Papers in Meteorology and Geophysics
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31 巻, 1 号
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原著論文
  • 藤田 敏夫, 本多 庸浩
    1980 年 31 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1980年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
     信頼できる蒸発量の測定は気象をはじめ、多くの科学分野で重要である。世界の気象観測業務では一日間の蒸発量をクラスAパンなどの大型蒸発計を使って測定しているところが多い。この場合、蒸発量は皿の中の水深をフックゲージで測定して求めている。そのため、風が測定に影響を及ぼすし、とくに短時間の少ない蒸発量はこの方法では求めることは出来ない。
     最近、塩分測定技術が電気伝導度法を用いることによって改良され、0.003‰の精度で塩分濃度を測定できるようになった。そこで電気伝導度法を用いた塩分測定技術を応用して短時間の蒸発量でも正確に測定し得る方法をここで提案する。この方法の検討結果は以下の通りである。
     この方法による蒸発量測定の相対誤差は約2.5%以下にすることができる。標本抽出誤差は4×10-4‰以下であり、海塩粒子などの降下量は海岸から300m位はなれた所で測定して3.6×10-5‰位の値に過ぎなかった。
     同じ型の二つの塩水蒸発計からの蒸発量はよい一致を示し、平均自乗誤差は0.02mmに過ぎない。また、淡水蒸発計と塩水蒸発計からの蒸発量は観測時間が長いときはよく一致するが、時間々隔が短かくなるにつれて淡水蒸発計からの蒸発量が多くなる傾向がみられた。この原因の一つは淡水蒸発計の水深測定の誤差によるものと考えられる。
     塩水蒸発計からの蒸発量はバルク法で求めた水蒸気の鉛直輸送量と直線関係が認められた。後者の前者に対する比は約2⁄3であった。この値は二ヵ所の野外実験で得られたもので、将来いろいろな場所で色々な大気安定度に対して実験を重ねる必要があろう。
  • 吉田 明夫
    1980 年 31 巻 1 号 p. 7-14
    発行日: 1980年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
     地震発生に関与する応力場の起源を、くい違いの概念を基に検討し、反くい違いあるいは受動的くい違いの考え方が震源域の形成の理解に有用なことを提案する。これは地震発生が局所的な弾性歪み場に起因すると考えるものである。このような見方によって、震源域での地震発生前の応力集中や、すべり残し領域での余震発生などが自然に説明される。
  • 勝又 護, 吉田 明夫
    1980 年 31 巻 1 号 p. 15-32
    発行日: 1980年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
     千島―日本海溝に沿う地域のプレート境界に発生する大規模な地震の震源域とみなされる領域の一部に、地震発生前および発生後に、同一位置に長期間にわたって地震活動の低い地域が存在することが認められる。大きな地震に先行する、いわゆる“地震活動の空白域”についてはすでに多くの例が報告されている。こゝで取り上げる「空白域」は、震源域の一部の比較的狭い範囲を対象としていること、および地震発生後にも出現すること等が今まで指摘されているものと異なる。
     筆者らは、上記の「空白域」がプレート境界に発生する大規模な地震の震源形成に関して重要な意味を持つものと考え、これを「震源域の核」と名付た。震源域の核を中心とする地域の地震活動の推移は、大規模な地震の震源域生成過程、すなわち陸側のプレートと海洋プレートとのカップリング条件の変化を反映したものとして理解できる。
     震源域の核およびその周辺の地震活動の変遷に着目し、プレート境界の大規模地震の震源域生成過程を次の5段階―I; 震源域の核の生長 (常時地震活動) II; 震源域の核の形成 (地震前の空白域) III; 前兆的活動 IV; 地震発生と余震活動 V; ディカップリング (地震後の空白域)、に分け各段階におけるプレート間のカップリングの状態、歪蓄積の進行状況等について考察する。
  • 嘉納 宗靖, 宮内 正厚, 鈴木 正, 三寺 光雄
    1980 年 31 巻 1 号 p. 33-41
    発行日: 1980年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
     海面温度は海洋学や気象学特に海-空相互作用の研究およびプランクトンや魚の状態を知るうえに重要な要素である。この海面温度の測定を広範囲にかつ短時間におこなうには、人工衛星、航空機またはヘリコプターによるリモートセンシングに頼る以外に方法はない。この場合、測定には窓領域放射を利用した放射計が用いられる。このため測定は水蒸気等による吸収、射出の影響をうけ、そのままでは真の海面温度と異なる海面温度を得ることになる。そこで、この大気の吸収、射出の影響を除去または補正する必要がある。この論文では、海面から来る放射を2方向 (天底角0°および45°方向) から測定することによって自動的に大気の影響を除去して海面温度を得る方法を提示し、またAnding and Kauth (1970) による二つのチャンネルで測定することによって大気の影響を自動的に除去する図的方法を数式的方法に改め、より簡便にした。これらの方法によると、海面温度は平均して約0.4°C以内の誤差で得ることができる。
  • 西山 勝暢, 小長 俊二, 石崎 廣
    1980 年 31 巻 1 号 p. 43-52
    発行日: 1980年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
     本州南方の黒潮の南側には常に暖水域が存在していて、黒潮が東海道沖で蛇行流路をとるときは四国沖に、直進流路をとるときは紀伊半島から東海道の沖に位置している。
     これらの暖水域は主サーモクラインの上の亜表層に、中心の厚さ200~400m、直径100km以上のレンズ状の等温層を形成している。その等温層は蛇行流路のときは19°C、サーモステリックアノマリーは300~320cl/t-1で、直進流路のときはそれぞれ17°C、260~280cl/t-1である。
     しかし1959年と1975年に発生した蛇行流路の場合を注意深く解析してみると、蛇行の発生した年の暖水域にはレンズ状の等温層構造はみられなく、翌年以後にこれが形成されている。また、この等温層のサーモステリックアノマリーの時間変化をみると、前者では年の経過とともに減少したが、後者では漸増している。一方暖水域の地理的な位置の動きをみると、前者の場合は時間的にほぼ同じ所に存在しているが、後者の場合には時間的に大きく変動している。
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