大噴火の際の噴煙や降灰域は広い範囲に及ぶので、その全容を地上から観測することはきわめてむずかしく、人工衛星からの観測が有効である。
1979~80年には阿蘇山で活発な噴火活動があり、同火山としてはまれに見る多量の噴煙と火山灰を放出した。そこで、この時期に地球観測衛星ランドサットが撮影した映像から、噴煙の広がり具合および降灰域を検出し、阿蘇山測候所が地上から行った火山観測結果と比較した。これは人工衛星の火山観測への利用を検討するのによい機会であった。
ランドサットのMSSは波長別に4つのバンドに分れており、それぞれバンド4、バンド5、バンド6、バンド7と呼ばれている。バンド別の白黒映像と、それらを合成して得られるエクタクロ一ムカラー写真、ナチュラルカラー写真、フォールスカラー写真等から、映像内容を光学的手法により判読した。
噴煙はバンド4によく写っており、降灰域や裸地はバンド6および7によく現われていたので、それらのバンドの映像を強調することにより噴煙の広がり具合や降灰域が容易に求められた。
火山活動が静かな時期の阿蘇山中岳火口の噴煙は、ランドサットの映像にはわづかしか写っていなかったが、噴火活動期の映像には最大長70kmにも及ぶ広大な噴煙と、10kmにも及ぶ降灰域が認められた。また、火口から2~3km離れた所でも、降灰のため裸地化して植物の生えない期間が、噴火後10ヶ月程度も続いていたことが映像の解析からわかった。
地上観測では噴煙の垂直的広がり (高さ) や降灰の強さはわかるが、それらの水平的広がり具合はわからない。ランドサット映像では、噴煙、降灰域の水平的広がりがわかるので、地上観測の弱点を補うことができる。地上観測で求めた噴煙の量や高さとランドサットの映像から求めた噴煙の流跡の長さとの関係は複雑であることがわかった。
ランドサットの映像は地上では観測不可能な広域にわたる現象も一目で把握できるので、広域火山監視へ利用できる。さらに、火山観測にも利用できる装置を持った多数の衛星が運行されるならば、常時火山監視に役立つであろう。
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