Papers in Meteorology and Geophysics
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42 巻, 3 号
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原著論文
  • 古屋 逸夫, 山里 平, 清野 政明
    1991 年 42 巻 3 号 p. 93-103
    発行日: 1991年
    公開日: 2006/10/20
    ジャーナル フリー
     伊豆大島火山は1986年11月15日に12年ぶりに噴火を始めた。とくに、11月21日には側噴火を伴う大噴火が起こり全島住民の避難離島が行われた。火山活動は消長を繰り返しながらも、次第に収束に向かっていたところ、1987年11月16日に小噴火が発生し、その後2、3回の小噴火が続いた。1987年の噴火活動は噴出物の総量で見ると、1986年の噴火活動の数万分の一という小規模の活動であったが、地震活動はかなり活発なものがあった。
     1987年11月16日の噴火に際して、他の噴火時には見られなかった単純な形の進行波が東海・南関東に展開している気象庁の体積歪計によって記録された。この波動は以下の理由によってレーリー波であることが分かった。(1) 進行速度は約3km/sであり実体波の速度としてはかなり遅い; (2) 松代地震観測所に置かれている長周期地震計より求めた地表の振動の軌跡が単純なレーリー波のそれと同じである; (3) 距離による振幅の減衰が表面波的である。
     観測されたレーリー波は周期約15秒であり、遠地地震からの同程度の周期を持つ波を用いて各々の体積歪計の感度を求め、振幅補正を行った。その結果、このレーリー波は全方位に一様な放射パターンを持っており、通常の地震による放射パターンとは異なっている。また、火口を満たしていた溶岩の表面がこの噴火とほぼ同時に低下したと推定される。これ等のことから、レーリー波は火山性物質が火道内を落火したことにより発生した可能性が非常に高い。体積歪計の記録からは、この波による歪エネルギーが地震計記録から求まる運動エネルギーとは独立に計算でき、どちらも、106Jのオーダーに求まる。これはM=1の通常の地震のエネルギーに対応している。このレーリー波を含む地震のMは3.9とみつもられ、したがって、約千分の一のエネルギーがレーリー波に分配されている。
  • 小高 俊一, 清野 政明, 吉田 明夫
    1991 年 42 巻 3 号 p. 105-126
    発行日: 1991年
    公開日: 2006/10/20
    ジャーナル フリー
     日本の内陸の浅発地震を念頭において、垂直横ずれ断層による静的応力場、ダイク、シルへのマグマの貫入を模して垂直/水平の開口性のくい違い (開口断層) による応力場、圧縮応力場内にある火山体、溶融体等を模して変形し易い円筒状物体のまわりの応力場 (二次元) の計算を行った。計算は主に、暗に仮定している広域応力場に調和的な特定方向の破壊応力 (断層生成に寄与する応力として、ずり応力と一定割合の法線応力を加算したもので、ここでは垂直横ずれ型の地震の発生を仮定している) に対して行い、その分布様式通りに発生したように見える実際の地震活動の事例の収集を行った。
     垂直横ずれ断層の場合、破壊応力の増加は断層延長方向と、さらに断層端よりそれに直交する方向 (で、なおかつdilatationの正すなわち膨張する側) で現れるが、実際の地震活動においても、本震で生じた断層の走向の延長方向で余震活動が活発になったり、本震の断層の端よりそれに共役な副断層の発生が見られた事例はいくつかある。垂直開口断層の場合、特に断層の端よりそれに斜交する方向で破壊応力の増加が認められるが、それに該当すると思われる地震の発生例もある。
     ある深さで水平の開口断層が生じた場合、その上方の地表付近ではdilatationは正となり破壊応力が増加するが、土地の隆起が観測され同時に地震活動が活発化した例は、近年の伊豆半島における活動など実際にいくつか見られる。垂直横ずれ断層、垂直開口断層がある程度の深さで生じた場合も、その上方の地表付近では破壊応力は増加する。
     圧縮応力場内に収縮性の力源 (二次元) が存在する場合、主圧力軸に直交する側で破壊応力が大きくなる。一方膨張性力源の場合は、主圧力軸側で大きくなることが推定される。火山活動に関連して発生したと思われる地震活動において、この計算結果に適合するように見える事例がいくつか存在する。しかし、いずれの場合もマグマ溜まりの存在の有無、位置その他不明な点が多く、適切な比較が困難で、更に検討を加える必要がある。
  • Dodla V. Bhaskar Rao, 山崎 孝治, 鬼頭 昭雄
    1991 年 42 巻 3 号 p. 127-143
    発行日: 1991年
    公開日: 2006/10/20
    ジャーナル フリー
     5層の気象研究所大気大循環モデルによる20年間の積分結果 (コントロールラン) を夏季 (6-9月) のアジアモンスーン領域について解析し、観測と比較した。夏季アジアモンスーンの大規模な特徴は、モンスーンの循環が観測より弱いなどいくつかの欠点はあるものの、概ね、良く再現されている。シミュレーションの不満足な点に関連して、地表面境界条件に関するいくつかの数値実験を行った。コントロールランに見られたアラビア半島の下層大気の冷えすぎは、ペルシャ湾と紅海の3つの沼地の格子点を陸地に代えることによって改善された。ヒマラヤ山麓の雨が少なすぎた点は、インド亜大陸の土壌を強制的に湿らせると、幾分、改善された。これらの実験はリージョナルな気候に対して、地表面過程が重要な役割を果たしていることを示している。しかしながら、上記の実験で見られた改善はリージョナルな規模に留まっており、モンスーン全体の大規模な流れの誤差を大きく改善するものではなかった。世界中の山岳の高さを上げた実験では、リージョナルな特徴については改善が見られたが、大規模なモンスーン循環はかなり弱まった。余り高すぎる山岳はアジアの夏季モンスーンのシミュレーションにとって、かえって有害であることがわかった。
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