Papers in Meteorology and Geophysics
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32 巻, 4 号
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原著論文
  • 原田 朗
    1981 年 32 巻 4 号 p. 233-245
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
     時間的・空間的に密なパイボ一ル観測資料の解析によって、関東地方の上空に夜間に発達する下層ジェットが夏に存在することがわかった。本報告は、日本の上空における夜間の下層ジェットの解析的な研究の最初のものであろう。
     この報告で議論する下層ジェットは、その水平スケールは小さいが、合衆国の大平原で観測されるものに類似している。南西流としてのジェットの極大風速は約20m s-1で、高度200mから700mに真夜に観測される。大規模気圧場からみると極大風の観測値は地衡風速を越えている。注目すべき結果は、ジェット流が陸上を吹き進むにつれて、平均風速の減少にもかかわらず風速の日変化の振幅が大きくなること、日変化の最大振幅の高度は低くなること、そしてジェット流の運動量は相対的に下層に集中していくことである。運動量が時間とともに下層に集中していくことについては、関東地方にみられる夜間の低気圧性じょう乱とこの解析結果とについての比較がなされた。
  • 佐藤 純次
    1981 年 32 巻 4 号 p. 247-256
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
     南関東大気環境調査、秋田湾地域大気環境調査で得られた定容積気球の流跡線および低層ゾンデによる気温鉛直分布のデータに加えて、東テネシー流跡線観測 (ETTEX) データを解析することによって鉛直乱流拡散係数、Kzの日変化および鉛直分布におよぼす季節や地形の影響についての評価を行なった。Kzは全季節とも正弦曲線に似た日変化を示すことが確められた。この日変化のパターンは混合層高度のそれと類似しており、その日変化の位相は可照時間に依存し、振幅は地形、日射強度または熱フラックス等大気境界層内の安定度を決定する量に依存する。
     一方、観測されたKzの最大値、Kmaxは混合層高度、Ziの0.15≤Z/Zi<0.5の領域に出現していることが全てのデータについて見出された。そしてKmaxの出現する高度、Zmは地形および境界層内の安定度に影響されることが確認された。
  • 矢野 直, 佐藤 純次, 小林 隆久, 小出 考, 村山 信彦, 戸村 健児, 桂川 秀嗣
    1981 年 32 巻 4 号 p. 257-265
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
     大気の拡散や移流を調べる上で、大気トレーサー法は有効な方法で、現在までにSF6や螢光粒子等種々のものが開発されている。しかし、環境アセスメントにおいて複数の汚染源があり、個々の汚染への寄与を知りたい場合や複雑な移流を、複数のトレーサーを用いて調べることはそう容易なことではなく、容易に多重トレーサー実験ができるシステムが望まれていた。そこで、今回上記の点を考慮し、主として希土類元素をトレーサー物質として粒子状で放出し、フィルター上にサンプリングして放射化分析するアクチバブル・マルチ・トレーサー法 (AMAT) を開発し、その予備的な実験を行ったので報告する。この方法の大きな特徴は、適当な条件を持つ元素を選択すれば容易に多重拡散実験ができることにある。元素としては、Eu, Dy, Ho, Luが経済感度が良いと考えられる。トレーサーの放出は、物質を水に溶かし圧縮空気による特殊な噴霧器で行い、ローボリウム又はハイボリウムサンプラーによリサンプリングした。この方法とSF6との同時比較実験では、多少の差は見られたものの良い一致を示すことがわかり、瀬戸内海・燧灘で行った海陸風のトレーサー実験でも計算による予測値と良い一致を示した。
  • 高島 勉, 高山 陽三
    1981 年 32 巻 4 号 p. 267-274
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
