Papers in Meteorology and Geophysics
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36 巻, 1 号
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原著論文
  • 竹内 衛夫, 内山 徳栄
    1985 年 36 巻 1 号 p. 1-21
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
     冬期の日本海上の極気低気圧の典型的な例として、1981年2月24日~27日の期間に発生した2つの小低気圧の解析が述べられている。
     この報告では、次のような結果が得られている。
     (1) 冬期の日本海上では、全くの寒気団の中でスケールの小さい非前線性の低気圧が形成される。これらの低気圧は、500mb面の正渦度極大の東側に位置し、最盛期には対流雲から成っているスパイラルあるいはコンマ型の雲パターンを伴なっている。またかなり厚い深さの対流的に中立な層を伴ない、ジェット気流の極側の対流圏全体に及ぶような偏西風帯の傾圧性をもった領域に位置している。これらの特徴は、これらの低気圧がいわゆる極気低気圧であることを示している。
     (2) 500mb面の正渦度の極大には2種類ある。1つは寒冷渦の中央部分に位置しており、もうひとつはトラフ領域に位置している。日本海上では上層の寒冷渦に結びついて発生した地表面低気圧もまた約1000km程度以下の小さいスケールであり、極気低気圧とみなされる。
     (3) 対流的に中立な深い層の形成について調べた。安定度変化の式によって、500mb面の正渦度極大の前面で、700~500mbの間の対流圏中層の対流的に中立な層は、主に水平の収束の効果によって形成され、一方これらの後面領域では、対流圏中層が水平の発散の効果によって安定化されることが示されている。700mb以下の層は、冬期の海洋上の低層加熱によって不安定化されていると考えられるので、上下の不安定化された層が結合して、上層の正渦度極大の前面で、対流圏の相当な深さを通じての対流的に中立な層を形成している。
     (4) これらの低気圧の形成のための不安定化の機構がペターセンの発達式及びリチャードソン数の分布を用いて議論されている。地表面の低気圧形成に対する上層の渦度移動の影響を含んでいる傾圧性の効果、および10以下の小さいリチャ一ドソン数の大気中での非断熱効果が、約1000km程度以下の小さい低気圧形成の主因であることが示唆されている。
     (5) 日本海沿岸地方の極気低気圧に伴なう対流雲バンドに起因する平野部豪雪が調べられている。日降水量分布は、これらの対流雲バンドの分布によって説明され得ることが示されている。
  • 澤田 可洋, 福井 敬一, 古田 美佐夫
    1985 年 36 巻 1 号 p. 23-37
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
     火山活動など、地下の状態変化に伴う微小な重力変化を地球潮汐の振幅、位相の解析から検出する目的で重力連続観測装置を整備し、装置全体の安定性や気圧など周辺環境の変化に対する応答特性を研究するため、気象研究所地震重力観測棟内で1981年3月末以降連続観測を実施してきた。検出部は、分解能1 μgal以上で、サーボ検出機構を有する地球潮汐連続観測用のLaCoste & Romberg ET型重力計である。
     1984年4月までの観測資料の解析によれば、重力計のドリフトの変化率は設置直後に大きかったが、その後は製作会社のカタログデータ (300 μgal/month) 内に十分おさまった。しかし、ドリフトの状況は直線的ではなく、季節変動などが重なり複雑である。周辺環境に対する重力計の応答をみると、重力資料との間には気圧にだけ高い相関があり、周辺温度、傾斜との相関は殆んどなかった。
     重力資料の主要4分潮 (O1, K1, M2, S2) の解析では、大きな年変化が見られた K1を除く3分潮のG-factor、位相差には時間的変化がなくほぼ安定していた。
     重力資料の気圧補正係数は約 -0.34 μgal/mb、M2分潮のG-factorは約1.209で時期による有意な変化がなく、重力計の感度にも時間的変動がなかったことと合わせ、当重力連続観測装置の安定性を確認できた。特に、基台の傾斜に対して重力計の感度変化がないというnull method方式の特徴を観測によって確かめることができた。
     以上により、気温や傾斜の変化が大きく現われ易い火山地域での重力連続観測では、ET型重力計を用いた当装置により安定した観測を行うことができると考えられる。
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