Papers in Meteorology and Geophysics
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16 巻, 3-4 号
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  • 二宮 洸三
    1966 年 16 巻 3-4 号 p. 157-178
    発行日: 1966/03/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    1962年2月10日朝鮮半島西岸に位置した低気圧は,11日発達しつつ日本海上を通過し,ひきつづき12日には寒気の吹出が見られた.この3日間には,いわば冬期の典型的な気象状態がみられたといえよう.この3日間にTIROS IVによつて3回の輻射観測と1回の写真観測が行なわれているので,それらを使用して日本海海域における雲の分布状態と気団変質についての解析を試みた.その結果は次のように要約される.
    1.低気圧の通過時には雲量・雲頂商度はともに増大する.特に低気圧の北東象限では雲頂高度の高い雲域が見られた.
    2.寒気吹出時には雲は大陸岸より200km附近から発生をはじめ,雲量7以上の状態は大陸岸より400km附近からはじまる.雲頂高度は比較的低く,大陸より500km附近で平均して850 mbに達する程度である.
    3.日本海南部においてのみならず大陸寄りの雲の発生域においても雲のband構造がみとめられた.それらの間隔は70~100kmであり,その方向はほぼ850mbの風向と一致している事が知られた.
    4.日本海海域での収支解析の結果,寒気吹出時には海面からの熱と水蒸気の補給量が増加している事が示された.各層における収支計算の残差として各指定気圧面を通る熱および水物質のvertical eddy transfer ω'・T', ω'・(q'+c')を求めた.その比cpω'T'/Lω'(q'+c')が高度とともに減ずる事が示された.
    5.上記のvertical eddy transferは摩擦層内では主としてdiffusionによるものであろうが上層では殆どが積雲対流によるものであろう.対流の上昇域が雲域の10%であり,その上昇流の強さが3m・sec-1であると仮定すれば上記のvertical eddy transferをひきおこすに必要な対流の上昇流内のexcess temperatureおよびexcess water substanceはそれぞれ0.5℃および0.5gr・kg-1の程度である事が推定される.
    この報告は気象研究所北陸豪雪研究の一部分としてなされたものである.
  • 浅井 冨雄
    1966 年 16 巻 3-4 号 p. 179-194
    発行日: 1966/03/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    北陸豪雪の研究のための一部として,1964年2月3日,北陸沿岸沖の日本海上で雲の航空写真観測が行なわれた.当日の気象条件は顕著な降雪を伴なわない通常屡々現われる型の季節風下にあった.
    垂直及び斜写真を併用して雲の分布についての解析が行なわれた.海上の積雲は高度3km以下でその多くはバンド状に配列していることが示され,またレーダー観測によっても確かめられた.バンド状の雲は約20kmの間隔をもち雲層の平均風に平行に排列する.また夫々のパンドは一様なroll状のものではなく,バンドに沿って約30kmの間隔で低い雲頂,少い雲量の風上側から高い雲頂,多い雲量の風下側へと波状構造をもっている.
    雲層に比しバンドの間隔が一桁大きいことや,上記バンドの構成要素の一つである下層の小さな積雲の動態等,既存の対流論で説明し難い点も見出された.
  • 村井 潔三
    1966 年 16 巻 3-4 号 p. 195-200
    発行日: 1966/03/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    大気オゾンの総量の測定には,DOBSONの分光器による方法が古くから確立されており,標準の方法となっている.しかし実際には,もっと簡易な方法も要求され,その方法としてフィルターによって光を選択する方法が行なわれている.しかし,従来の普通のフィルターでは選択する光の波長幅が広いため充分の精度での測定が行なわれない. この方法で実際に測定を行なった結果によると,塵埃あるいは雲の影響が著しく見られる.
    最近の干渉フィルターは,極めて狭い波長幅で光を選択することが出来るようになり,分光器に替るもむのとしてかなりの程度の精度の向上が期待される、吾々は三種の干渉フィルター2900,3100および3300Åを用い,夫々の波長の紫外線の強度を光電子増倍管により検出し,3300/2900および3100/2900Å の2つの強度比を求めて比較し,測定に適する波長の組合せを求める目的で測定を行なった.塵埃の影響を避けるために,また,晴天の多い場所を得るために,測定はアルプス山中のBriangon(1326 m)で行なわれた.
