Papers in Meteorology and Geophysics
Online ISSN : 1880-6643
Print ISSN : 0031-126X
ISSN-L : 0031-126X
41 巻, 4 号
選択された号の論文の2件中1~2を表示しています
原著論文
  • 山崎 孝治
    1991 年 41 巻 4 号 p. 129-138
    発行日: 1991年
    公開日: 2006/10/20
    ジャーナル フリー
     Tokiokaら (1987, 以下TYC 87と略す) は1983年の初夏の例について、月平均の力学的長期予報に及ぼす海面水温偏差のインパクトを調べたが、ここではいくつかの点を改良して、再び同じ例を調べた。TYC 87の結果には幾つかの不満足な点があったが、インド洋の海面水温偏差を含めること、積雲対流に関して改良された荒川・シュバートのスキームを用いること、及び15層モデルを用いることによって、それらの欠点を矯正した。
     熱帯においては、TYC 87では2カ月目の実況とのアノマリ相関が悪かったが、今回は、1カ月目も2カ月目も良い相関を得た。また、モデルは熱帯の季節内変動をシミュレートしている。中緯度では、2カ月目の予報精度が南北両半球ともTYC 87より良くなっている。
     TYC 87及びこの研究の結果は全球の海面水温とよいモデルによって力学的長期予報の可能性があることを示唆するものである。
  • 高架橋・列車通過の場合
    森 滋男, 桜田 富世, 鉢嶺 猛, 山本 博二
    1991 年 41 巻 4 号 p. 139-167
    発行日: 1991年
    公開日: 2006/10/20
    ジャーナル フリー
     上越新幹線開業と時を同じくして、同鉄道敷から約1km離れた熊谷地方気象台 (以下地台) 内の地震計に、通常より多少大きい卓越周波数約2Hzの雑微動が、規則的に記録されるようになった。臨時観測点での振動の観測及び列車通過速度の測定を実施した。
     観測結果によると、雑微動は、上り熊谷通過列車の通過に対応し、粒子運動及び後述の考察を踏まえた発生源に関する仮定から、地台の西北西ないし北西からやってきた群速度60~110m/sないし78~110m/sのレーリー波であると推定された。地台での通常のノイズレベルより卓越する振動を、地台まで届かせうる発生源存在可能範囲 (細山・中井 (1972) を参考にして地台から3km) について発生源を捜した。地台から約2.4kmのところに他の橋脚と異なる特徴を持つ4つの橋脚が見いだされた。これらは地台の西にあり、それぞれ独立し、かつ支えが深くまで達している橋脚A1~A4 (これらに乗る橋桁の全長が217m) である。この4つの橋脚を発生源とすると、雑微動の各観測点への到着時刻と、その最大地動速度振幅とを、矛盾なく説明できる。また、雑微動の卓越周波数と列車速度が比例すると仮定することで、雑微動の継続時間・卓越周波数・最大地動速度振幅の相互の関係が矛盾なく解釈できることがわかった。
     以上より次のことが考えられた。A1~A4上の橋桁を上りの熊谷通過列車が通過することにより、A1~A4を主たる発生源素要素として、群速度が60~110m/sないし78~110m/sのレーリー波を含む波が生成され、雑微動として地台で観測される。
     雑微動発生モデルとして次のようなものを考えた: 各橋脚で支えている2つの橋桁は力学的に独立であり、各橋脚へは、その橋脚で支えている2つの橋桁からそれぞれ独立に力が及ぼされる。この橋脚が地表を下へ押し、半無限・等方・一様な弾性媒質に垂直下方へ力が加わる。今回は簡単化のため、2次元の問題として扱った。これによりモデルのおおよその適否を検討した。
     このモデルに従って、合成波形を求めると、そのスペクトルは、1Hz付近、2~3HZ、6~7Hzに極大が見られ、観測された雑微動の卓越周波数2.0~2.5Hzが含まれる。言い替えると、モデル計算では複数のスペクトルピークが見られるのに、観測では2.0~2.5Hzの帯域のみが見られていることになる。この理由としては伝播による滅衰 (Qの効果) 以外に表層の影響による選択的伝播が考えられた。1/4波長則によれば、P波速度 Vp が345m/s (A1~A4の西約1km地点の熊谷変電所付近の値) の時、約40mの表層があれば前述の周波数帯の波群が選択的に伝播することが予想できる。なお、地台付近は、低速度の表層が、少なくとも16mまで存在していることがわかっている。
     観測された帯域のみを通過させるフィルターを施した合成波形については、群速度を110m/sにした時が最も落花生型の観測波形に類似していると外見上から判断された。また、表層とその下の半無限媒質の剛性率の比が、熊谷変電所付近での値を使うと4.8~14となる。従って、この場合、生成された分散性レーリー波は、表層のVpが345m/sでもその群速度として110m/sの値をとることに矛盾はない。以上より、今回の雑微動について作成した発生モデルは現在までの観測事実との特別な矛盾は生じなかった。列車の構造・速度、橋脚の構造、地盤の構造がたまたま適当な組み合わせであったため今回の雑微動が地台で観測されたものと解釈できた。今後、表層の厚さの確認、及び雑微動の卓越周波数と列車速度が比例することの確認を行うことなどが必要である。
feedback
Top