気象庁埋込式体積歪計の挙動について体積歪計容器と周辺媒質の相互作用に着目することにより検討した。
円筒形の体積歪計容器を擁する3次元軸対称な有限要素モデルに対して水平圧縮力が加わる場合の応力場を解析した結果、体積歪計容器周辺の応力状態は媒質の弾性率によって大きく変化することが明らかになった。特に媒質のヤング率が体積歪計容器のそれに対して数%以下になると、固定用モルタルの内部で体積歪計容器の上下両端付近に水平応力の顕著な集中が生ずるとともにモルタル全体にわたり外力の数倍もの引張応力が鉛直方向に発生する。この為にモルタル部分に引張破壊による亀裂が発生する可能性がある。
次に、媒質の弾性率をパラメーターとして計算した体積歪計の水平歪感度及び気圧係数をそれらの実測値と比較することにより、実際の観測点の媒質の弾性率を推定した。この結果によると、媒質のヤング率の大きさは歪計容器に対して数10%から数%までの範囲になる。各観測点を周辺媒質のヤング率の大きい順にA、B、Cの3クラスに分類すると、東海地域の観測点はA、Bいずれかのクラスに含まれるのに対し、南関東地域の観測点は殆どB、Cいずれかのクラスに含まれる。この分類は各観測点のコアサンプルの特徴によく調和する。長期のトレンドを差し引いた歪変化について見てみると、B、C両クラスに分類された観測点では降水による影響や不規則なパルス・ステップ状の変化が顕著であるのに対して、Aクラスの観測点では湯河原と東伊豆の2観測点を除いてあまり目立った変化を示さず、周辺媒質の違いを反映しているものと見られる。
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