Papers in Meteorology and Geophysics
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29 巻, 4 号
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  • 椎野 純一
    1978 年 29 巻 4 号 p. 157-194
    発行日: 1978/12/15
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    積雲における降水の生成及び発達の問題を,力学過程と雲物理過程の相互作用に注目し,運動方程式,質量保存則,熱力学第一法則及び液相と固相(氷相)に対するパラメタラィズされた種々の雲物理過程からなるオイラー型一次元雲モデルによって数値実験的に調べた.特に雨滴の凍結に関し,より実際に近いよう実験及び観測事実に基づいた時間及び過冷却温度依存のパラメタリゼーションを導入し,暖い積雲と氷相を含む積雲との降水発達の違いを議論した.本稿では雲中の凝結水は,雲粒(雲水),雨滴(雨水),及び凍結雨滴の三成分に分類される.液相に関する雲物理過程としては,水蒸気の凝結による雲粒の生成,雲粒から雨滴への変換,雨滴の雲粒捕捉及び雲粒と雨滴の蒸発,また氷相については活性化された凍結核に基づく雨滴の凍結,凍結雨滴の雲粒捕捉,水蒸気の昇華,凍結雨滴の融解,凍結雨滴の蒸発及び融解中の凍結雨滴の蒸発が考慮されている.
    数値計算により得られた主な結果は次の通りである.
    1)本稿の雲モデルはByers and Braham(1949)や他の研究者達により観測で得られた氷相を含む積雲の特徴を定性的にかなり良く表現しているように思われる.特に時間・過冷却温度依存の雨滴の凍結過程を導入することにより,小規模積乱雲の発達期,最盛期,衰弱期の各段階の水質に関する相変化がより実際に近く再現された.
    2)地表における降水強度の極大は暖い積雲の場合,雲の生涯を通して一度しか現われないが,氷相を含む積雲については雨滴の凍結域が過冷却温度領域の比較的暖い範囲にある場合二度現われる.氷相の発生により積雲の最大上昇流,雲頂高度,最大超過温度など全体として積雲の発達は促進されるが,地表における最大降水強度,総降水量及び降水能率は氷相を含まない暖い積雲のほうが大きい.これらの結果はKoenig and Murray(1976)の氷相を含む二次元積雲の数値実験結果と定性的に一致し,大量の氷相の発生(又は導入)による積雲の発達促進が即地表での降水量の増大につながらない可能性があると言う彼等の指摘はここでもあてはまる.
    3)種々の大気の条件下での数値計算によると,ある与えられた鉛直湿度分布の基で積雲による地表の最大降水強度及び総降水量が最も大きくなるのに最適な大気の気温減率及び地表気温が存在する.また水平規模の大きい積雲ほど地表の最大降水強度及び総降水量は大きくなる.
    4)雲物理過程は積雲の発達,特に寿命の長短に大きく影響する.一般的に雨水の生成の早い積雲ほど寿命は短く降水能率が良い.しかし最大降水強度そのものはむしろ積雲の発達する場の熱力学的な性質によって支配される. 本稿の雲モデルの限界及び今後改良すべき点についても考察されている.
  • 吉田 明夫
    1978 年 29 巻 4 号 p. 196-203
    発行日: 1978/12/15
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    既存の共役断層系の活動を,その地域に働く応力場との関連において考察した.断層運動はスティック・スリップ的なものと仮定し,断層面上の有効せん断応力を比較した.
    断層面上の摩擦係数μが,それらの共役断層系が形成された時の内部摩擦係数μ0と同じならば,たとえ応力場がそれ以来変化したとしても,それらの2つの断層のうちどちらかがよりすべりやすいということはない.μがμ0よりも大きい時は,最大主圧力軸となす角が小さい断層のほうがより活動しやすい.またμがμ0より小さい時は逆になる.
    共役断層系のうちどちらか一方の断層が活動したあとの残留応力場を求めた.特に,初期応力場と残留応力場の間の主圧力軸の変換を調べた.これらの結果から,μ がμ0より大きい時,初めに動いた断層がひき続いてより活動しやすく,またμがμ0より小さい時は共役断層が交互に活動する可能性が存在することがわかった.
    この理論にもとづき,松代群発地震および伊豆半島内の地震活動を考察した結果,これらの地震活動に伴なう断層運動が,上述の理論で説明できる可能性のあることがわかった.詳しい検討は別に行なう予定である.
  • 須田 友重, 和田 雅美
    1978 年 29 巻 4 号 p. 205-215
    発行日: 1978/12/15
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    1964-75年の資料を用い,太陽地球間をむすぶ惑星問空間磁場(IMF)のセクターの境界(正-負)又は(負-正)を起点とし,重ね合せの方法(Chreeの方法)で宇宙線強度(約20観測点),太陽風,IMFの特徴的な変化をしらべた.
    境界通過後の宇宙線変動として,セクター境界の極性と無関係にFD型の減少がみられた.セクター境界は,シックフロント的な構造をもつと考えられており,これがFD型の減少を示すとみてよい.太陽爆発にともョなうシ(急始地磁気嵐:SSC)を起点として同様の解析を行い比較した結果,宇宙線強度の変化スペクョトックフロントルはセクター境界の場合,より高いエネルギーにまで及んでいることが見出された.境界の極性に関係のある宇宙線変動を,更に境界に対し対称的なものと,反対称的なものに分けた.これらは,IMFの構造と太陽系空間内の宇宙線の密度勾配が関係しているものと考えられ,前者は南北方向の勾配,後者は太陽からの距離による正の勾配が対応するとみられる.
  • 嘉納 宗靖, 宮内 正厚, 鈴木 正
    1978 年 29 巻 4 号 p. 217-224
    発行日: 1978/12/15
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    全波長域の水平面日射量は周知のとおり,気象のみならず,建築,農業,医学等各方面に広く使われ,それらの分野に貢献している.最近になって,このほか紫外,可視,赤外域の水平面日射量の観測資料が各方面から要望されている.残念なことに,これらの連続観測は皆無に近い.この研究では,これら紫外,可視,赤外域の水平面日射量を測定する日射計を製作し,これを用いて,約1ケ年間観測をおこなって,これら波長域の水平面日射量と全波長域水平面日射量との関係を研究した.これより,国内数10ケ所の気象観測所等でルーチン業務で測定されている全波長域水平面日射量(S)を用いて,上記3波長域の水平面日射量(Sk,kは波長域を示す)を精度よく評価出来る次の実験式を見出した.Sk=AkS+BkSn+1 ここでAk,Bk,nは定数である.
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