について明らかにすることとした。対象は健常大学生68名(年齢20.4±0.6歳)とした。測定条件は通常速度および最大速度での起き上がりとし,矢状面と前額面の2方向からビデオカメラにて測定後,運動パターンを分類した。所要時間の計測はストップウォッチを使用し,1人の被検者につき3回繰り返して測定し平均値を採用した。通常速度ではon elbowパターンを用いたのは30名(2.3±0.3 sec),pushパターンを用いたのは20名(2.2±0.2 sec),reachパターンを用いたのは18名(2.4±0.3 sec)であった。最大速度ではon elbowパターンを用いたのは23名(1.4±0.2 sec),pushパターンを用いたのは37名(1.3±0.1 sec),reachパターンを用いたのは8名(1.5±0.3 sec)であった。両測定条件とも側臥位パターンは観察されなかった。また,通常速度・最大速度とも3群間の所要時間に有意差は認められなかった。これにより,動作速度が速くなるにつれ,HATの重心の軌道が短く運動効率が良いpushパターンを選択したと考える。また,3群間で所要時間に有意差が認められなかったのは,ストップウォッチ使用による測定誤差やHATの重心の移動距離に大きな違いがなく,対象者自身のわずかな内的あるいは外的要因によって選択される運動パターンが異なったのではないかと考える。
  • ―若年健常者による基礎的検討―
    小林 大介, 黒澤 一, 飛田 渉
    2014 年 25 巻 1 号 p. 34-41
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/29
    ジャーナル フリー
    吸気抵抗負荷に対する深呼気呼吸指示(呼吸パターン介入)前後における呼吸困難と呼吸パターンの変化を検討する。健常者10名を対象に無意識および意識的呼吸介入による安静時および段階的吸気抵抗負荷時の呼吸パターン,肺気量,呼吸困難の変化について検討した。吸気抵抗負荷に対して,無意識呼吸時は換気量や呼吸数に大きな変化がなかったが,呼吸パターンの指標である平均吸気流量(VT/TI)の低下,duty ratio(TI/TTOT)の増加,呼吸困難の増大が抵抗依存性に見られた。意識的呼吸介入によりTI/TTOTと呼吸困難の変化は,直線上の関連を有することが明らかとなった。本研究においては,呼吸パターンと呼吸困難は一定の関係を有していた。その際呼気時間を長くとらせてゆっくり息をはかせるなど,呼吸パターンの面からの指導アプローチが有効である可能性が示唆された。
短報
  • 川上 真吾, 鈴木 博人, 菊地 明宏, 田中 直樹, 本間 秀文, 藤澤 宏幸
    2014 年 25 巻 1 号 p. 42-46
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/29
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,片脚膝立ち位保持時間と股関節外転筋の筋力発揮特性との関係を明らかにすることである。対象は,健常者20名とした。全対象で軸足は左であった。課題は片脚膝立ち位保持とし,視覚条件(開眼,閉眼),支持脚条件(左,右)における片脚膝立ち位保持時間(以下,保持時間)を測定した。股関節外転筋の筋力発揮特性(等尺性)については,ロードセルを用いて力を測定し,最大トルク・最大トルク変化率・到達時間を算出した。右下肢の開眼保持時間と到達時間に相関が認められた。以上より姿勢保持に関して基本的には股関節外転筋の筋力発揮特性が関与しているが,保持時間との関係において寄与は低く,むしろ異なる機能によって制御されている可能が考えられた。今回の実験上における観察では,長時間保持が可能な被験者の特徴として下腿の回旋が観察された。つまり,片脚膝立ち位保持では下腿の回旋によって制御している可能性がある。
feedback
Top