Papers in Meteorology and Geophysics
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28 巻, 3 号
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  • 佐藤 純次
    1977 年 28 巻 3 号 p. 97-104
    発行日: 1977/09/30
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    都市域内における一連の大気拡散実験データの中から熱的安定度が中立条件のものだけを抽出し,Gaussianplume modelを考慮して解析した. Plumeの水平方向の拡散幅σyはPasquill-Gifford曲線でAからD-Eの階級におよんで広く分散している.しかしσyを風向変動の標準偏差σaおよび平均風速uで規準化してやると,風下距離で表示するよりはむしろtravel timeに対して幾分か配列がよくなることがわかった.鉛直方向の拡散幅σzについてはCとD階級の曲線の間に全て納まっており,複雑に組合わせたパラメーター表示をするよりも,Pasquill-Gifford曲線で中立とされているD階級より半階級から1階級高いC-DからCを都市域における中立と考えた方がよい.ここでC-DはCとDとの幾何平均をとる.また他の都市域における拡散実験の結果(FortWayne, Ind., St. Louis, Mo., Johnstown, Pa.)でも平均的にはDより1階級程度高い.これは恐らく都市域では地表面粗度が大きいため,低層の気流に力学的な乱れを誘起することに起因していると考えられる.
    結果として都市域内の熱的安定度が中立の条件では,σzはPasquill-Gifford曲線のCとDの中間の階級に相当し,σyは風向変動幅と風速によって特徴づけられる.
  • 人類の死亡と季節との関係
    籾山 政子, 片山 功仁慧, 橋屋 信子, 佐藤 都喜子
    1977 年 28 巻 3 号 p. 105-123
    発行日: 1977/09/30
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    1970年代に近づいてから,日本の死亡の季節性 -季節パターン- が著しく変形し,ことにこれは一歳未満の乳児死亡に顕著であることは既に報告したところである.本論は,同年代に,果して外国も日本と同じような変化を示すかどうか,またその原因はいかなるものであるかにつき考察した.
    資料の入手可能なイギリス,アメリカと日本との比較を試みた.総死亡の季節パターンはイギリスは冬山が高く著明な冬季集中型であるが,アメリカは著しい緩慢型である.日本は両者の中間であるが,夏にごく低い山があり特異的である.脳血管疾患は日本,イギリス何れも冬山の目立つ冬季集中型,アメリカは緩慢型である.肺炎・気管支炎は前者と類似している.
    乳児死亡は日本とアメリカを比較すると何れも脱季節化が進んでいるが,そのパターンはややことなり,日本は夏冬の二峰型,アメリカは1~2月と4~6月の作る二つの低い丘と,7~9月の底の浅い谷がある.
    1970年に近づいての日本の死亡率の低下,急速な脱季節化の背後には,日本の高度の工業化,都市化の進行があったためと考えられる.一方,イギリスではすでに1800年代の後半にはかなりの衛生状態の改善があり,それが死亡にも反映されて長年月にわたって,先進国の代表的なパターンを程してきた.しかし70年代になっても多少の死亡率低下はあるものの,パターンそのものは殆んど変化をみせない.アメリカは死亡の脱季節化は日本より25~30年以前に形成されて,比較的ステーブルな状態がつづいているが,70年代に近づいても日本のような急激な変化はみられない.さらにアメリカを地域別に詳細に分析すると,後進的地域としての南部には死亡,ことに黒人の乳児死亡の冬山が高く,アメリカとしては極めて特異的なパターンを示す.このタイプは60年代初期も70年代も殆んど変化していない.
    最後に,籾山がかつて考察した“季節病カレンダー”-これは筆者らの一連の研究は本カレンダーよリスタートしたといっても過言ではない- を日本,イギリス両国については3年代,アメリカについては2年代の比較を試みた.日本は年代的に著しい変遷をとげている事がわかるが,アメリカ,イギリスはそれほど著しい変遷はみられないのが特色的である.
  • 松代群発地震の場合
    山川 宜男, 高橋 道夫
    1977 年 28 巻 3 号 p. 125-138
    発行日: 1977/09/30
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    筆者等は,以前,個々の地震の発震機構の解析から得られる地震発生時の解放応力パターンは,地震発生前後の震源応力場の変化分のみを反映するものであって,一般には震源域の造構応力そのもののパターンを直ちに指し示すものでないことを指摘し,更に地震が地殼の岩石の脆性破壊であると仮定すると,その地域に特別な地体構造がなければ,発震機構の解析から求まるP及びT軸は,その地域の造構応力の最大及び最小主応力(圧力を正にとる)軸と(45-θ)° の角度をなすことを指摘した.今回は,この考えを松代群発地震について,市川の求めた発震機構を用いて吟味した.主な結果は次の通りである.
