Papers in Meteorology and Geophysics
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17 巻, 4 号
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  • 内田 英治
    1966 年 17 巻 4 号 p. 225-278
    発行日: 1966年
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    大気中の凝結核のうち何がどのように雲粒の核になったかを調べるために山岳(伊吹山山頂,富士山中腹)と航空機(関東地方上空)とで多要素(凝結核,雲粒,雲核,雲水など)の観測を行なった。
    主として西向きの風の中で発生し消長する好晴積雲又は低い層積雲が観測対象であったが,その雲物理学的微細構造と気流の乱流状態と対応させるため,温位の微分係数やRichardson numberを求めて調べた。
    それによると大気が不安定に近ずくにつれ大雲粒中の巨大海塩核を含む割合が減少した。又雲水中のCaや SO4 成分の Cl 成分に対する比(enrichment coefficient)は海水に比べて増大した。これは大気の安定度による効果であると考えられた。乱流中の雲粒子成長問題を解析するため従来の平均凝結成長や併合成長の理論とは別に,湿度変動の場の中で雲粒子がどのように成長するかにつきモンテカルロ法を用いて調べた。その結果,この変動場の中での巨大海塩核の成長につき観測事実が説明された。
    他方,要雲素観測の器械の技術上の改良や,雲粒分布,雲核分析などについての種々なこまかい解析がなされた。
  • 季節変動の特性
    籾山 政子, 片山 功仁慧
    1966 年 17 巻 4 号 p. 279-286
    発行日: 1966年
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    筆者らはアメリカ合衆国における死亡,ことに年令別死亡の季節変動の分析を試みた。その結果・日本や英国に比較して著しくことなる2,3の特性を指摘し,序報的ではあるがそれについての若干の考察を行った。
    本研究の最終目的は,これまで試みた日本における死亡の季節変動の研究より導かれた事実,即ち“文化の進展とともに死亡の冬季集中現象が著明になる” ということが,アメリカやイギリスにおいては, いかなる形態をとるかを実証することにある。さらにこの事実より,死亡の季節変動を通してみた,人間による気候の征服,人工気候の問題等を明らかにすることにある。
    アメリカ合衆国の1952年より1956年に至る5力年間平均の月別死亡指数(年平均100,年合計1200)を用いて年令別の季節変動カーブを比較した。
    1才未満のカーブは殆んど一直線であるが1~14才,15~24才では6月を中心に小さな山を示し,緩やかな変動がみられる。一方,25~34,35~44,45~54才の階級は殆んど変動がない。しかし年令の増加とともに冬の指数は高まって季節変動も増し,ことに85才以上の高年令では一層著明となる。全年令の変動は冬に山のある緩やかなカーブである。また,これを白人及び黒人にわけてみると,白人の変動は冬季のみ緩やかな山をみるが,黒人の場合は冬と夏の2つの緩やかな山をみる。
    ニューヨーク市の年令別季節変動をみると― 年令の階級区分はやや異なるが― 大体の傾向は合衆国のそれと類似する。即ち,一体に季節変動は緩慢で,1才以下,1~4,20~29,30~39,40~49の変動カーブは見事にこれを示す。一方60~69,70以上は冬季の山が目立ち季節変動は増大する。
    以上を通じていえることは,合衆国もニューヨーク市の場合も,日本や英国に比べると死亡の季節変動が概して緩慢であるということである。ことに1才未満が季節変動を示さない事実は注目にあたいする。また,高年令においても冬季集中現象の著明な日本,英国とは比較にならぬほどゆるやかである。
    死亡の季節変動はさまざまな要因がからみあって決定されるが,気候的要因の大きいことは容易に想像される。気候が死亡に作用する場合,自然の気候そのものよりも,暖房等によって作られた人工気候の影響は一層大きい。アメリカの場合,冬季でも寒さを感じないような室内気候が,死亡の季節変動を緩慢にさせていると考えられる。
  • 堀内 剛二
    1966 年 17 巻 4 号 p. 287-299
    発行日: 1966年
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    最近の電離層aeronomyの観点から50-200km範囲でNOとNO+その他陽イオソ密度を昼夜について計算し,観測値と比較した。その結果:
    i)Barth(1965.66)の昼間NO観測値は現在の ion chemistryと矛盾しない.
    ii)昼問陽イオン分布については計算値と観測値の良好な一致が見られるが, D層では問題が残される.
    iii)夜間NO分布は非平衡の式で計算される。
    iv)夜間陽イオン計算値もほぼ観測とオーダーで合うが, NO+はややずれる。
    これらは関係する reaction process のrate constant 温度依存の殆ど知られないことから,予備的な結論として受入れられる。
  • 小林 寿太郎, 北原 福二, 大田 正次, 内藤 晴夫
    1966 年 17 巻 4 号 p. 300-317
    発行日: 1966年
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    大気汚染,極超短波の伝播, 接地気象等に関連した問題は,下層大気中の気温,水蒸気等の気象因子の鉛直分布の時間的,空間的変動の模様を知ることにより,解決の糸口が与えられるものであって,特に,大気汚染に関連しては,汚染物の拡散域の上限を与える気温逆転層の位置の決定が,重要なきめ手の1つとなっている。
    現用ゾンデは広域に亘る気象観測にはなくてはならぬものであるが,測定精度の点で,気温の鉛直方向の微細構造を究めるのには適していない。これに代る適当な観測機器が上述諸問題の解明に必須とされるが現在なお未開発であって, WMOのCIMO部会においても,この問題を取り上げ,機器の研究開発の推進を各国に要請している。
    ここでは,この問題に対する1つの解決策として研究開発された低層ゾンデについて,機器の構成,性能等にわたって,詳述がなされている。
    特微としては,小型軽量,取扱いが容易で1人で操作ができること,および価格が安いことが,先づ指摘できる。次に,高度の測定を風車の風程の測定におきかえ,測定誤差が±1%以内で測定を可能とし,気温の測定は±0.2℃以下の測定誤差で,しかも記録が気温の直線目盛になるように工夫されていること,小型軽量なため凧紐使用により繋留測定も可能なこと,機器の回収および機器の落下時に誘起される危害の防止に考慮がはらわれていること等が挙げられる。
    測定可能領域は高度については地上より1500m 迄,気温については -25℃~+35℃であって,風の観測はセオドライトの使用により可能とされる。
    機器の実用試験は福島県大熊において昭和41年2月25日から27日迄の3日間に亘り行われた。ここでは更に,その観測結果と,機器の性能の検討および充分実用に耐えうるものであることが示される。
    なお,将来,改善されるべき点および,未検討の点について2,3附言した。
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