1930-1971にヒマラヤ連峰・ビルマ・アンダン島とその周辺に発生した地震について,P波の押し引ぎの分布からメカニズムを解析し,42の解を求めることができた。
大陸移動説や,昨今話題のプレート説によると,上記の地震帯付近で,欧亜大陸とインド大陸が出合っていることになっている。地震のメカニズムが,はたしてこの仮説と矛盾しないかどうか,今回得られた結果を使ってこの関係を調べてみた。得られた結果は次のとおりである。
起震歪力の方向は,地震帯の走向にほぼ垂直であることが,世界の主な地震帯に認められる一般的傾向であるが,今回の場合もビルマ北部周辺を除く各地の圧力軸の方向は,地震帯の走向にほぼ垂直であることがわかった。一方,一見,特異に見えるビルマ北部周辺の圧力軸の方向も,この地域の地質断層の走向の分布と良い調和を示しており,決して異常なものではない。
張力の軸の方向は,対応する圧力軸の方向にほぼ直角である。
圧力・張力の軸の傾きは,全地域でともにゆるやかであり,地震がStrike-slip型の断層運動と関係していることを示している。とくに,地質断層の走向分布のわかっているビルマ付近の地震の断層運動が,地質断層と同じ傾向にあると仮定すると,ほとんどが右ずれの水平断層ということになる。
これは,日本付近のこの程度の深さの地震のメカニズムではDip-slip型が卓越するということと,大いに異なるところである。この水平断層型の地震の卓越や,逆断層型の地震が必ずしも多くないことなどは,インド大陸が欧亜大陸にむかって,ヒマラヤ連峰,ビルマ一帯の地震帯付近で沈み込んでいるという考えと必ずしも調和しないようである。
しかし,今回の統計に使用したデータ数は,上記の広大な地域に対し僅かに42に過ぎないことは,地震のメカニズムの地域性や地震の発生機構の統計的なふらつきを考慮するとき,結論を出すには余りにも少なすぎる。更に資料の蓄積を待って,再びこの問題を調べて見る予定である。
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