     海面を多くの小面から成立っているものとし、その小面の傾斜が風の方向に対して、isotropicおよびanisotropic Gaussian分布をしていると仮定した (Cox and Munk、1955)。また海面の反射特性を入射角と反射角の函数として表わした。ここでは、波長域をNOAA衛星搭載AVHRR放射計 (可視、3.7μmおよび11μm帯) に限定して、Hale and Querry (1973) で与えられた水の屈折率を基にして、海面の射出率および反射率を計算した。
     3.7μmおよび11μm赤外窓領域では、isotropic Gaussian分布の場合、射出率の風による依存性は小さく、海面は鏡面反射をすると仮定しても良い事がわかった。可視域における反射率についても同じ事が言えるが、この場合太陽光が海面によって直接ある方向へ反射する確率は、Gauss分布に従うので、海面状態への依存性が高い。また11μm帯では、射出率は天頂角が小さい所では (40度以下) 完全黒体のものに近いが、3.7μm窓領域では、少しづれており、天頂角が0度の所で、0.977 (3.9μm)、40°で0.972であった。
  • 田中 康裕, 土屋 清, 山浦 雄一
    1981 年 32 巻 4 号 p. 275-290
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
     大噴火の際の噴煙や降灰域は広い範囲に及ぶので、その全容を地上から観測することはきわめてむずかしく、人工衛星からの観測が有効である。
     1979~80年には阿蘇山で活発な噴火活動があり、同火山としてはまれに見る多量の噴煙と火山灰を放出した。そこで、この時期に地球観測衛星ランドサットが撮影した映像から、噴煙の広がり具合および降灰域を検出し、阿蘇山測候所が地上から行った火山観測結果と比較した。これは人工衛星の火山観測への利用を検討するのによい機会であった。
     ランドサットのMSSは波長別に4つのバンドに分れており、それぞれバンド4、バンド5、バンド6、バンド7と呼ばれている。バンド別の白黒映像と、それらを合成して得られるエクタクロ一ムカラー写真、ナチュラルカラー写真、フォールスカラー写真等から、映像内容を光学的手法により判読した。
     噴煙はバンド4によく写っており、降灰域や裸地はバンド6および7によく現われていたので、それらのバンドの映像を強調することにより噴煙の広がり具合や降灰域が容易に求められた。
     火山活動が静かな時期の阿蘇山中岳火口の噴煙は、ランドサットの映像にはわづかしか写っていなかったが、噴火活動期の映像には最大長70kmにも及ぶ広大な噴煙と、10kmにも及ぶ降灰域が認められた。また、火口から2~3km離れた所でも、降灰のため裸地化して植物の生えない期間が、噴火後10ヶ月程度も続いていたことが映像の解析からわかった。
     地上観測では噴煙の垂直的広がり (高さ) や降灰の強さはわかるが、それらの水平的広がり具合はわからない。ランドサット映像では、噴煙、降灰域の水平的広がりがわかるので、地上観測の弱点を補うことができる。地上観測で求めた噴煙の量や高さとランドサットの映像から求めた噴煙の流跡の長さとの関係は複雑であることがわかった。
     ランドサットの映像は地上では観測不可能な広域にわたる現象も一目で把握できるので、広域火山監視へ利用できる。さらに、火山観測にも利用できる装置を持った多数の衛星が運行されるならば、常時火山監視に役立つであろう。
  • 宮内 正厚, 嘉納 宗靖
    1981 年 32 巻 4 号 p. 291-299
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
     地上設置型分光計を使用して大気放射を分光測定することにより下層大気の気温の垂直分布を推定することを試みた。晴天の時と全天雲に覆われている時は分光計の測定値から大気温度を推定し、その結果はラジオゾンデによる直接測定値とよい一致を示した。一方雲にきれ間のある時、分散型分光計では分光計の視野角内の雲量の変化に伴う測定誤差が生じることからそのままの測定値を使用することができなかったので我々は数値実験を行った。その結果夏大気のような高温高湿の条件を除いて一応の成果が得られた。
  • 広瀬 勝己, 杉村 行勇
    1981 年 32 巻 4 号 p. 301-305
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
     核実験により生成し放射性フォールアウトとして、広く地上にまきちらされた239Puが、地上に長くとどまるか、あるいは、河川水により容易に溶脱されて海へはこばれるかを明らかにすることは、きわめて重要なことである。
