1952年以来,気象庁は津浪予報業務を行なってきている.また,国内に有感地震が発生した場合,その震源,各地の震度,被害の有無などの情報を発表している.
津波予報の発令は,被害防止の面から,早ければ早いほど良いし,また,建物が揺れているあいだに,震源の照会が殺到する現状では,地震情報の発表も可急的速やかに行なう必要がある.
津波警報について言うならば,日本近海に発生した地震の場合,発震後20分以内に警報を警報伝達中枢に送付しなければならない.これは大変なことである.観測網・資料解析法など,これまでに幾多の改良,改善が行なわれて来ているが,必ずしも満足な状態ではない.
大地震が発生した場合,発震後数分~10分のあいだに100通前後の資料が気象庁地震課に到着する.これらの資料を最悪の場合,2人の当番が手作業で処理することになる.
この一連の作業の大半は,資料の分類と地図への転写など初歩的なものである.もしこれらの作業が機械化により短時間で終らせることができれば,それだけでも緊急震源決定作業の時間は短縮されるはずである.
一方,緊急電報資料は,その作成時の状況から止むを得ないことであるが,落付いた状態で行なう地震記録の解析結果に比べて,精度は劣り,かつ,誤りも多い.したがってこれらの資料の処理を,すべて機械に任せると言うことは極めて危険である.
人間は,これらの玉石混淆の資料のなかから,経験や総合判断などに基づいて,玉だけを取り出して,巧みに震源決定などを行なっている.そこで,緊急震源決定には,どうしても人間の総合判断力が必要となる.
このような観点から,いわゆるman-machine mixの緊急震源決定および津波判定作業システムの開発を試みた.
本システムの開発には,筆者らが行なっている磁気テープ地震記録解析用のハードウエアのうち,中央処理装置とディスプレイが,主に使用されており,これによって計算機と人間の対話が容易に行なえるようになっている.
本システムによれば,震度分布図,押し引き分布図,各地のS-P時間やPの走時に基づく等震央距離円図,津波判定図,各地の推定津波規模表,震度表などが人間の指示によってTVスクリーン上に瞬間的に写し出される.
人間の指示によって描き出された各地の等震央距離円図から,人間が大体の震央をディスプレイを通じて計算機に伝え,これに基づいて,観測値のチェックを計算機に行なわせ,より精度の高い震央を求めるようになっている.
日本付近に発生した若干の地震について行ったテストの結果は良好で,この種のシステムが緊急震源決定作業や津波判定作業の能率を高めるであろうことがわかった.さらにアデスとこのシステムを結ぶことによって,その効果をなお高めることができると考えている.
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