Papers in Meteorology and Geophysics
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15 巻, 1 号
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  • 浅井 富雄
    1964 年 15 巻 1 号 p. 1-30
    発行日: 1964/08/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    積雲対流の発展過程を調べるために簡単な垂直2次元大気モデルを用いて数値実験を行なう。
    最初に,摂動法に基づいて積雲規模の熱対流を記述するのに適した力学方程式系を導出する。ここで非発散運動の仮定が許され,渦交換の導入の不可避なことが示される。
    次に,積雲対流に対する非線型方程式系を導出し,若干の大気モデルについて数値積分を行ない,対流の時間的発展過程を追跡する。高さ5km,水平幅 10kmの領域を採用し,条件不安定な成層をなす湿潤な静止大気を想定する。この下半層に温度擾乱を与えて対流運動を惹起する。渦交換を別にすれば対流運動は偽断熱過程に従うものとし,更に境界を通して運動量,顕熱及び水蒸気の流出入のない閉じた系で取扱われる。
    対流のライフタイムは一般に20~30minで,.対流の初期,即ち発達期は上昇域が下降域に比して次第に狭隆化し上昇速度が下降速度に比して強い循環系の強化により特徴づけられる。上昇速度や凝結率が最大になる最盛期に達すると,その後直ちに減衰期に入り,やがて減衰振動を示すに至る。この間における垂直熱輸送に基づくエネルギー変換が示され,又計算結果の妥当性も示される。
    中緯度地帯における夏期及び冬期に対応する温暖及び寒冷な気層中での積雲対流に大きな差異の生ずることが示唆される。
  • 鈴木 栄一
    1964 年 15 巻 1 号 p. 31-51
    発行日: 1964/08/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    従来,降水量の度数分布については,立方根正規型,平方根正規型 (本質的にはガンマ型),対数正規型,ピアソンV型など,いろいろの函数形が提案されている。いずれも決定的なものでなく,よく合ったり,あわなかったりするので,これらを総合したより一般な分布型として,3つの母数を含む,超ガンマ型分布を新たに作成した。これは従来全然なかったもので,その特別な場合として,立方根正規 ガンマ型(ピアソンIII型),ピアソンV型などを含む,もっとも一般な,降水量のどのスケールにも合う分布型であると考えられる。又降水量の伝播的性質にもよく合う型である。そこで,この報文では,東京の各種の時間スケールの降水量,新潟の月,年降水量の度数分布に,超ガンマ型分布をあてはめ,三つの母数の積率推定値,最尤推定値とその誤差を示す分散推定値を計算し,分布の適合度検定を行なった結果を報告する。いずれもかなり良い適合度をもっていることが分る。
    実際に三つの母数をもとめるための図表を IBM 704で計算したので,それものせてある。それは最尤推定値,積率推定値いずれでも大してちがわないこと,適合度検定でもほとんど同じ位の適合度であることなどから,図表は積率推定をもとめる方式が簡単なので,これによって作成した。ただ,適合度検定の計算は従来の分布型よりやや面倒であるが,従来の分布型より母数を1つふやしたので,よく適合することだけは間違いない。超ガンマ分布型の母数の最尤推定,推定値の分散行列なども理論的に求め,通常のガンマ型分布に関する増山・黒岩の式の拡張になっていることも明らかである。
  • 二宮 洸三
    1964 年 15 巻 1 号 p. 52-70
    発行日: 1964/08/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    1963年1月は,北東部を除いては極東は著しく寒冷であり,日本列島上の降雪量も記録的であった。特に降雪の多かった1月16日から26日にかけての10日間について,日本海および日本列島上での熱収支解析を行なって次の結果を得た。
    (1)大気の平均運動に対する熱力学の式を導き,eddy motion(対流などの)による垂直方向の熱のuxの convergenceが,凝結熱・系外から補給される顕熱などと同様に熱源として働く事を示した。
    (2) 日本列島上における加熱量は約 20 ly・hour-1の程度であり,凝結による潜熱の放出が最も重要な熱源ある。
    (3) 日本海上においては海面からの顕熱の補給が,凝結熱・放射に比して圧倒的に大きく46 ly・hour-1(=1,100ly・day-1)に達していた。この値は Manabeによって得られた寒気吹出時の補給量とほぼ等しい。
    (4) 日本海・日本列島上においては,加熱量の高度分布における極大は,850mbにあらわれていた。 (5)北陸地方の熱収支については,凝結熱が熱源の主要の部分を占めていた,又加熱量の極大は750mbにあらわれていた。(6) 日本海から顕熱の補給量は対流圏内の寒冷渦(すなわち cold dome)の前面で著しく増加している事が示された。この時には,垂着安定度の減少,風の収束,上昇流が同時にみられている。
  • 前震の特異性
    末広 重二, 浅田 敏, 大竹 政和
    1964 年 15 巻 1 号 p. 71-88
    発行日: 1964/08/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    昭和39年1月松代地震観測所において,磁気テープ録音機を用いた高倍率の三点観測を実施中に,たまたま規模3.3の小有感地震が附近に(S-P:02.3秒)起り,25ケの前震と173ケの余震が記録された。比較的規模の大きい地震は前余震とも殆んど同じ頻度で起っているにも拘らず,小さな地震は前震に少なく,余震に多い。グーテンベルグ・リヒターの“b” で表わすと,前震では0.35という小さい値になり,余震では0.76である。つまり余震については,その地域の微小地震も含めての一般活動のbと同じ値であるのに,前震については異常に小さい、これは前震と単なる地震群,即ち後にとびぬけて大きい地震をひかえている場合とそうでない場合の判定に役立つかもしれない。1960年のチリ大地震の前余震について似た点が見られるが,他には前震を伴ったという例はあっても,十分な器械観測の例は殆んどなく,今後の高倍率の観測にまたねばならない。
    従来知られている本震と余震域の関係や本震は余震域の端に起る等のことが,今回の規模3.3という小さな本震と更に微小な余震についても成立っていることが見出された。
    今回の前震についての特異性は果して一般的なものであるか? 前震を伴わない地震は果して本当に突然紀るのか?これらの問題を解くために,高倍率の観測を長期にわたり実施することが望ましい。
  • 三宅 泰雄, 大塚 泰郎
    1964 年 15 巻 1 号 p. 89-92
    発行日: 1964/08/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    ベリリウム7は宇宙線による高層大気分子の核破砕によって生ずる。東京の雨水中のベリリウム7を測定した。その結果は,降水中のベリリウム7の濃度は0.7~5.7×103atoms/mlの範囲で,他の地域での測定値とほぼ同じであった。ベリリウム7の大気柱濃度を計算したところ,温暖前線型よりも寒冷前線型の場合にベリリウム7の濃度が高いことがわかった。
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