Papers in Meteorology and Geophysics
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37 巻, 4 号
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原著論文
  • 山岬 正紀
    1986 年 37 巻 4 号 p. 205-234
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
     積雲対流をパラメタライズしないモデル (山岬, 1977, 1983など) からの結果にもとづいて、従来のパラメタリゼーションとは異なったモデルをつくり、それを台風3次元モデル (シグマ座標5層、3重格子、最小格子間隔20km) にくみこんで数値実験を行った。
     従来の台風モデルでのスパイラルレインバンド (SRB) は重力波の性質をもっていたが、ここで得られた SRBは、パラメタライズしないモデルで得られたメソ対流の性質をもっている。すなわち、雨の蒸発によって冷却した空気と、外からの暖かい湿った空気の相互作用が重要な役割を果している。メソ対流は多くの場合SRBの後端付近で発生して、下層風よりゆっくりと低気圧性に移動する。SRBや他のRBの構造、伝播速度や方向、RBに対する地表摩擦の効果、RBを構成するメソ対流の性質は、台風の発達の時期、強さ、RBの位置によって異なる。地表摩擦の効果を強くうけている SRB内のメソ対流は、その外側からの空気の上昇による対流要素の形成によって長時間維持される。台風強度になる前の時期でのメソ対流の振舞いなどを含めて、得られた多くの結果は、パラメタライズしないモデルからの結果と一致している。
     このような結果をもたらすパラメタリゼーションの重要な点および改善すべき点についても述べる。
  • 戸矢 時義, 安田 延壽
    1986 年 37 巻 4 号 p. 235-253
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
     地空相互作用の解明のために、接地気象観測装置を設計し、観測露場に設置した。
     水・熱鉛直輸送量の評価は、空気力学的手法により行い、陸地面からの実蒸発量は、高感度の直接計量型ライシメーターで求めるものとした。
     蒸発量と土壌水分との関係を、ライシメーターとライシメーター土壌容器内に設置した誘電式土壌水分計を用いて調べた。結果として、地表薄層の土壌水分はかなり明確な日変化を示し、蒸発量の増減に密接に対応して変化していることがわかった。
     地表付近のプロファイルを用いてバルク法で求めた蒸発量は、実蒸発量とよく一致し、この方法が、地空間での水・熱交換過程のパラメタリゼーションに有効であることがわかった。
  • 廣瀬 勝己, 杉村 行勇, 葛城 幸雄
    1986 年 37 巻 4 号 p. 255-269
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
     1978年から1983年末までの筑波と東京で採取した地表大気浮遊塵中の90Srと239+240Puの濃度について報告する。地表大気中の90Srと239+240Puは、春期極大と秋期極小からなる顕著な季節変化を示す。1981年の高濃度は、前年の中国核実験による成層圏フォールアウトの結果である。1982年には、大気中濃度の時間変動とともに、90Srと239+240Puを含む粒子の粒径分布の時間変動を調べた。その結果、春期極大をもたらすものは、小粒径 ( < 1.6μm) に含まれる放射性核種であることがわかった。成層圏フォールアウト以外の地表大気中の人工放射性核種の起源として、土壌表層に蓄積されている放射性核種のまいあがりの影響を評価した結果、239+240Puの場合、90Srに比べて、成層圏フォールアウトの寄与が低くなる近い将来には、その影響を無視できないことを明らかにした。
  • 1985年11月
    小泉 岳司, 吉田 明夫, 石川 有三, 澤田 可洋, 井内 登
    1986 年 37 巻 4 号 p. 271-280
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
     伊豆大島における精密重力測定を1985年11月に、気象研究所の、LaCoste & Romberg D-109重力計を用いて行なった。測定点としては、1979年に国土地理院が設定した大島を一周する水準路線の中の水準点と、内陸部に設置されている東京大学地震研究所及び国土地理院の重力点の中から選んだ他、今回新しくいくつかの基準点を火口周辺に設けた。測定の精度は島を一周する周回路線で±10μgal程度、登山路線ではおよそ±20μgalと考えられる。島内の重力値は1979年以降、1983年の測定までほぼ一定か微減少の傾向であることがこれまでに報告されているが、今回の測定によってもこの傾向の続いている事が確認された。これは、伊豆大島三原山の活動が、この期間静かだった事と符号している。
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