Papers in Meteorology and Geophysics
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31 巻, 3+4 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著論文
  • 時岡 達志
    1980 年 31 巻 3+4 号 p. 115-123
    発行日: 1980年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
     準地衡風乱流論に基づくサブグリッドスケールの混合のパラメタ表示の一方法を提案する。このパラメタ表示では運動量及び熱に対する水平拡散の係数と同時に、それらに対する垂直拡散の係数も一義的に決定される。
     拡散の係数の決定法の他に、拡散の差分表現についても検討を行なう。エンストロフィーがより小さいスケ一ルの乱れの方に流れて行く時の慣性小領域を適切に表現する拡散の差分表現法についても述べる。
  • 花房 竜夫, 藤谷 徳之助, 伴野 登
    1980 年 31 巻 3+4 号 p. 125-152
    発行日: 1980年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
       A meteorological observation tower at Tsukuba Science City is equipped with mean wind, temperature and humidity sensors, together with instruments for the measurement of their short period fluctuations at seven levels (including the top of the tower) ranging from 10 m to 213 m above the base of the tower.
       The general statistical properties of wind data for one year are discussed in this paper together with the tower facilities including the data acquisition system.
       The annual arithmetic mean wind speeds increase from 3.14 m/s at the 25 m level to 6.09 m/s at the top level. The annual mean wind speed at the 25 m level is highest during the daytime and one at the 213 m level at night. Monthly relative frequency distribution of wind speed can be well simulated with Weibull distribution.
       Annual relative frequency of wind direction has three clear peaks, which are very similar to the climatological data obtained at the Tateno Aerological Observatory near the Meteorological Research Institute.
       The characteristics of vector wind speed are examined and the monthly mean profiles from May to September seem to be explained by the geostrophic wind.
       The power spectra of wind speed in summer and fall have a remarkable peak of daily cycle and a relatively large peak with 3-4 days period in winter and spring.
  • メンブランフィルターに捕集された吸湿性成分の除去方法
    田中 豊顕
    1980 年 31 巻 3+4 号 p. 153-171
    発行日: 1980年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
     自然氷晶核をメンブランフィルターで採集すると、吸湿性成分も普通同時に捕集される。フィルターの吸湿性成分は氷晶核の検出を妨げる作用がある。そこで試料フィルターを蒸留水の表面に浮べることにより、吸湿性成分を除去する手法を開発した。この方法は一種の透析法である。
     火山灰を捕集した試料フィルターに透析法を適用し、透析処理した試料と処理しない試料をそれぞれ調製した。各試料について、電子顕微鏡による粒子の形態的な変化の有無を調べた。一方、水過飽和の達成される拡散型低温槽を用いてフィルター上に成長する氷晶を計数することによって、各試料の氷晶核化能力を測定した。
     透析処理による粒子の形態的な変化はみとめられなかった。しかし透析処理に用いた蒸留水中には、水溶性成分が検出された。これらのことから火山灰粒子は固体粒子と水溶性成分から成る混合粒子であることを推定した。一方火山灰の氷晶核化能力は、いづれの試料についても、温度の低下及び氷上過飽和度の増加にともなって増加することが明らかになった。また温度及び湿度が-12~-25°C及び氷上過飽和13~35%の実験範囲では、透析処理した火山灰が未処理のものに比べて2~3倍多く氷晶核として働くことがわかった。
