設計荷重をきめる際に問題となる,再現期間及び設計荷重そのものの統計的性質を,モンテ・カルロ法によって吟味してみる。その結果はつぎの如くである。
建造物を造る場合に設計の基礎となる,年最大風速とか,年最大日降水量などの値は,年々統計的に独立に現れると仮定し,モンテ・カルロ法によりそのモデルの時系列をつくる。すなわち,具体的には乱数表からたとえば4字つつ取り出し,この4字の示す数値を10,000分率と考え,これが年々の最大値の起る超過確率に対応するとする。つぎに,年々の最大値が現れる超過確率はわかっているとしてその形を与え,上記の時系列の示す超過確率の値を,年の最大値に換算する。これが年の最大値のモデルとなる。
この時系列において,N年間の最大値を求め,その性質を調べてみると,一見起りそうもないような,割合大きな値が時に現れる。そして,その期待値は,一般にはN年の再現期間に対応する値ではなく,むしろ2N年の再現期間に対応することが多い。
N年の再現期間に対応する値を,過去の順位別実測から推定する式としては,Hazen,Fuller,Gringortenなどいろいろ知られている。現在の方法で吟味してみると,これらの推定式の違いは,超過確率の関数形によるものであって,どれも間違いというわけではない。しかし,ふつうの場合には,Hazenの式が手頃のようである。
再現期間に対する値の推定値の誤差の程度を知るため,モデルの時系列の値を用い,母集団の性質はわかっていないとして,いろいろな再現期間に対応する値を推定してみた。そして,母集団の値と比較して誤差を求め,推定値の誤差を見積る実験式を求めた。
最後に,N年間の観測値の中の最大値に,安全率α を掛けたものを設計荷重にした場合,建造物の寿命がどうなるかを調べた。観測年数が短かいと寿命の変動が大きく,安全率を大きくとらないと災害を受ける確率が大きくなる。観測年数,安全率及び建造物の使用年限を与え,災害を受ける確率を推定する表を作成した。
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