Papers in Meteorology and Geophysics
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27 巻, 3 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 小平 信彦, 村山 信彦, 高山 陽三, 上代 英一
    1976 年27 巻3 号 p. 63-73
    発行日: 1976/10/27
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    静止気象衛星システムの一つであるDCP-自動観測所-の試作を行ない運用試験を約1年間実施した。DCPは地上回線によるデータ収集が不可能で短波による他,通信手段のない離島や船舶における気象観測データを衛星中継で中枢に集めるシステムで,一ケ年以上の無保守で運用できる事と,外部からの電源の補給ができない制約がある。今回の試作機では消費電力を小さくし小型電源でまかなえること,保守期間を1ケ年以上とれること及び安価であることを主眼として設計を行った。このため若干気象庁の正式観測測器と異なる測器を用いることとなるのはやむを得ない。
    観測項目は気温,湿度,気圧,天気,風向,風速,雨量,日射の9項目でこの内天気は感雨器と太陽電池式日照計を用いて雨,くもり,晴を識別し,風向の平均にはベックレー式風向計を用いた。電源容量に大きく影響を与えるものは常時電源が入っている無線受信機及び気象測器の日射計である。受信機には消費電力を少くするため恒温槽を必要としない温度特性の良い水晶発振器が用いられ待受時の所要電力は約0.5Wである。
    気象測器では強制通風温度計,及びDewcelは常時電力を必要とするので適当でなく自然通風のシェルタを用いることとした、又湿度計には薄膜の容量変化を用いた方式のものを試験中であり,風向の平均には機械的な方式を用いた。このような低電力システムの採用により年間使用電力は1日12回観測のとき1942AH(12volt),1日8回観測で1850AHとなる。
    試験は衛星に相当するシュミレータを同軸ケーブルで接続し途中に伝播損失に相当する減衰器を入れ,約1年間無保守で連続観測記録を行った。気象センサーを気象研究所露場に設置し電源は商用電源を用いた。試験の初期約1ケ月を除いて全期間にわたって故障はなく毎時観測を行つた。1年間の発信周波数の経年変化は許容値1ppm以内であった。
  • 三宅 泰雄, 猿橋 勝子
    1976 年27 巻3 号 p. 75-80
    発行日: 1976/10/27
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    海洋処分に不適当な高レベル放射性廃棄物と他の放射性物質の定義が,国際原子力機関によって与えられている(1975)。この定義はWEBBとMORLEY(1973)の報告に基くが,多くの問題点があるので,彼らの報告について批判的研究を行った。研究の結果,彼らは安全のために水平方向のうず拡散係数の値を,非常に小さく(104cm2/s)仮定したために,226Raや239Puのような半減期の長い核種については,環境容量限度が非常に過大評価されていることが分つた。さらに水産食品の摂取量を非常に少なくし(6g/d),また深層水の上部と表層水中の放射性核種の濃度比の値を非常に大きく(100)とったために,環境容量限度が各核種に対して,過大評価されている。高レベル放射性廃棄物の定義は,関係する各国の専門家によって,慎重に再検討されることを提唱する。
  • 杉浦 古雄, 猿橋 勝子, 三宅 泰雄
    1976 年27 巻3 号 p. 81-87
    発行日: 1976/10/27
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    放射性廃棄物の北太平洋における深海処分に関する評価を,拡散過程にもとづき,簡単化した閉鎖系モデルを用いて行なった。
    水平および鉛直拡散係数の値をかえて計算した結果,拡散係数が小さいと核種の相対濃度と放射壊変法則の間のくい違いが大きくなり,係数が大きくなれば,放出点直上における濃度は平均均一濃度にちかづき,放出量と壊変量が等しい平衡時においては,海水中における核種の存在量は壊変定数に反比例するという放射壊変法則を満足することがしめされた。
    海洋学および放射能学の見地から,北太平洋における線量評価のためには,鉛直拡散係数として102cm2/s,水平拡散係数として108cm2/sが適切かつ合理的であることが結論された。
    高放射性廃棄物を次のように定義した。
    1.β/γ 放射体については、10 Ci/t(3Hを除く)。
    90Sr+137Csについては1 Ci/t.
    2.3Hについては、104Ci/t。
    3.長寿命α放射体は投棄できない。
  • 三宅 泰雄, 金沢 照子, 猿橋 勝子, 葛城 幸雄
    1976 年27 巻3 号 p. 89-98
    発行日: 1976/10/27
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    (1)本州東北地方の日本海側における放射性降下物の冬期にあらわれる降下率の極大について,秋田の観測値を基礎にして班究をおこなった。秋田において西ないし北西風が吹き,大気の鉛直不安定度が高い場合,降水の比放射能値は他の気象条件の場合にくらべ5ないし8倍になることがわかった。従って日本海側にみられる放射性降下物量の冬の極大は,この地方に冬の降水量が多く,北西季節風が卓越し,しかも,寒冷気団が日本海上を通過する際に下層大気があたためられ,その鉛直不安定度が増撫することなどによって説明できる。(2)大阪における放射性物質降下量が他の地域にくらべて少ない原因について調べた。90Sr降下量の比は,東京と大阪が1.4である。大阪と東京の年間降水量はほぼ等しいので,両都市の90Sr降下量の差は他の気象要因によるものである、大阪では地形の影響をうけて,全降水量の72%が北ないし東北東の風に伴なうことが明らかになった。放射性ちりを運ぶ西ないし北西の風が,大阪では他の地域にくらべて少ないことが放射性物質降下量を小さくする主な原因であることが分った。
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