     1978年10月から1980年2月にかけ全国主要10河川の河川水の採水を行ない、溶存および粒子状に分けて、夫々のプルトニウム含量を測定した。河川水の流量を考慮し加重平均を行なった結果、全プルトニウム含量は0.37fCi/l、そのうち27%が粒子状として懸濁物中に存在することがわかった。我々の研究室の研究結果から、地上の全蓄積量を1.2mCi/km2として計算すると、溶脱されるプルトニウムは、年間全体の0.03%にすぎず、したがって、プルトニウムは一旦地上に降下すると長く地上にとどまり人類にひきつづいて影響を与えることが明らかになった。
  • 土器屋 由紀子, 広瀬 勝己, 杉村 行勇
    1981 年 32 巻 4 号 p. 307-312
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
     エネルギー分散型けい光X線分析装置を用いて、エーロゾル中の多元素同時分析を行った。フィルターの一部を酸分解後、原子吸光分析によって金属含量を定量し、その値を用いてけい光X線分析の検量線を作成したところ、鉄、マンガン、銅、亜鉛について精度的に十分満足出来る結果を得た。この方法は簡便であり、標準として同一マトリックスのフィルターを用いるため、誤差も少いと考えられる。
     本法を用いて、1980年6月より、筑波のエーロゾル中の数種の金属含量について経日的測定を行ったところ、セントヘレンズ山噴火の影響や黄砂の影響と思われる気象学的、地球化学的に興味ある現象が観測された。
  • 伏見 克彦, 杉村 行勇
    1981 年 32 巻 4 号 p. 313-316
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
     空気試料中のハロゲン化炭化水素を、あらかじめ低温で濃縮したのち、ガスクロマトグラフ・四重極質量分析計 (GC-QMS) を用いて分析する方法を述べる。100mlの空気試料をガラス球にとり、ヘリウム気流を用い、液体窒素温度に冷却した1.7mlのトラップに、ハロゲン化炭化水素を凍結捕集する。この濃縮試料をGCカラムに、ヘリウム気流を用いて移し、F-11とF-12を、電子衝撃モードによってイオン化したのちGC-QMSにより定量した。この方法の回収率は100%で再現性もよく、濃縮系をとりつけるだけで簡便に分析を行えることがわかった。
  • 広瀬 勝己, 杉村 行勇
    1981 年 32 巻 4 号 p. 317-322
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
     東京および筑波における地表大気中のウラン含量は、東京で平均24±15 pg m-3、筑波では、14±10 pg m-3であり、エーロゾル1g当り0.1~0.2μgであった。ウラン同位体234U/238Uの放射能比は0.9~1.7を示し、天然ウランの同位体比変動巾を大きくこえるものが、1979年および1981年3月、1980年4~5月 (海上) にみられた。この高い同位体比の原因としては、1978年1月24日に北部カナダに落下したソ連原子炉積載衛星コスモス954からの、濃縮ウラン放出によるものと推定された。
  • 加藤 真規子
    1981 年 32 巻 4 号 p. 323-339
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
     温度成層のある乱流境界層の中で、点源 (点源の高さ0.1∼9cm) による乱流拡散実験を行い、温度、風速に関する乱流量と濃度分布を測定した。乱流境界層の厚さは約10cmで、つくられた温度成層は、安定な温度成層の場合の平均的な温度勾配が約1.5K/cm、不安定の場合で -1.8K/cmであった。乱流場と拡散場は温度成層の影響を受け、不安定の場合には風速の乱れが大きくなり、拡散の度合も中立の場合に比較して大きかった。安定の場合はこれと反対の傾向を示した。流れに直角な水平方向の濃度分布は正規分布を示した。また、地上線源拡散の場合に、濃度分布から直接に鉛直方向拡散係数Kz を算出した結果は、Kz が高さに比例することが得られているが (Kato and Sakagami、1966)、温度成層がある場合にもKz が高さに比例することが判った。このKzはSakagamiの式による拡散係数とよく一致した。
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