    オゾン総量の絶対値を得るためには水晶プリズムの分光器を用い,乾板の黒化度から求めた.測定期間は1965年3月26日から4月1日までの7日間で,期間中はほぼ快晴の状態で,雲の影響としては,極めてうすい巻雲および少量の積雲の影響と,地表付近の煙霧の影響のある場合の測定が得られた.
    測定の結果からは,当然予想される通り,3300/2900Åの強度比の方がオゾン量の変化に対してはるかに敏感である事が知られる.気象条件の影響としては,積雲の影響が最も大きい.煙霧の影響は比較的小さい.
    吾々の用いた装置は,光電子増倍管の光電流を直読する方法であるが,この方法では日出および日没時の紫外線強度の小さい時の測定には不十分である.
  • 市川 政治
    1966 年 16 巻 3-4 号 p. 201-229
    発行日: 1966/03/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    筆者はさきに(1961,1962)1950年~1960年の間に日本付近に発生した主な地震および関東地方の小地震のメカニズムの解析を行ない,これにもとづき起震歪力の統計的研究を行なった.本書ではこれに引きつづき,1962年までに日本付近に発生した主な地震のメカニズムを解析し全資料につき同様な研究を行なった.得られた結果は前報とほとんど同じである.このほかに,解析結果の信頼度についての考察を行なったのでその結果についても述べる.
  • 杉浦 吉雄
    1966 年 16 巻 3-4 号 p. 230-236
    発行日: 1966/03/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    全炭酸とは,海水中に溶存するCO2あるいはH2CO3とHCO3-とCO3--とからなる一群の炭酸物質に対して名付けられる.海洋中にはこれらの炭酸物質の外にも,各種の炭素化合物があるが,その多くは海洋生物と関係が深い.光合成,酸化分解に際し,上記の炭酸物質と各種の炭素化合物は相互に変化し合う.その過程はきわめて複雑であるが,その際の元素の収支を全般的にみると案外簡単のように思われる.著者が海水について最近明らかにした事実はこのことを示唆する.海水中のリン酸塩濃度とAOU(酸素の飽和量と観測値の差)の関係からΔP/ΔO2比の値を求めると,原子比で1/272となる、Flemingのプランクトンの元素分析によるC:N:P比106:16:1に基いてRedfieldらはプランクトン物質の平均的な化学式を(CH2O)106(NH2)16(PO4)とし,これが完全に分解することを仮定してΔP/ΔO2比として1/276なる値を得た.これは前述の1/272にきわめて近い.このことは,プランクトンのC:P比がほぼ106:1に近いことを示すものと考えられる.然らば,海水のΔC/ΔO2比は106/272に近い値になるのではないか,この場合,有機物の完全酸化は海水中のCO2を増加させ,従つて,全炭酸を増加させることを考えれば,ΔC/ΔO2比は全炭酸と酸素の量比として海水の値から求められるはずである.
    海水中の全炭酸は,微量拡散法で求めた. 試料としてJEDS-3とJEDS-4の海水を用いた.分析は勿論現場で行なう.その結果,海水のΔC/ΔO2比が確かに106/272に近い値であることを認めた.南極周辺水についても,この点をチェックしたが,ほぼ同様の結果を得た.
    リン酸塩と酸素の関係について,著者はすでに別報で精しく述べたが,それによるとリン酸塩は一般に,保存性と非保存性の二種に分けられる.同様のことは全炭酸についても云える.リン酸塩の場合と全く同様に,水塊の標識としては,全炭酸そのものよりも保存性全炭酸の方が合理的である.南極周辺水のうち,深さ150~300m以深の水と以浅の水について保存性全炭酸濃度を求めると,それぞれ0.85, 1.60mg-at/lとなり,明瞭に差が認められる.これは,最近RedfieldとFriedmanが重水と塩分の組合せから求めた水塊の区分とよく一致し,注目される.保存性全炭酸濃度の値とクロロシテイとの比を二,三の日本周辺水と南極周辺水について求めてみると,前者ではいずれも0.11となるのに,後者では,0.08,0.04というかなり低い値になる.これは注目すべき点であるが,さらに多くの試水について確かめることが望ましい.
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