    1)これまで指摘されている如く,P軸は,平均的には東西方向に向くが,個々の地震のP軸はその方向を示すものはむしろ少なく,時計まわりや反時計まわりに10~20°程度ずれるものの方が多いことが見られ,このうち,反時計まわりにずれるものは,中村・恒石によって指摘されたN55°W走向のいわゆる松代地震断層(A断層)あるいは,それとほぼ平行な断層系(Ai(i=1,2,...)断層系)に対応するものであり,時計まわりにずれるものは,その断層と共役な断層(B断層)又は断層系に対応するものであると認められる.
    2)次に,この群発地震活動を通常よく行われるように,次の4期に分けた.第1期 1965年8月~1966年2月(初期活動期)第2期 1966年3月~1966年7月(前ピーク活動期)第3期 1966年8月~19聞年12月(後ピーク活動期)第4期 1967年1月以降(収束期)
    第1期では,B断層系のみが活動した.第2期ではA断層が活発に活動を始めたが,B断層の活動もあった.第3期では,A断層のみならず南西部のAi(i=1,2,…)断層も活動を始めた.この時期B断層(と或いは,それに平行な断層)もかなり活動した.第4期では,A断層はむしろ活動しなくなり,Ai(i=1,2,...)断層及び断層(或いはこれを含みこれに平行な断層)(但し,A断層近辺は除く)のみが活動した.以上の4期にわたる各断層活動の変化は,笠原らの観測による水平歪の主軸方向の変化とよく対応がつく.
  • 気象研究所地震火山研究部 , 鹿児島地方気象台観測課
    1977 年 28 巻 3 号 p. 139-145
    発行日: 1977/09/30
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    1975年1月から1976年3月にかけて,ほぼ3ヵ月ごとに桜島において光波測量を実施した.測器はAGAジオジメーター6BLを使い,9本の測線をおもに桜島の西半分に設置した.
    測線各々について,最初の測定値を基準とした測線の伸縮から歪量を求めた.この歪量の増減の変化と桜島の火山活動とを比較検討した結果,次のようなことがわかった.
    すなわち,袴腰付近の海岸に沿う2本の測線と桜島北部の海岸に沿う測線の,計3本の測線における歪変化はかなり大きな量でほぼ同じ傾向を示し,かつ桜島の火山活動の推移とにかなりよい関係がみられる.火山活動の“活発な時期には歪は伸び”を示し,“穏やかな時期には歪は縮み”を示す.
    このことは,ジオジメーターによる地盤変動観測が火山活動を把握する有効な手段となりうることを示唆している.
  • デジタル処理による震央方位の推定
    竹山 一郎, 柴田 武男, 佐藤 馨
    1977 年 28 巻 3 号 p. 147-157
    発行日: 1977/09/30
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    1地点の観測から震央方位を求めるには,一般には,P波の初動を合成する方法が用いられるが,これは,初動の3成分が明瞭でないと推定できない。そのため,初動ではなくて,P波のwave trainを用いて,震央方位を推定する方法を研究し,アナログ処瑳によって,これを行う試みを第2,3報に報告した。これは,地震波形の東西・南北それぞれの成分に上下成分を掛けてから,時間的に積分して,xy座標上で合成し,ベクトル軌跡を画かせ,軌跡の進む方向を震央方位とする方法である。この処理では,S波部分まで含んだ軌跡を画いた場合,簡単には,P波とS波の分離ができず,誤った方位を推定することもありうる。その欠点を除くため,この報告では,ベクトル軌跡の刻々の方位をデジタル処理によって求め,これと地震波形(離散的データ)を並べて図形に画かせることを行った。遠地地震若干例について実験した結果はつぎのとおりであった。
    (1)用いたデータの多くは,震央距離32~87°,MB5.6~6.6の範囲のものであるが,これについては,10° 以内の誤差で震央方位の推定に成功した。
    (2)マグニチュードが小さく,地震記象の始まりがどこかわからないようなものでも,2例の処理しかないが,8方位くらいに分割して,方位の推定ができた。
    (3)1例の処理ではあるが,PP波を用いても,方位の推定ができた。
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