     自然の大気中では、火山灰が混合粒子であること、さらに氷晶核化能力の温度及び湿度依存性から考えて、火山灰は、基本的には「凝結―凍結」の過程で作用することを推論した。
  • 高島 勉, 高山 陽三
    1980 年 31 巻 3+4 号 p. 173-176
    発行日: 1980年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
     海面を色々な傾斜角を持った小面から成っており、その小面の傾斜がガウス分布に従っているものと仮定した。この傾斜分布は方向性を持たない風速によってのみ変わるものとした (Cox and Munk, 1956)。ここではNOAA-6号衛星塔載AVHRR放射計の第3チャンネル (3.55~3.93μm) のデータと上記の海面モデルからの放射エネルギーの比較から海面風を求めた。結果は船による観測値と良く一致した。
  • 木村 富士男
    1980 年 31 巻 3+4 号 p. 177-184
    発行日: 1980年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
     短い風下距離での反応拡散実験を行なった。オゾンをバックグランド濃度として含む大気中にNOガスを放出し、風下距離120mまでのいくつかの地点においてNO, NO2及びO3濃度の連続測定を行なった。NOx濃度の非常に大きな変動が観測されたが、瞬間プルーム中の各汚染質の平均濃度が得られた。この結果、反応があっても [NO]+[NO2] 及び [NO2]+[O3] の各濃度和は保存していること、日中であっても移流時間が20秒以内ではNO2の光分解速度はその生成速度とくらべてかなり小さいことがわかった。またNO2の生成速度は移流時間とオゾンのバックグランド濃度だけでなく乱流拡散による希釈率にも依存していることが明らかになった。
     発生源からの風下距離が比較的短い場合に適用できる保存則から導いた反応拡散モデルを提案し、瞬間プルーム中の実測との比較でかなり良い結果を得た。
  • 鈴木 款, 三宅 泰雄, 猿橋 勝子, 杉村 行勇
    1980 年 31 巻 3+4 号 p. 185-189
    発行日: 1980年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
     海水中のセレンは、溶存無機 (4価および6価)、溶存有機形および粒子状有機形の4種の異なった化学形で存在している。
     溶存全セレンの含量は、次の要因によって規制されている。
    1. 表層と深層との間の水の交換
    2. 溶存無機形セレンが粒子状有機形セレンに変る際の生物生産
    3. 粒子状有機形セレンから溶存セレン (無機および有機形) への酸化分解による再生
     海洋を2層に分け、第1層を0~1,000m、第2層を1,000~5,000mとしてセレンの循環を考察した。北西太平洋の第1層と第2層の溶存セレンの各化学形の平均濃度は次のようである。
        (μg 1-1)
     4価6価有機形全セレン
    第1層0.0420.0280.0140.083
    第2層0.0580.0630.0080.13

     

     溶存全セレンの循環を、上に述べた溶存全セレン含量を支配している3つの過程の移行速度を仮定して計算した。各化学形セレンの含量について2層間で定常状態が保たれているとすると、全溶存セレンの観測値は以上の考察で説明できる。
     さらに、セレン4価、6価および溶存有機形、粒子状有機形の4つの化学形の間の動的平衡についても同様に考察した結果、計算値と観測値との間によい一致がみられた。
  • 海洋を伝わる地震波
    勝又 護, 徳永 規一
    1980 年 31 巻 3+4 号 p. 191-204
    発行日: 1980年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
     海洋の低速層 (SOFAR channel) を伝わる地震波“T”は、かなり古くから知られているが、我が国でこの波が大きく明瞭に観測された例は少なかった。1975年南大東島に地震計が設置されて以来、短周期の振動からなる極めて顕著なT波群がよく記録されるようになった。これらは、主として琉球―台湾―フィリピン地域の地震に伴うもので、他の地域の地震ではまれである。
     地震計に記録されるTは、海底に入射した地震波により水中疎密波がゼネレートされ、これが海洋を伝わり、沿岸で再び地盤を伝わる地震波に変換されたものである。水中疎密波が大きなエネルギーで遠方にまで伝わるためには、地震波―水中疎密波―地震波の変換が効率よく行なわれること; 海洋をchannel waveとして少い減衰で伝播すること等が必要である。従って、Tの発生と伝播の機構には、地震波が入射する地域、伝播径路および観測点付近の海底地形が大きく関与することになる。南大東島はこれらに関し好条件が揃っているため、Tを大きく記録するものと思われる。特に、ルソン島近海の地震に伴うTは優勢で、人体感覚を生じる程度の強さとなることもある。
     Tの発生源および伝播径路は多様であるが、その主力波群のフィリピン海における平均伝播速度は1.48 km/secで、同海域におけるSOFAR channelの音速の極小値とほぼ一致する。
     東シナ海の地震 (震源のやや深いものをふくむ) によるTもよく観測されるが、これらは琉球列島の東側の海底に入射した地震波 (S波の可能性がある) によってゼネレートされたものと推定される。
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