Papers in Meteorology and Geophysics
Online ISSN : 1880-6643
Print ISSN : 0031-126X
ISSN-L : 0031-126X
38 巻, 2 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
原著論文
  • 藤田 敏夫
    1987 年38 巻2 号 p. 67-76
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
     移動する波面によって誘起される波状擾乱流は、平均風速と波速の大小関係によって、特徴的なパターンをもつ。波状擾乱とうねりの間の位相関係についての多くの研究者の実験結果にもとづいて、波面上の気流についての仮説的モデルを作り、波状擾乱による運動量フラックスの方程式を導出する。そして海面付近で上向きの運動量フラックスを持つ層と、その上に下向きのフラックスが存在することが分かった。したがって、これらの運動量フラックスの収束によって、波高の約2倍の高さにジェット型の特異な風速分布が形成されることが期待される。この研究では、仮説モデルによる数値計算によって、平均風速の鉛直分布に、ジェット型の偏倚が再現された。
  • 浜田 信生
    1987 年38 巻2 号 p. 77-156
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
     長い時間スケールを持つ地震活動に対し、古い地震資料の精度の再評価による解明を試みた。まず過去60年間の地震観測の歴史を概観し、観測体制、運用状況を考察することにより、観測の精度、地震検知能力がどのように変化したかを把握した。次に観測の時間精度と震源決定精度の関係を、各時代につき実際例から調べ、古い観測資料の精度が今までの研究では、過小評価されてきたことを明らかにした。二重深発地震面、大地震の余震域の形状と本震の震源過程などについて行われている最近の解析方法が、古い地震活動についても適用可能となったばかりでなく、新たにサイスミシティの経年変化などを追跡する道が開けた。以上の結果を踏まえて、1940年代から1960年代にかけて日本列島の内陸部で発生した、主な被害地震の本震余震分布の再調査を進めた。再調査の結果から、いわゆる直下型地震の震源過程、先行地震活動や前震活動、余震活動の減衰の仕方など、今日の地震学の一般的な問題について考察を加え、幾つかの結論を導いた。
  • 長井 嗣信
    1987 年38 巻2 号 p. 157-169
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
     気象衛星「ひまわり」に搭載されている宇宙環境モニターは、1978年以後連続して、高エネルギー陽子、アルファ粒子、および電子を観測している。本報告においては、これらのデータの吟味をおこなった後、データに現れる現象についての解釈を行った。すなわち高エネルギー陽子およびアルファ粒子について太陽フレアと関連した粒子の増加の特徴を示した。さらに、太陽の高エネルギー粒子の放出量の長期的変動を示した。宇宙線強度の長期的変動を見つけることができることも示した。また、電子のデータによって、そのなかに現れる現象が地磁気活動、とくにサブストームと関連したものであり、粒子量の変動が地磁気活動の変動を良くあらわしていることを示した。以上に基づいて、「ひまわり」の観測結果と他の太陽活動の変動を示す諸量とを対比し、最近の太陽活動の傾向を明らかにした。
  • 松尾 敬世
    1987 年38 巻2 号 p. 171-179
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
     雪粒子の落下中の姿勢・振動運動が雲粒捕捉率に与える影響を、模型雪を用いた垂直風洞実験によって調べた。模型雪として直径9mmと5mmの円板を使用した。垂直風洞内にこれらの円板を支持し、傾斜または振動運動を与え、これに微水滴を種々の風速下で衝突させた。
     傾斜が捕捉率に及ぼす影響は、円板の前面では微水滴の慣性に依存して変化した。微水滴の慣性に大きい場合、傾斜によって捕捉数は減少し、慣性が小さい場合は、反対に、捕捉数が増加した。捕捉の減少は、円板が傾くことによって起こる有効断面積の減少によって説明できた。捕捉の増加は、傾斜によって起こる円板近傍の流線の変化が原因で、特にカットオフ点付近の小微水滴の慣性を大きくするために、捕捉数が増加することがわかった。捕捉数の増加は、傾斜角が40°~60°の場合に最高で、水平に静置した円板に比べて約7倍大きくなった。
     円板の後面捕捉は、一般に、前面捕捉に比べて小さかった。微水滴の慣性が小さくなると、後面の捕捉が相対的に重要となった。傾斜によって後面の捕捉数は減少した。
     振動運動が円板前面の捕捉に与える影響は小さく、微水滴の慣性が小さく、運動が激しい場合にのみ現れた。振動運動に伴う捕捉率の変化は、二つの効果で説明できた。比較的ゆっくりした振動運動では、捕捉率の変化は円板の傾斜に伴う捕捉率の時間変化と一致した。振動が強くなると、この時間変化の効果に加えて、運動の効果が現れ、気流に向かう円板の運動成分によって、特に粒径の小さい微水滴の捕捉が増加した。
     振動運動によって、後面の捕捉数がいくらか増加する傾向が認められた。この増加の程度は最高で2倍となった。
  • 小寺 邦彦
    1987 年38 巻2 号 p. 181-185
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
     東北冷害と太陽活動の関係を長期間にわたって調べるために歴史資料にもとづいて冷害の重要度の指数化を試みた。冷害指数と山形のけやきの年輪の成長率の比較から、冷害指数に見られる大きな変化は気象条件の変化を反映していることが確認された。
     次に、東北冷害と太陽黒点周期の位相との関係を、冷害指数をもちいてキイ・アナリシスを行うことにより調べた。その結果、太陽黒点極小年1年後に冷害の増大することが示された。また、けやきの成長率にも太陽黒点極小年付近で同様に小さなピークが見い出された。
feedback
Top