Papers in Meteorology and Geophysics
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25 巻, 1 号
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  • 吉住 禎夫
    1974 年 25 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 1974/06/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    1956年から1965年までの10年間に南西諸島で記録された気圧自記紙をもとに,台風中心付近における10分から1時間程度の周期をもつDeppermann型気圧振動の出現頻度を調査した.最大全振幅が3mbを越えるものは約10%,2mb以上のものは約30%の出現頻度をもつ.
    Mitsuta and Yoshizumi(1973)による1解析例の如く,この種の気圧振動が長円形の台風眼の回転に伴う現象であるかどうかを推測する手掛りとして,長円形眼の報告頻度をも調査した.1961年から1965年までの5年間の長円形眼の報告頻度は約10%であり,中心気圧に強く依存しない.
    両頻度が同じオーダーであること,および気圧振動の若干の観測値の調査から,気圧振動の一部が長円形眼に関係しているものと推定される.
  • 市川 政治
    1974 年 25 巻 1 号 p. 13-21
    発行日: 1974/06/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    1952年以来,気象庁は津浪予報業務を行なってきている.また,国内に有感地震が発生した場合,その震源,各地の震度,被害の有無などの情報を発表している.
    津波予報の発令は,被害防止の面から,早ければ早いほど良いし,また,建物が揺れているあいだに,震源の照会が殺到する現状では,地震情報の発表も可急的速やかに行なう必要がある.
    津波警報について言うならば,日本近海に発生した地震の場合,発震後20分以内に警報を警報伝達中枢に送付しなければならない.これは大変なことである.観測網・資料解析法など,これまでに幾多の改良,改善が行なわれて来ているが,必ずしも満足な状態ではない.
    大地震が発生した場合,発震後数分~10分のあいだに100通前後の資料が気象庁地震課に到着する.これらの資料を最悪の場合,2人の当番が手作業で処理することになる.
    この一連の作業の大半は,資料の分類と地図への転写など初歩的なものである.もしこれらの作業が機械化により短時間で終らせることができれば,それだけでも緊急震源決定作業の時間は短縮されるはずである.
    一方,緊急電報資料は,その作成時の状況から止むを得ないことであるが,落付いた状態で行なう地震記録の解析結果に比べて,精度は劣り,かつ,誤りも多い.したがってこれらの資料の処理を,すべて機械に任せると言うことは極めて危険である.
    人間は,これらの玉石混淆の資料のなかから,経験や総合判断などに基づいて,玉だけを取り出して,巧みに震源決定などを行なっている.そこで,緊急震源決定には,どうしても人間の総合判断力が必要となる.
    このような観点から,いわゆるman-machine mixの緊急震源決定および津波判定作業システムの開発を試みた.
    本システムの開発には,筆者らが行なっている磁気テープ地震記録解析用のハードウエアのうち,中央処理装置とディスプレイが,主に使用されており,これによって計算機と人間の対話が容易に行なえるようになっている.
    本システムによれば,震度分布図,押し引き分布図,各地のS-P時間やPの走時に基づく等震央距離円図,津波判定図,各地の推定津波規模表,震度表などが人間の指示によってTVスクリーン上に瞬間的に写し出される.
    人間の指示によって描き出された各地の等震央距離円図から,人間が大体の震央をディスプレイを通じて計算機に伝え,これに基づいて,観測値のチェックを計算機に行なわせ,より精度の高い震央を求めるようになっている.
    日本付近に発生した若干の地震について行ったテストの結果は良好で,この種のシステムが緊急震源決定作業や津波判定作業の能率を高めるであろうことがわかった.さらにアデスとこのシステムを結ぶことによって,その効果をなお高めることができると考えている.
  • 藤原 美幸, 青梛 二郎, 椎野 純一, 柳瀬 利子
    1974 年 25 巻 1 号 p. 23-50
    発行日: 1974/06/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    尾鷲は雨の非常に多いところとして知られており,年間4,158mmの雨量,最大日雨量400mmの記録をもっている.ところがこの豪雨は比較的低い降水雲か又は特殊なスペクトルの雨滴から成るのではないかということがレーダー観測者により指摘されるようになり,豪雨のメカニズムについて雲物理的に興味ある問題となった.この問題を主としてレーダ観測によって解明を試みたのがこの研究である.
    観測は1971年8月30日~31日の台風のレインバンドと9月16~21日の停滞前線性しゆう雨の2回について行われたが,前者は瞬間120mm/hrをこえる強雨があったが雲は高く一般性が強いので,この報告では主として後者について解析した結果をのべる.まず垂直ドップラーレーダによる観測とRHIレーダエコーとPPIゲインステップの観測とを比較してしゅう雨のエコー塊が数km~10kmの間隔で存在する雲頂5~6kmの塔状雲群の複合体であるということがわかった.個々の塔状積雲は地表から雲頂近傍まで達する上昇気流柱をもち,その西側に広がった降水域をもっているという立体構造を明らかにした.
    またドップラーレーダーの資料にもとついてそれらの中の上昇気流の分布を推定した.特徴点は下層にもかなり定常的な最大2~3m/s,平均1m/sの上昇流を内蔵した降水雲が共存していることである.すなわち降水成長の構造からいえば塔状雲から「種まき式」に降ってくる降水粒子を成長させる二重雲構造をなしていることである.
    雨滴の分布についてはある一定の降雨強度になるまでは降水粒子の空間密度の増加により強度を増し,それ以上は専らスペクトルの巾を増す「台形成長」によって強度を増しているという特徴が明らかになった.この台形成長は降雨構造として上記の二重構造の所産であることと符号する.更に雨滴の資料から最大粒径Dmと降水強度Rの経験的な関係を求めた.
    次いで最大雨滴の成長を簡単な上昇気流モデルを用いて計算して上の経験的R-Dm関係にもとづいてDmが3または4mmに達した場合,尾鷲では,それぞれ瞬間または平均で50mm/hrの強度の豪雨が得られるところの雲物理的条件を評価した.そしてその結果を用いて比較的低い降水雲(レーダエコー)による豪雨がどのようにして可能であるかを説明した.
  • 柳沢 善次, 青柳 二郎, 神林 慶子
    1974 年 25 巻 1 号 p. 51-80
    発行日: 1974/06/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    大雨時の降雨域の構造をしらべるため,日本でもっとも多雨地域として知られている尾鷲付近を選び,尾鷲測候所内にドップラーレーダ,垂直走査レーダ,ミリ波レーダを設置し,雨滴・永晶核・海岸線付近の風・雨量等の地上測器を用いて観測を行った.昭和46年8-9月間の観測資料のうち,今回は台風23号に伴う降雨帯が尾鷲付近を通過した際の大雨について,名古屋レーダ資料等を用いて降雨域の垂直・水平構造について解析した,
    台風降雨帯の通過に伴う尾鷲付近の8月30日の日雨量は約470mmに達し,尾鷲の南海上では層状性の帯状エコーのなかに発達したセル状エコー(高度約8,000m)が散在し,これらが尾鷲付近に接近した際強い降雨を観測した.特徴的な垂直構造としては,エコー頂高度約3kmの下層積雲の存在である.この積雲は8m/s程度の上昇流を示して密に分布し,比較的強い降雨の続いた時間帯では,これら下層積雲の間でも1~2m/sの上昇流が観測され,強い降雨を持続させる原因となっていることが明らかになった.これらの下層積雲の水平分布をしらべると,尾鷲付近の海岸線にほぼ平行に分布し地形の影響をうけて発生・発達していることも明らかになった.
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