Papers in Meteorology and Geophysics
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23 巻, 3 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 市川 政治, スリバストバ H.N., ドラコポウラス J.
    1972 年 23 巻 3 号 p. 149-162
    発行日: 1972/12/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    1930-1971にヒマラヤ連峰・ビルマ・アンダン島とその周辺に発生した地震について,P波の押し引ぎの分布からメカニズムを解析し,42の解を求めることができた。
    大陸移動説や,昨今話題のプレート説によると,上記の地震帯付近で,欧亜大陸とインド大陸が出合っていることになっている。地震のメカニズムが,はたしてこの仮説と矛盾しないかどうか,今回得られた結果を使ってこの関係を調べてみた。得られた結果は次のとおりである。
    起震歪力の方向は,地震帯の走向にほぼ垂直であることが,世界の主な地震帯に認められる一般的傾向であるが,今回の場合もビルマ北部周辺を除く各地の圧力軸の方向は,地震帯の走向にほぼ垂直であることがわかった。一方,一見,特異に見えるビルマ北部周辺の圧力軸の方向も,この地域の地質断層の走向の分布と良い調和を示しており,決して異常なものではない。
    張力の軸の方向は,対応する圧力軸の方向にほぼ直角である。
    圧力・張力の軸の傾きは,全地域でともにゆるやかであり,地震がStrike-slip型の断層運動と関係していることを示している。とくに,地質断層の走向分布のわかっているビルマ付近の地震の断層運動が,地質断層と同じ傾向にあると仮定すると,ほとんどが右ずれの水平断層ということになる。
    これは,日本付近のこの程度の深さの地震のメカニズムではDip-slip型が卓越するということと,大いに異なるところである。この水平断層型の地震の卓越や,逆断層型の地震が必ずしも多くないことなどは,インド大陸が欧亜大陸にむかって,ヒマラヤ連峰,ビルマ一帯の地震帯付近で沈み込んでいるという考えと必ずしも調和しないようである。
    しかし,今回の統計に使用したデータ数は,上記の広大な地域に対し僅かに42に過ぎないことは,地震のメカニズムの地域性や地震の発生機構の統計的なふらつきを考慮するとき,結論を出すには余りにも少なすぎる。更に資料の蓄積を待って,再びこの問題を調べて見る予定である。
  • 荒川 秀俊, 渡辺 和夫, 土屋 清, 藤田 哲也
    1972 年 23 巻 3 号 p. 163-181
    発行日: 1972/12/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    亜熱帯性メソサイクロンが各種大気じょう乱の聞で占める位置づけを,その大きさと強さによって求めたところ,温帯性メソサイクロンと弱い熱帯低気圧の中間に在ることがわかった。洋上に発生して,100kmからせいぜい200kmほどの大きさを持った亜熱帯メソサイクロンを既存の地上観測網で捕捉する機会はきわめて少く,したがって,その構造や性質を調べる手掛りはほとんどない。たまたま,1960年9月1日のこと,メソサイクロンが東支那海に発生して北東に進んでいることが名瀬レーダーで発見された。それから一昼夜して,それが九州中部に上陸して消滅するまでの状況をかなり刻明に記録することができたので,このじょう乱が亜熱帯メソサイクロンの良い例では決してないが,このケースを調べることによって,メソサイクロンの一般的構造や性質をうかがうことにした。メソサイクロンは亜熱帯じょう乱としての螺線状降雨帯を持っているが,中緯度に進んで来ると共に,収束の大きな東半円内にある降雨帯で数多くの積乱雲が発生して顕著なメソ高気圧を作ってゆく。ところで,じょう乱の主体であるメソサイクロンのスケールと副産物的なメソ高気圧の大きさと強さが同じオーダーであるために,後者は前者の構造を著しく変えてしまうことが特徴である。また循環が弱いために対称的構造をとることができず,著しい非対称になっていることも特徴といえる。
    限られた高層観測点と山岳測候所で得られた資料の時系列を使って内挿をほどこし,1kmから14kmまでを1km毎に14層の等高度面天気図を作ることによって3次元解析を試みた。その結果として,亜熱帯メソサイクロンへの空気流入量は,巨大積雲のそれと,発達期にある台風への流入量の丁度中間であることがわかった。
  • 内田 英治
    1972 年 23 巻 3 号 p. 183-196
    発行日: 1972/12/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    1970年8月に太平洋上(東京-小笠原)と富士山上(7合8勺,3,400m)の比較的きれいな場所で雲核とエートケン核と巨大C1核の観測を行なった。
    海上の過飽和スペクトラムの勾配は過飽和度1%までは,なだらかであり(過飽和度0.3%で平均75/cc),同時に測定したニートケン核の平均濃度(450/cc)につながっていた。このスペクトラム曲線から推定される雲核の粒度分布の最多半径は,可溶性核たとえば(NH4)2SO4核を仮定すると大体0.01μ程度と考えられる。また石廊隣と富士山太郎坊でUCHIDA(1971)が行なった観測も比較に供された。
    巨大Cl核は海上では大体一様に存在し,1×10-9gr以上の核が比較的静穏の天気状態の時,10-15/1存在していた。
    富士山7合8勺では,雲核のスペクトラムは海上のと似ていたが,エートケン核は海上のより2倍程高かった(平均830/cc)。雲核の最多半径は海上のと大体同じと推定された。
    巨大C1核は非常に少なく,1×10-11 - 3×10-10grの核が時々1-3/l存在する程度であった。雲核(0.3%)のエートケン核に対する濃度比は大体0.1程度であった。
  • 山岸 登, 斉藤 進, 末広 重二
    1972 年 23 巻 3 号 p. 197-213
    発行日: 1972/12/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    松代地震観測所に設置されている世界標準地震計(WWSS)の短周期および長周期の記録を用いて地震の探知能力を調査した。
    主な結果は以下の通りである。(1)調査期間は1968年1月から1969年12月迄の2ヶ年で,調査対象はEIG/NOAA(旧USCGS)のPDE(震源速報)に register され,かつMBの与えられた地震8,423ヶである。このうち4,946ヶが短周期成分で3,902ヶが長周期成分で探知された。マグニチュードと震央距離別の探知率は Table4 与えられている。
    (2)P波の shadow zone である90°≦△≦109°を除いては,短周期の探知率の方が高い。
    (3)短周期と長周期についての全世界探知能力図はFig.4-6に与えられている。
    (4)以上を綜合すると,松代は90%の detection probability をもって△≦90°ではMB=43/4迄の地震の実体波を探知しうると言えよう。表面波に対しては同じ probability は約10%低下する。今回の調査はWWSSに限ったが,松代地震観測所には,更に長周期帯域にレスポンスを有する長周期地震計や歪地震計,また震度Vでも振り切れない広ダイナミックの地震計も設置されている。松代はその高探知能力と共に極めて大きな観測のウィンドーも大きな特長である。
  • 高木 聖
    1972 年 23 巻 3 号 p. 215-223
    発行日: 1972/12/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    1970年,気象測器工場に,強震計検定用の振動台が出来たので,この上に,人間を乗せて,震度の人体実験をおこなった。
    震度は人体感覚によって判定する以外に方法がないので,この実験が意味を持つことになる。
    実験の結果は第1図に示してある。測定値は表になっている。震度は記号で表現した心これらの震度が,第1図の破線(従来の加速度level)で区分出来ないのは,震度は加速度で規定出来ないことを示している。これらの震度は,第1図の実線で区分され,震度は energy に関係があることを示している。
    それゆえ,震度は,単位時間に単位面積を通る地震波の energy の対数に比例する,と考えられる。
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